インドネシア・ミレニアルの肖像 Kiki Febriyanti (30) ドキュメンタリー映画監督

私が生まれ育ったのは東ジャワの小さな街、ボンドウォソです。7歳ごろから、家の隣にあった映画館へ通うようになりました。映画館へ行くのは映画を見るためではなく、貼ってある映画のポスターを見たり、映画館の中の様子や、誰も座っていない椅子が並んでいるのを見るためです。掃除の人が中へ入れてくれたんです。こうして映画の世界にあこがれるようになり、「どうやって作るのかな?」などと考えるようになりました。

高校生の時にはニア・ディナタ監督の映画が大好きになりました。「チャ・バウ・カン」、「アリサン」、「ブルバギ・スアミ(夫を分け合う)」など、ただの映像ではなくて社会問題が提起されているんです。

両親の方針で医薬専門学校へ進み、薬局で働きながら医薬品を作る勉強をしていましたが、それは私の夢からはほど遠いものでした。夢をあきらめ切れず、東ジャワのジュンブル大学でインドネシア文学を勉強し(行きたいジャーナリズム学科は私立大学にしかなく、学費が高かったので)、結婚式の写真を撮ったり、女性ジャーナルで働いたり、ドキュメンタリー映画を撮ったりし始めました。仕事をするうちに、子供のころからの問い、「ジェンダーとは何か?」が大きく膨らんでいきました。

いろいろな映画を撮ってみて、女性はまだまだ、雇用機会、人間関係、性などのさまざまな面で、差別されていると感じています。性差別に関して無自覚な人も多いです。私は映画を作ることを通して、映画を見た人がジェンダーの問題を考え、そしてできれば、状況を改善するために何か行動を起こすようになれば、と考えているんです。

キキ・フェブリヤンティ
1986年、東ジャワ州ボンドウォソ生まれ。2008年、元・精神病患者のドキュメンタリー「Jangan Bilang Aku Gila!(私を狂人と呼ばないで)」でデビュー。2012年、やせたいと願う女性の姿を描いた短編ドキュメンタリー「Yup, It’s My Body! (おっと、これは私の体だ)」、2015年、ブギス人の伝統文化にある5つの性を描いた「CALALAI In-betweenness(Calalai=男性的な女性)」を発表。

“Yup, It’s My Body!”

体重にコンプレックスを持ち、やせたいと願う女性の日常生活を描いた13分の短編。下記で全編が見られる(英語字幕付き)。

“CALALAI In-betweenness”

ブギス人の伝統にある5つの性(男性、女性、Calalai=男性的な女性、Calabai=女性的な男性、Bissu=中性)を描く。下記で予告編が見られる。https://www.youtube.com/watch?v=VMnmU-_xhXw

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