中国の重度対まひ患者、BMI使用し「思考」でカーソル制御

中国の重度対まひ患者、BMI使用し「思考」でカーソル制御

 【新華社北京2月27日】患者が精神を集中して見つめると、コンピューター画面の赤いボールがゆっくりと移動し、反対側の青いボールに近づき、重なっていく。SF映画のワンシーンではない。脳と機械をつなぐ新たな技術「ブレインマシーンインターフェース(BMI)」での重度対まひ患者の思考によるカーソル移動制御の様子だ。

 中国北京市の首都医科大学付属北京天壇医院神経外科の賈旺(か・おう)教授チームと清華大学の洪波(こう・は)教授チームが共同で低侵襲BMI技術を成功させた。中国の同分野での画期的進展となった。

 患者は35歳の男性で、5年前に不慮の事故により第3~第4頸椎(C3~C4)の重度対まひを負い、身の回りの処理が全くできなくなった。患者と家族のインフォームドコンセントを得て、賈旺チームは2023年12月19日、患者への低侵襲ワイヤレスBMI「NEO(Neural Electronic Opportunity)」の埋め込み手術を行った。

 賈氏は「患者の神経細胞を損傷しないため、手術の際は、脳の中心溝の前後にある運動野と感覚野の硬膜外に電極を設置した」と紹介。術中ナビゲーションや神経電気生理学的モニタリング、複合現実(MR)イメージングなどの高度な方法による比較検証を通じ、電極の正確な位置決めと鮮明で安定した脳の電気信号の取得を確保したとし、患者は術後10日目に無事退院したと述べた。

 体外機器から頭皮を隔てた体内機器にワイヤレスで給電し、神経電気生理学的データの送信を実現。脳から送られた電気信号を解読して分析し、命令を出力することで外部デバイスを制御する。研究チームは、ワイヤレスBMIを使ったリハビリ訓練を遠隔指導で患者に実施。2カ月間の入念なリハビリ後、患者は、思考を通じて空気圧グローブを操作し水のボトルをつかむなどのBMIの運動補助機能を使いこなすことができるようになっただけでなく、一般の家庭環境下でも思考でコンピューター画面上のカーソル移動を制御できるようになった。

 洪氏によると、研究チームはBMIの解読アルゴリズムの最適化を続けている。将来的には思考を通じて電子書籍のページをめくったり、カーソルでクリックやエンターなどの操作をしたりできるようにし、患者と電子機器の相互作用能力を強化する計画だという。

 神経工学分野のブレークスルーとされるBMI技術は、脳の電気信号を直接使用して患者と外界との間に交流チャンネルを確立、「思考」を実行可能な出力命令に変換し、外部デバイスの直接制御を実現する。脳疾患患者のリハビリやヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)での無限の潜在力と広範な応用の可能性がある。低侵襲ワイヤレスBMIの埋め込み成功と思考によるカーソル制御の実現は、重度の対まひや筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経障害のある患者にとって、リハビリ治療に新たな方向性をもたらすものと期待されている。

 低侵襲ワイヤレスBMIプロジェクトは16年に清華大学で立ち上げられ、19年にプロトタイプ製作を実現、20年に動物実験を開始した。北京天壇医院は21年末に加わり、臨床シーンの設計や臨床技術の計画、埋め込み手術方式の設計などに参加している。(記者/侠克、魏夢佳)

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