北山たけし独立後初のシングルは、TUBEが提供した『夏の終わりが来る前に』 「前田亘輝さんのストレートに届く歌い方を、少しだけ盗ませていただきました」

昨年春、21歳で内弟子に入って以来、28年間師事してきた北島三郎の下を離れるという大きな節目を迎えた北山たけしが、独立後初のシングル『夏の終わりが来る前に』(C/W『あなたへ』)をリリースした。TUBEのボーカル・前田亘輝が作詞、ギターの春畑道哉が作曲という異色の取り合わせは、どんな経緯で生まれたのか。デビュー21年目を迎え、新たな一歩を踏み出した北山に新曲にかける思いやこれからの夢を聞いた。


――師匠の下からのれん分けという形で独立されて、第1弾シングルがTUBEのおふたりによる楽曲で驚きました。この曲を歌うに至った経緯を教えてください。

前田さんとは、3年程前に共通の知り合いの紹介でお会いして、それ以来、よくゴルフをご一緒させていただく仲なんです。あるとき、ゴルフ場で前が詰まっていて待ち時間があった時に、前田さんがスマホをいじりながら、「TUBEにしてはちょっと演歌っぽく作った曲があるんだけど、聴いてみる?」って、ゴルフの合間に聴かせていただいたんです。そしたら、詞の内容がすごく心に響いて、一発で惚れてしまいました。

――前田さんのボーカルで歌が入っていたんですか。

そうです。レコーディングも終えられて、TUBEの楽曲として取ってあった曲だったんです。前田さんがあの声で歌う「男らしく、お前らしく、名もない花だけど踏まれても頑張っていこうぜ」っていう歌詞が、ちょうど独立して間もない自分にストレートに届いて感動しました。その後数日たっても忘れられなくて、前田さんにあの曲をもう一度聴かせてほしいとお願いしてデータで送っていただいたんです。やっぱりジーンと胸にきて、これを歌いたいと素直に思いました。それで提供していただけませんかとストレートにお願いしましたら、「独立第1弾として、この曲と一緒に歩いていってください」と言っていただいて、歌うことになりました。

――男同士の友情を歌っていて、聴きながら学生時代の友人の顔が思い浮かぶような曲だと思いましたが、北山さんはどんなイメージを持って歌っていますか。

もちろん友情もテーマになっていますが、僕の中では〝応援歌〟として響くんです。さまざまな事情で大変な思いを抱えている方もいらっしゃると思います。そういう方にも頑張って前を向いて歩いていきましょうと背中を押してあげられる曲。先ほども言いましたが、僕自身も初めて聴いたとき、これから独り立ちするのを前にこの曲に応援してもらっている気がしました。皆さんにもそんなふうに聴いていただければ嬉しいなと思います。

――TUBEのおふたりが作られたということもあって、歌謡曲よりの曲調ですが、歌われてみていかがですか。

メロディーラインは演歌と近いですし、何より詞が思い切り演歌なので違和感なく歌っています。ただ、曲調はどちらかといえば今風の歌謡曲よりなので、最初はご年配の方にはどうかなとも思ったのですが、皆さん「すごくいい」と言ってくださいます。この間も80代の男性の方が「いい曲だね」と言ってCDを購入してくださいましたし、これからも幅広いファンにしっかり届けていきたいと思っています。

――歌い方は演歌のときとは違いますか。

レコーディングのとき一度自分の歌い方で歌って、それを前田さんの歌と聞き比べたのですが、何か違うなと思いました。前田さんの『夏の終わりが来る前に』を聴いたときの衝撃がないんです。それで思い切って前田さんの歌い方を少しだけ盗ませていただいて歌い直したてみたら、これだ!と。演歌の歌い方のように、押したり引いたりと抑揚をつけず、言葉をストレートに届けた方がこの楽曲は生きると素直に感じられて、正解でした。

――これまでとは違う歌い方をされたわけですから、難しかったのではないですか。

歌っていて、「あー、前田さんだ」と思いました(笑)。「男らーしくうー、お前らしくうー」って、こう、「くう」っていう語尾を鼻にかけて濁すような歌い方で。歌っていて自分じゃないような感覚もあって、だからすごく楽しかったです。

――レコーディングにあたっては、前田さんからのリクエストなどはありましたか。

レコーディングには、TUBEのおふたりは来られなかったのですが、前田さんからは「北山くんらしく自由に歌ってくれればいい」というメッセージをいただきました。出来上がったCDを持っていったら「僕たちが作った歌だけど、また違った北山くんの世界観になっているね」と喜んでくださって。でも歌い方は「俺の真似したな」ってバレてました(笑)。

――歌詞の内容も曲調も、中高年の男性に刺さる楽曲だと思いますが、北山さんはこの曲、特にどんな層のファンに楽しんでもらいたいと考えていますか。

もちろん幅広く聴いていただきたいですが、特に僕と同世代くらいの方でしょうか。社会に出て、いろんな失敗もして、酒の飲み方も覚えた――そういう人生を振り返る年代になった方、やっぱり40代から50、60代の方に響く作品になってくれたらいいなと思います。

――カップリングは北山さんご自身で作詞・作曲された『あなたへ』。「♪旅立つあなたへ」という歌詞が印象的ですが、どんなイメージで作った曲ですか。

僕が4つの頃から二人三脚で歌の世界を歩いてきた親父が一昨年亡くなりました。がんで入院していたのですが、病気と闘っている親父を励まそうとピアノでワンコーラスだけ、「戦うあなたへありがとう」っていうフレーズを作って送ったんです。親父もそれを聴いて、「病気には負けんばい」と言って頑張っていたんですが、結局亡くなってしまいました。今回カップリング曲を決めるときに、この曲を最後まで作り上げたいと思ってスタッフに相談したところいいんじゃないかということになりました。ただ、この曲は親父に作った曲ではありますが、多くの方に届く歌になるだろうと思って、収録させていただきました。

――ところで、師匠の下を離れて早くも1年がたちました。順調にテイクオフしたという感じですか。

いやいや、最初は不安だらけでした。これまで師匠の側にいて何不自由なく、恵まれた形で歩いてきましたし。それが今度からは一から全部、自分で考えなくてはいけなくなりましたから。ただ、こういうコンサートにしようとか、いつもと違うこういう曲を入れようとか、昔はなかなかできなかったことを自分の考えで実現できるのは、やりがいがあります。もちろんスタッフと相談しながらですが、自分を前面に出すことが出来る環境でもありますし、頑張っていきたいと思います。その分責任も大きいですけど。

――師匠からは何かアドバイスはありましたか。

はい。師匠は、これからは思い切って新しいことにもチャレンジしていけと。ただ、木の根っこの部分では演歌を忘れないように、いつでも演歌歌手である自分に戻ってこられる距離にいなさいということは言われました。

――独り立ちをされて、今後はどんなことを大切に活動していこうと思いますか。

独立して一番不安だったのは、北島音楽事務所の時代にファンクラブに入ってくださった方が果たして戻ってきてくれるだろうかということでした。それがふたを開けたらたくさんの方が戻ってきてくださった。そういう、僕を支えてくださるファンを大切にしていきたいと思っています。各地でライブを開いたり、旅行に行ったり、今後はもっともっとファンの皆さんと一緒にいられる時間を作ろうと思います。

――今、ライブという話が出ましたが、スケジュールを見ると春にかけてコンサートが目白押しですね。

北島ファミリーのコンサート、北島兄弟のコンサート、そしてソロのコンサートと三足の草鞋じゃないですけど、そこは本当に恵まれていると思います。北島ファミリーの皆とはもうその名の通り家族ですから、何も話さなくても考えていることが分かりますから、ステージでは歌う順番だけ決めて、あとはトークでも何でもお客様の反応を見て、アドリブで進行できるので何も心配していません。その辺りは皆、師匠に鍛えられてきましたから。

――以前、大江さんに話を伺ったとき、北島兄弟は〝北島演歌〟を継承していくという北山さんの信念があるので、それについていくだけとおっしゃっていました。北山さんは今後の北島兄弟の活動をどう考えていますか。

基本的にはこれまでと変わりません。〝北島〟の名前が付いている以上、師匠の曲を歌い継いでいく責任があると思っていますので、これからも北島演歌をしっかり伝えていきたいと思います。

――3月30日には「デビュー20周年記念バースデースペシャルライブ」が行われますね。ファンの皆さんは期待していると思います。

今、少し悩んでいまして。これまでのバーデ―ライブではギターやピアノ演奏を披露することもやってきましたが、今回は20周年です。皆さん、20年の歩みの再現を期待されているかなと思いまして。その辺りも考えて今、構成を練っているところです。今回はオーソドックスに僕の20年間を歌でお聴かせする内容になるかもしれません。

――コンサートは歌手にとって、一番の見せ場だと思います。北山さんが今後作ってみたいのはどんなステージですか。

今考えているのは、〝お客様一体型〟のコンサートです。夏だったら浴衣コンサートとか。ただ歌を聴くだけではなくて、皆、浴衣を着つけて集まって、ロビーに綿あめやリンゴあめがあってというような、いろいろな楽しみ方ができるコンサートをやってみたいですね。

――さて、プライベートなことも少しお聞きします。北山さんはいろいろご趣味をお持ちですが、最近のマイブームは何かありますか。

最近ということでもありませんが、興味があるのはファッションでしょうか。これでも一応、芸能人ですし、身に着けるものには気を付けています。特にこだわっているのは靴。おしゃれは足元からといいますしね。僕、磨くのもめちゃくちゃ好きなんですよ。白系の靴が多くて、すぐ汚れるので、玄関でこうやって磨くのが楽しいんです(笑)。

――今日はスニーカーですね。

最近は、楽なのでスニーカーが多いですね。そう、去年めちゃくちゃ高いスニーカーを買いまして。僕の中で最高額のスニーカーで大事にしています。食事会などにそのスニーカーを履いていくと、帰ってからすぐ磨きます、チャッチャッチャッって(笑)。

――先ほど、前田さんとのゴルフの話がありましたが、最近はコースに出られていますか。

月に1回は必ず出ています。スコアはだいたい80台かな。ドライバーは皆さん驚かれるのですが、300(ヤード)近くは飛びますね。ご一緒するのは前田さんのほかには、中山秀征さんとか、細川たかしさんとか。細川さんとは赤城のゴルフ場の名誉顧問を一緒にやらせていただいています。徳光(和夫)さんとも今度、行きましょうと話しているんですよ。

――柔道や空手もおやりになっていたそうですし、体を動かすことがお好きなんですね。

仕事では、乗り物で移動することが多いじゃないですか。移動に6時間、滞在時間1時間なんてことはざらですし、なかには行って、着替えて、歌って、はい帰りますみたいなこともあります。ですから、もう50歳にもなりますし、少しでも身体を動かそうと、最近は時間があれば歩くことにしています。目標は1日5000歩です!

――最後に、20周年を迎えたこれまでの振り返りと今後の目標を伺いたいと思います。

楽しい20年でした。夢だった歌手にもさせていただきましたし、全国各地でいろいろな方と縁を結ぶこともできて、充実した、あっという間の20年という感じです。そして、21年目。新しい旅立ちです。これまでは師匠にしがみついて、ときにはおんぶしていただいてやってきましたが、もう自分の足で歩いていかなくてはなりません。しっかり歩いていくためには、まず健康であることが大事。ということで最近めちゃくちゃ検査してます(笑)。人間ドックにも行きますし、今度、胃カメラも飲みます。もう全部調べて、健康な体で支えてくださる皆さんと一緒にしっかり歩いていきたいと思います。

――このところ演歌界も訃報が相次ぎました。淋しくなりますが、その分、これからは北山さんたちが演歌・歌謡界を盛り上げていかなくてはなりませんね。

皆さん、昭和の時代から令和までずっと演歌を歌い継いできてくださった方々です。そういう先輩方が旅立たれるのは本当に淋しいことですが、でもその歌を、今度は自分たちが繋いでいかなくてはならないという覚悟はもっています。リレーではないですけど、演歌の火が消えないように、次の世代にバトンを渡すのが大切な役割だと思います。

――新しい世代の演歌歌手もたくさん出てきていますから。

本当に個性的な方がたくさん出てきました。僕なんかもうおじさん世代ですよ。テイチク所属歌手でも、若手というと松原健之さんまでだそうで、あれ?そうなのみたいな(笑)。でも今は昔と違ってライバルというよりも若手の皆とともに演歌界を盛り上げていく時代。一緒に頑張っていきたいですね。

――では新曲『夏の終わりが来る前に』を改めてファンの皆さんにアピールしてください。

この曲は頑張って前に進もうと皆さんの背中を押してくれる応援歌でもあり、懐かしい友の顔を思い出すような作品でもあります。王道の演歌とは少しジャンルが違いますが、しっかり演歌の香りもする楽曲なのでチャレンジしてたくさん歌ってください。TUBEの前田さんも「目指せ、紅白!その時は一緒にいくよ!」とメッセージを寄せてくださいましたので、実現できるように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

北山たけし『夏の終わりが来る前に』ミュージックビデオ

北山たけし『夏の終わりが来る前に』

2024年1月17日(水)発売

品番:TECA-24004
価格:¥ 1,500(税込)

【収録曲】

1.夏の終わりが来る前に(作詞:前田亘輝/作曲:春畑道哉/編曲:TUBE・矢野立美)
2.あなたへ(作詞・作曲:TAKESHI/編曲:矢野立美)

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