市議会でのトラブルを県知事が仲裁?“タケノコ発言“で注目「審決申請」ってなんだ

「実は、私の土地(の中)にも市の土地が存在しています。竹林になっており、私は毎年そこからタケノコを掘って利益を得ています」

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2023年8月、静岡県沼津市議会でこう発言した江本浩二市議。同じ会派の議員が長年、沼津市の土地を駐車場として、貸し出し賃料を得ていたと市から指摘されたことを受け、その議員を擁護する目的の発言だったとされています。

その後、江本市議は「隣の自分の土地でタケノコを掘って販売したという意味だった」と説明を“修正”すると、この発言を市議会が問題視。江本市議に「陳謝すべし」との懲罰を下しました。江本議員はこれを拒否。議会は「議会への出席停止1日」という一歩踏み込んだ懲罰を決議。緊張感が高まりました。

処分に不満の市議、県が「行司」務める「審決」を申請

すると、江本市議は11月1日、静岡県庁の市町行財政課を訪ねます。川勝平太知事に「審決」の申請をしたのです。

聞き慣れない「審決申請」ですが、同課によると「地方自治法第255条の4の規定に基づく手続き」で、公共団体の機関の処分によって「違法に権利を侵害された」と考える人が、都道府県知事に「審理」を申し立てることができる制度。要するに、市や町の組織が下した決定を不服に思う人の「行司役」を県が務めるということです。

同課は申請を受理。これから、弁護士や学術経験者など3人が「自治紛争処理委員」として知事に任命され通常数か月間、審理を重ねます。知事は委員らの意見を踏え、次の3つのいずれかの判断を下すことになります。

申請が不適法な場合は「却下」、申請に理由がない場合は「棄却」、そして、申請に理由があると認めた場合は原処分(沼津市議会による一連の懲罰処分)を取り消す「認容」となります。

強力な拘束力を持つ審決 「容認」判断下れば懲罰処分は取り消し

審決の決定は強い権限で、その内容に関係行政庁は従わなければなりません。市や町レベルの決定を覆す力が県にはある、ということです。「認容」の判断が下った場合、沼津市議会は懲罰処分を取り消さなければなりません。ちなみに、県と同レベルとされている政令指定都市も例外ではありません。

それでは、県の処分に不満があった場合はどうなるのでしょうか。同課の説明によると「都道府県の機関がした処分については、総務大臣に審決の申請をすることができる」ということです。

県によると、市議による審決申請は、平成4年度に旧清水市議会議員によって起こされており、その際は申請は不適法として却下されたという記録が残っています。

地方自治は民主主義の学校 “校内トラブル”はどう解決?

納得できない判断が下された時、市町村の決定は県が、都道府県の決定は国が総合的に審査するこの制度は「地方自治」が取り入れられた戦後に「地方自治法」として整備されました。

「地方自治は民主主義の学校である」と言われているように、民主主義国に生まれ変わった日本の基礎構造は地方自治体なのです。タケノコをめぐって起きた今回の“校内トラブル”には、どのような判断が下るのでしょうか。

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