夏帆、麻生久美子&宮﨑あおいとの共作に舞い上がる 「こんなに好きが詰まった座組みが」

NHK夜ドラ『ユーミンストーリーズ』の記者会見が2月27日にNHK放送センターで開かれ、3つの物語でそれぞれ主人公を演じる夏帆、麻生久美子、宮﨑あおい、制作統括の神林伸太郎が登壇した。

本作は、松任谷由実の楽曲からインスピレーションを得て、3人の小説家が生み出した3つの物語。ドラマ化をするために、映画、ドラマ、ミュージックビデオなどで活躍する3人の監督、3人の脚本家、出演者たちが集結した。

第1週の「青春のリグレット」は主人公・菓子を夏帆、原作は綿矢りさ、脚本を岨手由貴子、演出を菊地健雄が担当。第2週の「冬の終り」は主人公・藤田朋己を麻生久美子、原作は柚木麻子、脚本をねじめ彩木、演出を箱田優子。第3週の「春よ、来い」は、主人公・カナコを宮﨑あおい、原作は川上弘美、脚本を澤井香織、演出を奥山大史が担当している。

少しづつ世代も異なる3人の中で、夏帆は最も年下となる。3人が揃うのはこの日が初めてということで、マイクを渡された開口一番に「個人的にですね、麻生さんと宮﨑さんの作品をずっとずっと観てきてたので……」と舞い上がる夏帆に、麻生と宮﨑は「(またまた~!)」というようなジェスチャーで笑みを見せる。

続けて、夏帆は「こんなに好きが詰まった座組みがあるんだって、心が震えて、二つ返事でお受けさせていただきました。撮影自体は2週間に満たないぐらいの短い期間だったんですけど、クランクアップの時にもう数カ月ぐらいの作品に参加してたんじゃないかと思うぐらい濃密で、達成感と、充実感の作品でした 」と撮影を振り返る。

麻生は夏帆と同じく3人の並びに喜びを滲ませながら、「箱田監督とずっと長い作品でご一緒したいなっていう思いがあったので、いい経験をさせていただきました」と思いを明かす。今回の放送にあたって松任谷由実は「私の楽曲→短編小説→脚本+演出→役者さんたちの演技→ドラマ。こんなバトンリレーがあるなんて、不思議で光栄です」とコメントしており、それを受けて麻生も「ユーミンさんの曲から始まって、 今ここに私がいるっていうのが不思議だなと思って、縁を感じています」と心境を語った。

宮﨑は麻生とは何度か共演しているが、夏帆とはこの日が初対面。「今日、3人で集まってみて、『あ、なんか楽しいな』ってワクワクする感じがあって、緊張よりも楽しいが勝っていて。短い時間ですけど、楽しくお話ができたらいいなと思います」と新たな縁を予感させていた。

夏帆は「青春のリグレット」で、結婚して4年で夫に浮気をされ、夫婦関係が破綻しかけている菓子を演じる。夏帆は役柄について、「一言でこういう役って表せられないのが、 この役の魅力」と前置きしながらも、「今まで、 ちゃんと本気で人と向き合ってこなかった人で、大きな挫折をきっとしたことがない彼女が、夫から離婚を切り出されて、昔の恋愛を思い出して、自分がしてしまった、言ってしまったことから、相手をどれだけ傷つけたのかを知っていく――そんな彼女の成長物語でもあるんじゃないかな」と人物像を紹介。

宮﨑は自身が芝居をするカナコについて、「お父さんを早くに亡くして、シングルマザーの母が育ててくれたという経緯もあったり、人と自分から距離を縮めようとしなかったりする人」とその生い立ちを話しながら、「普段よりは少しゆっくり話をしてみようかなと考えたりしました。語尾はちょっと上げてくださいとか、ここはトーンを下げていくださいとか、(奥山)監督が丁寧に演出をしてくださる方で、私はそれがすごく好きで。監督の思い描くカナコさんに少しでも近づけるように、毎日楽しくお芝居をしていました」と撮影の日々を回顧していた。

題材になっているそれぞれの楽曲については、夏帆が「青春のリグレット」の〈私を許さないで 憎んでも覚えてて〉の歌詞が第1週のストーリーの核になっていると話す。「演じていても不思議な気分になるというか、曲の世界観そのものではないんですけど、自分がユーミンさんの歌の世界に入り込めているような。実際に歌詞に出てくるようなシーンがあったりするんですよ。そんなシーンを撮っていて、今、私ユーミンさんの世界にいられているのかもっていう、喜びがあったりしていました」と収録を経ての体験談を語る。

麻生は今回のドラマの話を受けて「冬の終り」を改めて聴き返したという。主人公はスーパーでパートとして働く藤田朋己。描かれるのは新しく入ったパートの仙川真帆(篠原ゆき子)を巡る友情物語だ。「脚本になった時も、小説を読んだ時とはまたさらに違った印象を受けたので、それぞれが自由に作品を膨らませていく感じがしたのが良かったなと思いました。私もその一員の中で、役者として動けていたかなと思います」と謙遜しながらも答えていた。

母が大のユーミンファンで撮影に入る前は母と一緒にライブを鑑賞したという宮﨑。その公演では「春よ、来い」も歌われていた。「ユーミンさんのパワーとか声の感じ、思いを、役者として私なりにバトンを受け取って。現場にいる時は、ユーミンさんの声がどこかで流れているような意識を常に持って過ごしていたような気がします」と語った。

また、各話の見どころについては代わりに制作統括の神林が、「1編を15分で4話までしか描けないということが、まず作っていく上で非常に難しい部分でした。その15分それぞれに山を作っているので、全部が見どころなんですけれども、全てユーミンさんの曲でありながら、一つひとつ違う個性を持って生み出された作品なので、曲がどんな形で登場するのかっていうところは、まず見どころかなと思います。3編とも全く違った形で、曲の扱い方も含めて、単純にBGMとしてかかるとか、エンディングでかかるということではない、曲それぞれに意味を込めて作っているので、どんな形で曲が登場するのかということも楽しみにご覧いただければと思います」とアピールしていた。

なお、会見の会場には各話の演出を担当した菊地健雄、箱田優子、奥山大史も姿を見せていた。
(文=渡辺彰浩)

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