献体を火葬し遺骨を6年放置、兵庫医大に150万円賠償命令 遺族「人の気持ち重視した管理を」

判決後、代理人弁護士らと並んで会見に臨む原告の女性(中央)=27日午後、神戸市中央区橘通1

 兵庫医科大学(兵庫県西宮市)が研究用に提供を受けた遺体(献体)を火葬し、6年半放置していた問題で、遺族の女性(66)=同県宝塚市=が大学に1100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が27日、神戸地裁であった。河本寿一裁判長は「精神的苦痛は決して軽視されるべきでない」などと原告の主張を一部認め、150万円の支払いを命じた。

 判決などによると、兵庫医科大は2014年、原告女性の父=当時(82)=の献体を受け、15年1~3月に解剖実習を実施。同4月に火葬したが、女性は21年に問い合わせて火葬されたことを知った。大学は遺骨の返還を申し出たが、女性は父の遺骨かどうか確認できないため引き取りを拒否した。その後のDNA型鑑定でも本人と特定できなかったという。

 河本裁判長は、担当事務員が遺族への連絡や後任への引き継ぎを怠るなどし、大学側の管理体制が構築されていなかったと指摘。本来の返還準備期間を考慮しても火葬から約2カ月後には遺骨を返還すべきだったとした。

 一方、大学は遺骨を安置室に保管し粗雑に扱った証拠はないとした上で、遺骨の返還は可能だったとした。

 判決後、原告の女性は会見し、「裁判所には主張が半分ぐらいしか理解されなかった。大学には、世の中の役に立ちたいと思って献体する人の気持ちを重視した管理や対応を望みたい」と訴えた。

 兵庫医科大は「現時点で判決文が届いていないため、コメントは差し控える」とした。

【献体】遺体を医学教育や研究に役立てたいという人が死後、遺体を無条件、無報酬で提供する制度。生前に献体したい大学や団体に登録し、親族の同意も必要になる。日本篤志献体協会によると、国内に献体篤志家団体は61あり、献体した人は約15万5500人(2023年3月末時点)に達するという。

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