Apple Arcade、一部ゲーム開発者から支払減少と不満。「死の臭いが漂う」との声も

Image:Hadrian/Shutterstock.com

アップルの定額ゲームサービス「Apple Arcade」がサービス開始してから、すでに5年が経過した。まとめ値引きセット「Apple One」に含まれていることもあり、iPhoneユーザーであれば加入している人も少なくないだろう。

しかし、今や一部のゲームアプリ開発者がApple Arcadeに不満を抱いており、将来性に懸念を抱いているとモバイルゲーム情報メディアのmobilegamer.bizが報じている。

同誌の取材に応じた情報筋の1人は、Apple Arcadeには「死臭が漂っている」と述べている。また別のゲーム開発会社幹部は、アップルが「Apple Music」や「Apple TV+」のような情熱や敬意をゲームに注ぎ込んでいないと指摘。「音楽やテレビに投資するのと同じように、アーケードに価値を見出し、投資しているとは思えない」と語る。

当初Apple Arcadeは、開発者の手厚い前払い金が魅力とされていた。以前の報道でも、多くの開発者と3年契約を結んだと伝えられており、経営の安定に貢献していたことが窺える。

実際、あるゲームスタジオ幹部は「不完全ではあったが、我々はArcadeの存在にとても満足している。Arcadeのおかげで、プレミアムゲーム(開発にカネのかかったタイトル)がモバイルで実現できるようになった」と語る。アップルの支援なしには、自社の存続はあり得なかったという。

しかし、2020年10月以降、アップルから開発者への支払額は減り続けているとの複数の証言もある。契約一時金とプレイ回数に比例する「ボーナスプール」の両方が減っているが、アップル側は金額の計算方法について口を閉ざしているという。

このうちボーナスプールは「予選セッション」と呼ぶ不透明な指標に基づいているが、それが何を意味するのか誰にも知らされない。プレイヤーがゲームをプレイ開始したのか、どれぐらいの時間プレイしたのか、データは一切「ブラックボックス」にされているそうだ。

また「App Storeグレイツ」(App Storeでアワードを受賞した作品など既存作)は前払い金の対象ではなく、ボーナスプールのみを受け取る。その結果、シナリオが短いゲームなどは長期的に繰り返し遊ばれるゲームよりも収益が少なくなりやすく、徐々に淘汰されているという。

さらにアップルは著名なファミリー向け大型IPにシフトする傾向があり、広告やアプリ内課金を削除した無料ゲームの焼き直しをApp Storeグレイツに月1~2本追加。そのためか、オリジナルゲームの企画は非常に通りにくくなっているようだ。

そして一部の開発者は、アップルとの“付き合いづらさ”を語っている。同社の対応につき「執念深い」あるいは「辛辣」と評する人もいれば、Apple Arcadeチームが数ヶ月にわたる熱いやり取りの後、戦略の変更を理由に興味をなくしたと語る者もいる。アップルのニーズに合うよう予算を減らし、ゲームを作り直すと申し出たところ、単にメールの返信を止めてしまったそうだ。

ようやくApple Arcade入りを果たしたとしても、人気を勝ちえるには一苦労だという。

具体的にはArcadeタブのトップで紹介される必要があるが、そのためには「基本的にアップルにフィーチャーしてもらえるよう懇願しなければならない」「トップにフィーチャーされるバナーを獲得するのは、意思からチを絞り出すようなものだ」と語られている。

2021年4月にアップルは、Apple Arcadeの方針転換を宣言。それまでのオリジナルタイトル中心から既存の著名IPに軸足を移すとの説明は、上記の証言と一致している。

こうしたApple Arcadeの「再起動」は、Netflixがゲームアプリ提供を予告した(実際のサービス開始は2021年11月)ことがきっかけだと見る開発者もいる。そのNetflixも最近ではスマートフォン版『グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版』が大きな注目を集めていたこともあり、大型IPの重視・オリジナルタイトルへの逆風は今後も続きそうだ。

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