道に迷うのが楽しい! 田舎暮らしで見つけた徳島の不思議な場所(海部郡編)

【拝啓、徳島より・20】都会に住んでいた頃から街歩きはとっても大好きなアクティビティでした。目的も決めずに降りた駅の周りをブラブラ。ふらっと渋い喫茶店に立ち寄ったり、何の店だかよくわからない看板が並ぶ路地を恐々通ってみたり、よく知る街でもそうでなくても、色々な角度から地域を眺めることが好きでした。そんな私の徘徊趣味は田舎町に移住してからさらに加速。運転を覚えて行動範囲も広がったため、まだ見ぬ面白いスポットを探して車を走らせることも多い今日のごろです。今回は徳島の特に南部エリアを徘徊する中で見つけた、徳島県民からも「え、どこそれ!?」と言われるとっておきの場所をご紹介します。

一見なんの変哲もない池

趣味のレベルを超えた鯉の池「白沢錦鯉の池」

徳島駅から約50km、車で約1時間20分のドライブを楽しんだ先にある「白沢錦鯉の池」。ウミガメの町として知られる美波町と風光明媚な漁村の町・牟岐町のちょうど間、山間の小さな集落の中にあります。

池の中にはすごい数の錦鯉が

白沢錦鯉の池は、その名の通りたくさんの錦鯉が飼われている池なのですが、その数がもう凄まじいのです。テニスコート一面分ほどの広さの池の中にはびっしりと錦鯉。

管理している方に数を聞いたところ「俺でもわからん」とのこと。なんとも大雑把なところが田舎ならではですね。赤に白に黄色にと、さまざまな色を纏った鯉の群れはまるで一つの布地のようにも見えます。

お金の払い方が田舎ならでは。一袋は無料、二袋目から100円

白沢錦鯉の池では1グループ一袋まで餌代は無料で鯉の餌やりもできます。二袋目以降は100円で購入でき、代金は餌袋が置かれた箱の横につけられた貯金箱のような筒に投入すればいいというのも何とも平和な世界です。

しかも餌は袋いっぱいに入っているので、お子さんを連れてきたとしても、大体一袋で満足できるだけの量が入っています。

餌を食べる鯉たちの必死さがすごい

餌を投げ入れると鯉が一斉に食いついてきて、ちょっと怖いくらいの勢いです。鯉の数が多いのはもちろん、距離もすごく近いので、餌にありつこうとする鯉の必死な形相を間近に見ることができます。

「自由に使ってね~」と言われた網とバケツ。もちろん錦鯉はとっちゃダメ

鯉の池の外には自由に使える網とバケツが置いてあるので、お玉杓子をすくうなどして好きに使って遊んでいいそうです。側溝には綺麗で冷たい水が流れていて、夏場は足を突っ込んで涼むこともできます。

こんなに素晴らしいお散歩スポットが全て管理人さんの趣味というから驚き。国道からもほど近く、車で簡単に行けるので、ぜひドライブついでによってみてほしいおすすめスポットです。

幻想的な苔の絨毯「浪切不動尊」

この世ではないような雰囲気
「浪切不動尊」

徳島県最南端の町である海陽町はサーフィンのメッカとして知られ、太平洋に面した国道沿いには多くのサーフショップが並びます。そんな海のイメージが強い海陽町ですが、少し内陸に入るだけで、その景色は一変。長閑な田園風景の後ろに四国山地の山々が連なります。

JR四国の阿波海部駅を超えて、海部川を渡ってから国道を外れて約10分。畑を流れる小川の横にひっそりと佇むのが「浪切不動尊」です。

門を潜った一歩先から苔の絨毯

しんっと静まり返った境内にはわずかに水の流れる音が響きます。年季の入った門を抜けると、そこはまるで異世界。一面が苔で覆われ、しっとりとした独特の空気が漂います。

奥には苔に覆われた石段が続き、その先には2本の杉の大木が立っていました。説明書きによると、その昔、この地に立ち寄った弘法大師・空海が立てた杉の箸が大きくなって大木となり、杉の後ろの大岩を支えるようになったのだとか。

大木に守られるように佇む社

確かに大木の後ろには木に寄りかかるように大きな岩があり、今にも落ちてきそうな迫力です。また、訪れた日は雨が降った次の日だったので、御神木のすぐ脇にある滝の水量は多く、滝壺近くにあった竜の銅像もどことなく生き生きと見えました。

木漏れ日が心地よくさします

木々の間からは時々木漏れ日が差し込み、艶々とした苔を照らします。水の流れる音や風に木が揺れる音に耳を澄ませていると、時間が止まったかのような感覚でした。徳島南部で人里離れて何もしない時間を楽しみたい時にオススメの「ぼーっとスポット」です。

あたりは長閑な田園風景

目的地のないお出かけもいいもんだ

ドライブでも散歩でも、散策のいいところは移動自体を楽しめること。特に目的地を決めずに気ままに行きたいところにいく。曲がりたいところで曲がる。その先に何か面白いものがあるかもしれないし、そうでないかもしれない。散策している時間そのものを楽しむことが醍醐味だなあと思います。

物干し竿に干してあった鯵の干物

そういえば、以前、近所を歩いていたら物干し竿に鯵の干物が干してあるのを見つけて思わずガッツポーズしたこともありました。見たことのない光景を発見したことがとても嬉しかったのです。

「もっと乾燥させたかったのかな、なんで干したんだろう・・・」なんて考え出したら日が暮れかけていました。

都会では散歩していれば何かしら目新しいものが見つけられましたが、徳島ではなかなかそうはいきません。繁華街やお店が隣接しているわけではないので、ドライブしたとて、新しいものを見つけられる確率は稀です。

だからこそ発見が楽しいし、同じような景色の中にも“何か”を見つけてみようと、移住してから“散歩のアンテナ”が格段に広がったような気がします。目的地を定めないドライブやお散歩はこれからも私の大切な日課です。(フリーライター・甲斐イアン)

■Profile

甲斐イアン
徳島在住のライター、イラストレーター。千葉県出身。オーストラリア、中南米、インド・ネパールなどの旅を経て、2018年に四国の小さな港町へ移住。地域活性化支援企業にて、行政と協力した地方創生プロジェクトの広報PR業務に従事。21年よりフリーランスとなり、全国各地の素敵なヒト・モノ・コトを取材しています。

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