39歳でバイトを始め5年で独立 新宿と銀座でファミマ4店を経営 がむしゃらに働き収益のコツを体得 故郷の沖縄・伊是名島に「恩返ししたい」

[東京報道プラス][アクロス沖縄](196)名嘉盛光さん(73)=伊是名村出身

 日本随一の歓楽街の新宿と高級店が集まる銀座で、ファミリーマート4店舗を経営する。コンビニエンスストア業界に将来性を見いだし、39歳でアルバイトから挑戦。現場での経験を貪欲に積むことで経営感覚を磨き、飲食業も軌道に乗せた。コロナ禍を乗り越えて安定経営に入った今、思うのは「生まれ島に恩返しがしたい」。伊是名村での旅館開業に向けて奔走する。

 真和志中学校を卒業後、那覇市にある米軍の払い下げ店で働いていたが「面白い人生」を夢見て30歳で上京した。商社に10年間勤めた後「さらなる自己実現」を目指し、転職を検討した。

■一回りも年下から学ぶ日々

 目に留まったのが1980年代、成長著しかったコンビニ業界。街中に出店が相次いでいて「将来性がある」と見込んだ。未経験のため、アルバイトで飛び込んだのは39歳の時だった。

 一回りも年下のアルバイトから学ぶ日々。「5年で独立するとの目標を持ち、必死で仕事を覚え、開業資金もためた」と振り返る。5年後、目標通り44歳で独立。繁華街の新宿4丁目に店を出したが想定より客が入らず、赤字が続いた。「後戻りはできない」と人件費を減らすため、朝6時から深夜0時まで店に出た。

■賞味期限切れを減らそうと工夫

 がむしゃらに働くうちに「弁当や総菜の賞味期限切れによる廃棄をいかに減らすかで、収益が大きく変わる」などと経営の要点が見えてきた。翌日の客数を予測した発注の正確性が重要で「人の流れに常に気を配り、目まぐるしく変わる新商品の流行をいち早くつかむことで可能になる」と気付いた。

 経営が安定してきた2006年、知り合いに勧められ、新宿に近い中野坂上でバーを開業した。コンビニ経営で自信はあったが、初めての業態に苦戦。夜だけでなく昼のランチ営業を夫婦2人で始め、どうにか苦境を乗り切った。

■営業時間をずらして成功

 ここでも、店頭に立っていてひらめいた。「コンビニには未明から朝にかけての客が多い。バーもあえて営業時間をずらした方が、客は入るのでは」

 これまでの午後5~11時は、周囲の飲食店と同じ開業時間で競争が激しかった。午後7時~午前4時に変更すると終電を逃した人などが集まるようになり、一気に業績が伸びた。「現場でとことん動けば見えてくるものがある」。経験を生かしてコンビニ4店舗、飲食3店舗まで広げている。

■故郷に教会の建設目指す

 昨年11月、57年ぶりに伊是名島を訪れた。戦後に村長を務めたおじが、戦争で傷ついた村民のために誘致した教会があったことを知る。「戦争で長男と次男を失ったおじの平和への思いを再現したい」と、教会の建設を検討している。

 まずは親戚が持つ空き家で旅館業を始めて足場を築き、教会再建に取り組む考えだ。「観光で収入を確保することで建物の維持費も賄える。伊是名から平和を発信できれば」。ファミマ新宿四丁目交差点前店には、伊是名産の泡盛「常盤」「伊是名島」が並んでいる。(東京報道部・照屋剛志)

 なか・もりみつ 1950年、伊是名村生まれ。父の仕事の都合で2歳で那覇市に引っ越し。米軍の払い下げ店での勤務を経て30歳で上京。研究機材を取り扱う商社で10年間営業を務めた後、コンビニ業界に着目し90年に転職。95年に新宿で独立。都内でコンビニ4店舗と飲食店3店舗を経営している。

自身が経営するファミリーマートで取り扱う伊是名酒造所の泡盛をアピールする名嘉盛光さん=東京・ファミリーマート新宿四丁目交差点前店

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