ラピダス、テンストレント設計のAI半導体で製造受託へ

Miho Uranaka

[東京 27日 ロイター] - 日本国内で最先端半導体の量産を目指すラピダス(東京都千代田区)は27日、カナダの人工知能(AI)半導体開発の新興企業テンストレントからエッジAI半導体の製造を受託すると発表した。ラピダスが最先端半導体の顧客の獲得を公表するのは今回が初めて。政府が支援する形で新工場の建設を進める一方で、量産化開始後の顧客の獲得は課題の一つとされている。

ラピダスの小池淳義社長とともに会見したテンストレントのジム・ケラーCEO(最高経営責任者)は、量産化の時期について「ラピダスの準備ができた段階で生産を迅速に始める」とした。ラピダスは現在北海道千歳市に工場建設を進めており、2027年の量産化開始を目指している。

ラピダスとテンストレントは昨年11月、AI半導体の開発で提携すると発表。当時、将来の受託製造の可能性にも言及していたが、今回具現化。両社がこの日公表した協業の詳細の中で明らかにした。

米アップル、テスラ、インテルなどで半導体開発に携わってきたジム・ケラー氏が率いるテンストレントは、2ナノレベルのAIエッジデバイスの開発で必要とされ、コンピューターの頭脳に当たるCPUを設計。アクセラレーターチップの開発を東京大学などが行う。ラピダスはこれらを3次元のチップレットにまとめ、生産する。

ラピダスは半導体の設計と製造が一体となって新しい価値を生み出し、設計から市場に提供するまでの時間を最短化するビジネスモデルを提唱。小池社長は、テンストレントとの協業について、「相乗効果を最も引き出すことができる」と語った。

次世代技術の研究機関「最先端半導体技術センター(LSTC)」(東京都千代田区)が2月に公表した「エッジAIアクセラレーターの開発」の枠組みの中で進める。日本政府は最大450億円を支援すると発表している。

エッジAIは、スマートフォンやカメラなどの端末にAIを組み込み、データをクラウド上に送らずとも、デバイス上で処理する。データ処理の迅速化と電力消費削減などの観点から自動運転や産業用ロボットの分野などで注目されている。小池社長は「AI開発の上で消費電力をいかに抑えるかが重要」と指摘した上で、あらゆるものでAIが使用される中、「どんどん専用化されていく。迅速にこれに対応する」と述べた。

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