藤沢の路上で桐島聡容疑者を介抱した女性 救急車呼ぶ?に首振り「大丈夫」 「ガリガリ君」とマスクメロン欲しがる

 1970年代に起きた連続企業爆破事件に関与したとして指名手配されていた桐島聡容疑者(70)は死亡する約2週間前、居住していた藤沢市内の路上で倒れている所を近隣住民に発見され、救急搬送されていた。現場で介抱し、119番通報した女性は神奈川新聞社の取材に「男性(桐島容疑者)は骨が見えるほどにやせて80代に見えた。指名手配中の人とは気付けなかった」と振り返った。

 女性が男性を認識するようになったのは今年の始めだった。薄手の青いジャンパーを羽織り、小さな歩幅ですり足のように歩く姿を目にしていたが、言葉を交わすことはなかった。

 1月14日夕。夫と車で帰宅中、ジャンパー姿の男性が路上に正座するように倒れているのを見つけた。近くには吐いた跡があった。

 「大丈夫ですか。救急車を呼びましょうか」。駆け寄ると、男性は肩で息をし、小さな声で「大丈夫」と答え、救急車の要請には首を振った。近くのスーパーに買い物に行くこと、自身が胃がんであることを単語でつなぐように説明した。

 気温も下がってきていたため「買い物は私が行くから家に帰ろう」と女性が説得すると、男性は氷菓『ガリガリ君』のソーダ味とマスクメロン、箱ティッシュを欲しがった。ポケットから財布を出そうとするのを止め、スーパーへ向かった。二つ折りの財布は紙幣で分厚くなっていたという。

 夫は近隣住民に協力を求め、男性の両脇を抱えて指示されたアパートへ運んだ。玄関横の二槽式洗濯機に洗濯物ときれいな水が張ってあったこと以外、生活感を感じられなかったという。

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