『落下の解剖学』第96回アカデミー賞 作品賞、監督賞、主演女優賞ほか全5部門ノミネート

第96回アカデミー賞にて5部門にノミネートされた『落下の解剖学』が公開中。

▶︎第96回アカデミー賞5部門ノミネート『落下の解剖学』関連記事はこちら

『落下の解剖学』監督/脚本ジュスティーヌ・トリエ&共同脚本アルチュール・アラリが語る本作のキーポイント - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)ヒューマンサスペンス『落下の解剖学』、アカデミー賞前哨戦ゴールデングローブ賞で脚本賞&非英語作品賞の2部門で受賞! - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)

夫の殺害容疑で作家の妻が起訴されるが、その裏には思わぬ事実が?

第76回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジュスティーヌ・トリエ監督の長編第4作で、第96回アカデミー賞でも作品賞など全5部門で候補となっているフランス製の問題作。

雪山の山荘で一人の男が転落死する。事故死と思われたが、次第にベストセラー作家である妻に殺人の容疑が向けられ、唯一現場に居合わせた11歳の息子の証言が重要視されるが、彼には視覚障がいがあった。裁判によって事件の真相が追及される中、夫婦だけの秘密や嘘が明るみになってくるが……。

事故か、殺人か? 真実の解明とともに、隠されていた夫婦の深遠な領域に“落ちていく”かのようなドラマが展開する。

主演は『ありがとう、トニ・エルドマン』(2016)などで知られるドイツ女優のザンドラ・ヒュラー。共演は『美しき棘』(2010)のスワン・アルロー、新人のミロ・マシャド・グラネールら。

脚本のアルチュール・アラリ、撮影のシモン・ボーフィスは、トリエ監督の前作『愛欲のセラピー』(2019)でもチームを組んでいる。

あらすじ

フランスの雪山の山荘に、ドイツ人作家のサンドラ(ザンドラ・ヒュラー)が、教師で作家を目指す夫サミュエル、11歳の息子ダニエル、愛犬スヌープと共に暮らしていた。

ある日、ダニエルとスヌープが散歩から戻った時、視覚に障がいのあるダニエルは山荘の前でサミュエルが血を流して倒れている様子がかすかに目に入る。ダニエルの叫び声でサンドラが異変に気づき駆け付けるが、夫は亡くなっていた。

事故か自殺か、他殺か。検視が始まると、サンドラは旧知の弁護士ヴァンサン(スワン・アルロー)と連絡を取り、彼女が昼寝をしている間の出来事だと説明する。ヴァンサンは窓枠の位置の関係で自殺だと主張することにしたが、サンドラは夫が息子の前で自殺するはずがないと言う。

そして検察はサンドラを起訴する決断をする。実は夫妻は前日に激しい喧嘩をしていた事実がサミュエルの残したUSBから判明したのだ。やがて裁判が始まると次々と夫婦の秘密や嘘が明かされていくのだが……。

登場人物

サンドラ(ザンドラ・ヒュラー)

ベストセラー作家。夫の殺害容疑で裁判にかけられるが…。

ダニエル(ミロ・マシャド・グラネール)

サンドラの11歳の息子。事故によって視覚に障がいを持つ。

ヴァンサン(スワン・アルロー)

サンドラの旧知の弁護士。彼女を弁護するが次々新事実が。

検事(アントワーヌ・レナルツ)

裁判でサンドラの隠し事を追い詰めていく。

ジュスティーヌ・トリエ監督が語る唯一無二の女優ザンドラ・ヒュラーとは

Photos by Getty Images

主人公サンドラはリベラルな思想、セクシュアリティ、キャリア、母としての在り方ゆえに他人から白い目で見られてしまう女性です。ザンドラ(ヒュラー)は前作『愛欲のセラピー』で組んで、もう一度仕事をしたいと思い、彼女を念頭にこの主人公を書きました。

そしてザンドラは期待以上にヒロインにメッセージ以上の複雑さと深みを与えてくれました。仏語、独語、英語と複数の言葉を使用することで役柄に複雑性と不透明感を醸し出してくれましたし、観客との距離感も作り出しています。内側から滲み出るような存在感があり、脚本にも、数シーンを書き直すように働きかけてくれることもあったんです。

彼女が自分の一部を本作に捧げてくれたから唯一無二の演技を撮影することができたんだと思います。

▶︎第96回アカデミー賞5部門ノミネート『落下の解剖学』関連記事はこちら

『落下の解剖学』監督/脚本ジュスティーヌ・トリエ&共同脚本アルチュール・アラリが語る本作のキーポイント - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)ヒューマンサスペンス『落下の解剖学』、アカデミー賞前哨戦ゴールデングローブ賞で脚本賞&非英語作品賞の2部門で受賞! - SCREEN ONLINE(スクリーンオンライン)

『落下の解剖学』
公開中
フランス/2023/2時間32分/配給:ギャガ
監督:ジュスティーヌ・トリエ
出演:ザンドラ・ヒュラー、スワン・アルロー、ミロ・マシャド・グラネール、アントワーヌ・レナルツ

©2023 L.F.P. – Les Films Pelléas / Les Films de Pierre / France 2 Cinéma / Auvergne‐Rhôe‐Alpes Cinéa

© 株式会社近代映画社