『マルス-ゼロの革命-』道枝駿佑の演じ分けに光る“役者魂” “復讐篇”でゼロが歩む道とは

なにわ男子の道枝駿佑が主演を務めるドラマ『マルス-ゼロの革命-』(テレビ朝日系)が第5話まで放送され、第1部が完結した。

道枝が演じているのは謎多きカリスマ転校生・美島零。放送前には、オオカミを背負い、金髪、白い学生服姿のビジュアルが公開されるなり、大きな話題を集めた。零は、落ちこぼれ高校生たちを「俺と一緒にこの世界をぶっ壊そう」と扇動し、「マルス」という動画集団を結成。桜明学園高校を舞台に、大人が作った社会を壊して再構築する“スクラップ&ビルド”を目指す。第1話から想像を越えるストーリー展開で圧倒した本作。今回はストーリーを踏まえながら美島零を通して見せる道枝の演技力に迫ってみたい。

第1話で美島零は、自殺を図ろうとした逢沢渾一(板垣李光人)が遺書と共に置いたカメラを手に取り、「ラストメッセージをどうぞ!」と明るく話しかけた。そして「最後まで逃げるんだ……センスねぇなぁ」と残念そうな表情を浮かべて渾一を翻弄。そして姿を消す。

学校では、転校生として紹介された零が渾一のスマホを持って登場。「はじめまして!」と金髪ではあるものの、快活な雰囲気で挨拶をする。放送前はクールなダークヒーローを想像していただけに登場からいい意味で裏切られた。

屋上のシーンでは零が渾一に「君が抱えている問題を解決できたら俺の言うことを何でも聞く。できなかったら君の言うことを何でも聞こう」という交換条件を出した。そして、零が渾一に蹴りを入れると、渾一は屋上から落下してしまう。そして零はすぐさま叫びながら助走をつけ、渾一が落下したトラックの荷台へと飛び降りる。「このままだと一生掃きだめの中に埋もれたままだぞ」という一言が渾一を突き動かす。納得せざるを得ないというべき様子の渾一に、零は力強く手を差し出した。「俺がお前をこの腐った世界から救ってやる」と、力強さの中に説得力と優しさを感じる表情を浮かべていた。

転校生にしてタダモノではない堂々たるオーラには、道枝の発声と表情の芝居が活かされている。持ち前の甘い表情と愛らしい笑顔を活かしつつも、はきはきとした少し早めの口調で説得力をもたらす。そして前述した「このままだと一生掃きだめの中に埋もれたままだぞ」など相手の心に訴えかける場面では、声を低めにして肝となる場面を作り出す。それは同時に視聴者の胸にも響く。

恋愛や学園物語とは違い、対峙するのは大人たち。そこでは道枝のスマートな長身と姿勢の良さが相まった堂々たる出で立ちで、頼もしさを醸し出している。身内であっても情報を出さないなど、駆け引きをするかのような場面ではポーカーフェイスを。零は何を考えているのか、頭の中ではどんな作戦を企てているのか、掴めない場面も多々。また、過去の回想シーンも登場するが、そこでは少年っぽさを残した芝居を見せており、時間経過を含めた同一人物の演じ分けに道枝の役者魂を感じる。

本作は、躍動感のある場面も多く、想像のつかない静と動で視聴者も翻弄されっぱなしだ。第5話のラストでは悲しい涙を流した零。ここから始まる第2部の復讐篇ではどんな展開が待っているのか。予告にはこれまでに増して険しい顔つきの零の姿があった。ストーリーの行方が気になるのと同時に、道枝の迫力ある芝居が見られそうで楽しみだ。

(文=柚月裕実)

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