事実と異なる内容告げた理由「第1発見者は疑われると」 青森・七戸町の知人殺害公判、被告証言

 2020年12月、青森県七戸町で事故を装い、知人男性を除雪機でひき殺したとして、殺人や殺人未遂など七つの罪に問われた本籍七戸町、住所不定、無職の被告(37)の裁判員裁判第5回公判は26日、青森地裁(藏本匡成裁判長)で開かれ、弁護側による被告人質問があった。除雪機の下敷きになった被害者の工藤勝則さん=当時(64)=の発見状況を被害者家族に伝えた際、第1発見者について事実と異なる内容を告げた理由を「また身近でこんなことが起きた。いろんなことが続いて参っていた。(自分が)第1発見者と言えば疑われると思い、妹を第1発見者と言ってしまった」と述べた。

 20年12月22日、工藤さんに除雪機を貸してほしいと頼まれ「貸したくはなかったが、工藤さんに迷惑をかけているので貸すことにした」と説明。翌23日、被告の実家の外に除雪機を用意し、実家敷地内の小屋で被告が除雪機の予備燃料を準備中に屋外から「エンジンが吹き上がる音が聞こえ、小屋の窓から外を見たら工藤さんが機械の下敷きになっていた」と話した。「助け出さないといけないと思い、機械を前後左右に揺さぶって工藤さんの体から下ろそうとしたが、重くて動かなかった」と述べた。

 同年9月に、工藤さんを被告が運転する軽トラックの助手席に乗せて八戸港の岸壁から海に転落させ、殺害しようとしたとされる殺人未遂罪についても弁護側は質問。被告は「軽トラックのブレーキの利きが悪く、まずいと思ってハンドルを左右に切ったが、間に合わず(海中に)転落してしまった」と改めて事故を主張。検察側が事故を装うために被告が切断したと指摘するブレーキホースに関しては「切っていない」と否定。ブレーキの利きが悪くなった原因は「分からない」と答えた。

 また、被告は自身が経営する中古重機買い取り販売会社の資金繰りが「厳しかった」と明かした。その上で、工藤さんが勤める土木会社から売却の仲介依頼を受けた重機10台を売却したにもかかわらず同社に代金を渡さず、修理を頼まれた同社の別の重機も無断売却し、「自分の(会社の)資金に回した」と認めた。

 被告は上下黒のスーツに水色のネクタイ、黒のサンダル姿で出廷。一礼して証言台に座り、時折身ぶりを交え、天井を見上げて考えをまとめながら質問に答えた。

 次回公判は27日午前10時から、殺人、殺人未遂罪に関する検察側の被告人質問を行う。

© 株式会社東奥日報社