定年を迎えたら妻から離婚を切り出された……近年、「熟年離婚」が増えています。「そんな……捨てられたくない!」と戦々恐々の世の夫たち。離婚を回避したいなら、妻の不満に耳を傾けることが第一歩になります。
結婚歴20年以上の「熟年離婚」増加!
「身の回りに離婚経験者が増えている……」と感じている人は多いのではないでしょうか。
厚生労働省『令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計』によると、2020年の離婚件数は19万3,253件。人口1,000人あたりの離婚率は1.57でした。
離婚率を経年でみていくと、【図表1】のとおり。高度成長期あたりから増えていますが、ぐんと増えたのは1990年代。ちょうど女性の社会進出が進み、「あなたに頼らなくても生きていけるわ」と離婚率は上昇。2002年に人口1,000人あたり2.3まで増加しました。しかしその後、離婚率は低下傾向にあります。
【図表1】離婚率の推移 出所:厚生労働省『令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計』より作成
ただ「離婚は増えているような気がするんだよなぁ」と違和感を覚える人もいるでしょう。それは熟年離婚の増加によるものかもしれません。
一般的に同居期間が20年以上になる夫婦の離婚を熟年離婚と呼びますが、離婚件数に占める割合は2020年、21.6%。5件に1件が熟年離婚です。離婚率がピークだった2000年代初頭における熟年離婚の割合は15%程度。20年ほどで6ポイントほど増加しました(図表2)。
【図表2】同居期間別にみた離婚の推移 出所:厚生労働省『令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計』より作成
さらに熟年離婚に焦点をあてると、1990年、結婚35年以上の離婚は離婚全体の0.8%に過ぎなかったのが、2020年には3.4%とより婚姻歴の長い離婚が増えていることが分かります。
【熟年離婚の割合の変化】
結婚20~25年未満:8.2%→9.6%
結婚25~30年未満:3.7%→5.8%
結婚30~35年未満:1.3%→2.8%
結婚35年以上:0.8%→3.4%
※数値は離婚全体に占める割合。左1990年→右2020年
熟年離婚の増加の一因とされているのが、婚姻期間中の厚生年金記録(標準報酬月額・標準賞与額)を当事者間で分割することができる「離婚時の年金分割制度」。この制度により、年金受取額の少ない専業主婦でも、婚姻期間中の夫の厚生年金の分割を請求。離婚後の生活を安定させることができるようになったのです。
心当たりは?妻が答えた「夫の嫌いなところ」
――子どもが独立するまでは
――夫が定年を迎えるまでは
もしかしたら、妻はそんな思いで離婚を切り出すのを踏みとどまっているかもしれません。「あなた、話があるの。」と突然捨てられることのないよう、今のうちに妻の不満を察知して、リカバリーできるならしておきたいものです。
株式会社しんげん/「SHUFUFU」による『夫の嫌なところに関するアンケート調査』によると、夫の嫌いなところ第1位は「家事をやらない・できない」で23.9%。年代問わず「嫌い」という声が聞かれ、特に年配になるほど家事は女性がするものという考えが強く、ストレスになっているようです。
【「夫の嫌いなところ」ワースト5】
第1位「家事をやらない・できない」
●家事を全くやらない。特に自分の食べた後の食器を洗わないで流しに置きっぱなしなことが嫌。(50代女性)
●名がある家事はできるけれど、名もなき家事はできないというか気がつかないところが嫌いです。(40代女性)
●年収の高い低いで家事育児をしない考えは人間としてどうかと思います。(50代女性)
※一部抜粋
2位「いびき」17.8%
3位「話を聞かない」17.3%
4位「金遣いが荒い・節約しない」15.7%
5位「思いやりがない」15.2%
また少数派ではありますが「嫌なところはない」12.7%と、「離婚なんて関係なし」の円満夫婦も。特に共働きだと、家事のバランスに不満を抱くことが多いよう。小さな不満も積もり積もっていけば、いずれは離婚原因になるかも。
ちなみに別調査で、夫が答えた「妻の嫌いなところ」もみていきましょう。ノマドマーケティング株式会社が行った調査によると、既婚男性のうち「妻が嫌い」と回答したのは13.0%。その理由を聞いていくと、「ヒステリック」など目に見えて嫌な部分のほか、「自分勝手」など自己中心的な性格を挙げるケースが多かったとか。
【「妻が嫌い」な理由】
●「金銭感覚があわない」(埼玉県/男性/53歳)
●「すべて」(愛知県/男性/55歳)
●「細かすぎる」(徳島県/男性/55歳)
●「家事をしない」(熊本県/男性/56歳)
●「自分勝手なところ」(神奈川県/男性/57歳)
●「ヒステリック」(青森県/男性/58歳)
●「思いやりがない」(愛媛県/男性/59歳)
※一部抜粋
別調査ではありますが、夫婦において、妻は妻なりの言い分、夫は夫なりの言い分があるようです。これらの結果をみて、「自分たち夫婦は大丈夫だろうか……」「離婚はしたくないなぁ」と思ったなら、まずは「なぜ、結婚したのか」という原点に振り返ってみてはどうでしょうか。きっと忘れていたものを思い出し、リカバリーのヒントになるはずです。
[参考資料]
厚生労働省『令和4年度 人口動態統計特殊報告 離婚に関する統計』