【死後離婚】45歳の夫が心筋梗塞で急死!「介護×仕事×子育て」で鬱病になった妻は死後離婚を選択

夫亡き後、義母・義妹と「ひとつ屋根の下」で暮らせますか?

仕事や子育てをしながらの介護は、介護をする人にとって大きな負担となります。介護をする人のほうが、心のバランスを崩してしまうケースも珍しくありません。

今回は介護・仕事・子育てが重なった状態で夫が急死。

こころのバランスを崩して鬱病を発症し、俗にいう「死後離婚」を決断したA子さんの事例を紹介します。

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死後離婚=「姻族関係終了届」とは

夫婦のどちらかが死亡した後、その亡くなった配偶者の血族(義理の両親、義理の兄弟姉妹など)との関係を終了させる、俗にいう「死後離婚」は、「姻族関係終了届」という届け出を出すことでできます。

姻族関係終了届の書式例

姻族関係終了届の書式、見たことはありますか?

この姻族関係終了届が受理されると義理の両親とは親族ではなくなり、介護などの扶養義務を負う必要がなくなります。

【事例】「介護×仕事×子育て」で鬱病になった妻は死後離婚を選択

「介護×仕事×子育て」により心身ともに限界になり、夫の急死をきっかけに鬱病を発症。死後離婚をした実際の事例を紹介します。

「義母と同居」A子さん(40歳・会社員)の場合

A子さんは地方都市に住む40歳の会社員です。

大学を卒業後、地元の地方銀行に入社し窓口担当として働いています。プライベートでは25歳の時に5歳年上の夫と結婚し、2人の子供を授かりました。

現在は夫の実家を改装し、義母と夫、14歳の長男・12歳の長女の5人で生活しています。

時短勤務で義母の介護を担当

義母は5年前から週に3回、人工透析に通っています。

病院までは車で10分ほどですが、義母は一人で病院に行くことができません。夫と話し合った結果、A子さんが介護を理由に職場に時短勤務を申請し、送迎を行っています。

義母の通院は働きながら子育てをするA子さんにとっては負担ですが、義母には子供が小さいときに子育てを手伝ってもらった恩があります。

また、夫がいつも優しくA子さんの気持ちに寄り添ってくれていたので、A子さんは仕事と子育て・介護をなんとか両立させていました。

ある日、義理の妹が子供を連れて実家に戻ってきた…

そんなある日、義理の妹B子さんが、小学生の3人の子供を連れて実家に戻ってきました。B子さんの夫が浮気をしたことをきっかけに離婚したのです。

慰謝料と養育費は毎月振り込まれるものの、結婚後ずっと専業主婦をしていたB子さんが3人の子供を養える仕事につくことは難しく、生活費に困るようになり実家に居候すべく戻ってきたのです。

A子さん夫婦は戸惑いましたが、夫に浮気されたB子さんを不憫に思い、同居することにしたのです。B子さんは生活費を稼ぐべく、近所の介護施設に就職しました。

しかし、介護施設の仕事はシフト制で勤務時間が不規則な上に、夜勤もあります。月の半分程度は子供たちが帰宅した時間帯にB子さんがおらず、仕事を終えたA子さんが5人の子供たちの食事やお風呂・宿題の面倒などを一手に引き受ける状態でした。

仕事に介護に5人の子供の子育て…。体力も気力も限界に近いA子さんの心を繋ぎ止めてくれていたのは、優しい夫でした。夫はなるべく早く仕事を切り上げ帰ってきてくれる上に、食器洗いや洗濯物を畳むなど、A子さんの負担を減らそうと尽力してくれたのです。

ある日突然、45歳の夫が心筋梗塞で帰らぬ人に

愛する夫が、突然帰らぬ人に…。

そんなギリギリの生活をしていたある日、夫が入浴中に心筋梗塞を起こし、突然帰らぬ人になりました。まだ45歳の若さでした。

突然のことにA子さんは大きなショックを受けたのは当然ですが、今まで夫の優しさが繋ぎ止めてくれていた心の糸がぷっつりと切れてしまったようです。

夫の死後も休みなく続く、仕事に介護に子育て…。次第にA子さんは心のバランスを崩すようになり、突然涙が止まらなくなることが増えていったのです。

職場の同僚に相談したことをきっかけに死後離婚に踏み切る

ある日の昼休み、A子さんは同僚に今の自分の状況について話しました。

その同僚は長年、個人営業を担当しているため、相続制度についてよく知っています。その同僚から「死後離婚も選択肢の一つじゃないかな?このままだとA子さんが限界になるよ」とアドバイスをしました。

しかし、A子さんが「死後離婚」を選択すると、人工透析を続ける義母と、浮気されて離婚した義理の妹とその子供たちを放り出すことになる気がして、なかなか踏み切れずにいました。

しかし、夫の死後も続く、仕事・介護・子育ての日常に心と身体は限界を迎え、ある日A子さん自身が倒れてしまいました。

病院に運ばれたAさんは鬱病と診断されました。

そして、鬱病と診断された自分を心配そうに見つめる実の子供たちの表情を見た時に「私まで病気になってしまっては、この子たちを守ることができない。義母や義理の妹に気を使っている場合ではない!」と死後離婚を決意しました。

遺影に手を合わせるたびに心を痛めるA子さん

A子さんは子供2人と賃貸アパートを借りて生活をしています。鬱病の症状も落ち着き、忙しくも平穏な毎日を過ごしています。

しかし、夫の遺影に手を合わせるとき、ふっと義母や義理の妹のことを思い出し、「自分の頑張りが足らなかったから、こんな結果になってしまったのではないか」と心が痛むそうです。

夫亡き後、義母・義妹と「ひとつ屋根の下」で暮らせますか?

仕事や子育てをしながらの介護は、介護をする人にとって大きな負担となります。介護をする人の方が、こころのバランスを崩してしまうケースも珍しくありません。

A子さん一人が義母の介護を背負う状態でなければ、彼女が鬱病を発症することもなく、義理の妹であるB子さんとも知恵を出し合いながら義母を支えていけたかもしれません。

そもそもの話、夫亡き後、義母・義妹と「ひとつ屋根の下」で暮らし続けることは、相当な覚悟が必要となるでしょう。

自分自身の介護が必要になった時に、家族が介護に専念できる環境にいるとは限らないのだということは、私たちみんなが覚悟しておく必要があります。

介護を「一人娘」や「長男の嫁」などの誰か一人だけに依存してしまうことは極力避けたいものです。そこで家族を救う一つの道が、介護をプロにお任せするという選択肢。

遠い将来の自分と家族のために、介護資金は若いうちから計画的に準備していきたいものですね。A子さんの事例が介護資金を計画的に準備するための、はじめの一歩となれば幸いです。

※記事中の事例は、個人情報に配慮し内容の一部を脚色しています。

参考資料

  • e-GOV法令検索「昭和二十二年司法省令第九十四号 戸籍法施行規則」
  • 大阪市「姻族関係終了届」
  • 豊中市「各種戸籍届書様式」

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