『よう実』山内に今クールの助演男優賞を! 岩中睦樹の芝居も迫真中の迫真

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。2月19日から2月25日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

いよいよ2月も終わり。クールの終わりも徐々に見えてきて、みなさんの好きなアニメからもクライマックスの匂いを感じられるようになってきたのでは。ハッピーエンドもあれば、悲しい別れを伴うビターなものもあったりして、いろいろな味が楽しめるのはアニメが豊富なおかげです。

というわけで今週は、個人的にはとても悲しかった別れの神回から紹介します。

●さらば助演男優賞級の問題児『ようこそ実力至上主義の教室へ 3rd Season』

連載の3回目で触れた通り、この『よう実3rd』には山内というクラスメイトの男子がいるのですが、こいつが成績的にまったく不出来なうえに態度も悪く、第4話を筆頭に要らない言動ばかりでものすごい存在感を示していました。それこそブレイバーン級のインパクトです。

しかし投票でクラスからひとりの退学者が決まる特別試験「クラス内投票」が始まり、山内も山内なりにいろいろと(悪巧みを)頑張ったのですが、一番の批判票が集まった結果退学となってしまいます。それも「惨めで、醜く、救いようのない不良品」呼ばわりまでされて……Bパートに入ってから教室を出るまで、山内役の岩中睦樹さんの演技が迫真中の迫真でとても素晴らしかったのでした。

中盤のクライマックスで退場となってしまった山内ですが、個人的には冬クールどころか今年イチの助演男優賞確定レベルの評価。もはや主人公級の活躍だったため、いつか彼が主役の追放系短編『山内くんのリベンジ』みたいなスピンオフを期待したいところです。

●いつも以上の美味しさに思わぬトッピングも『ダンジョン飯』

ここで触れなくても観ている人多数でしょうが、高いアベレージの『ダンジョン飯』のなかでも第8話は出色の出来だったのでは。毎度驚かされる作画は特にBパートのウンディーネ戦でとても小気味よいアクションが目を見張り、話としてもAパートで回想された、才女と謳われた魔法学校時代に対してすっかり冒険慣れした現代のマルシルがひとり奮闘し、最後は血が足りないせいで水棲馬(ケルピー)の焼き肉でレバーばかり食べさせられ悲痛な叫びをあげる……という笑いあり涙ありな展開が楽しいエピソードです。

また今週は『魔都精兵のスレイブ』でも焼き肉を食べたり、『最強タンクの迷宮攻略 ~体力9999のレアスキル持ちタンク、勇者パーティーを追放される~』でも同じ水棲系(?)のサハギンを食べたりといったコンボが発生し、さらにゲーム『ウマ娘』の生放送の真裏の時間帯に(水棲)馬を食べる背徳感といったトッピングもあり、とっても美味しい1話となりました。

※ちなみに、翌週の『道産子ギャルはなまらめんこい』第8話でも焼肉をしていました。

●1話で4つも面白い試合やってくれた『明治撃剣-1874-』の剛腕ぶり

ずっと当連載で触れたかった冬アニメ『明治撃剣-1874-』で、ようやく舌を巻くようなエピソードがありました。同作では明治時代初期の1874年を舞台に、警察となった元会津藩士の折笠静馬とヤクザに雇われた修羅神狂死郎というふたりの剣士を中心とした物語が描かれます。

そんな時代劇アニメの第4話で、大日本撃剱会という剣の腕自慢大会が始まってからめっぽう面白い。第5話でトーナメント形式の本選に勝ち上がった8名の戦いが始まるのですが、この1回戦が「これまでの描かれ方的に、明らかにこっちが勝つだろうな」と予想できる組み合わせばかり。そのため少し間延び感を心配したのですが、この第5話で1回戦4試合を一気に描ききってくれました。

しかも1試合1試合、しっかりキャラを立ててくれるので(やたら時間に厳しい槍使いの外国人とか、胡散臭い鎖鎌使いとか負け役も面白い)、まるでゲーム『サムライスピリッツ』みたいな感覚で試合を楽しめます。さらに大会の裏でうごめく陰謀やそれぞれの思惑といった要素を絡めながら、矢継ぎ早に展開するスピード感に脱帽でした。ほかの、何週もかけて過去回想しながら1試合やるようなバトルアニメも少しは見習ってほしい。

本作、間違いなく冬クールでも屈指の異彩を放つアニメながら、BS松竹東急のみの放送(配信自体はいろんなサイトでしているようですが)、しかも放送が飛び飛びということもあってやや存在感が薄いような。そもそも海外のストリーミングサービス・Crunchyrollによる作品で当初は日本でのTV放送の予定がなかったというシロモノですが、もうちょっと評価されてもいい作品では。

(文=はるのおと)

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