話題は大谷翔平“一色”だった「もし加入していたら…」ブルージェイズの選手たちが翻弄された“オオタニ狂騒曲”を回想「あの日のことは忘れない」

「大谷翔平が乗ったプライベートジェット機が、南カリフォルニアからトロントに向かって飛んでいる」

現地2023年12月8日・金曜日、ひとつの情報が米国中を駆け巡った。「大谷がトロント・ブルージェイズと契約するのではないか」。米国やカナダ、日本のスポーツメディアやファン、そしてメジャーリーガーまでも固唾を呑んで見守った“オオタニ狂騒曲”が幕を開けた。

その週末、ブルージェイズのアレック・マノーア投手はプエルトリコのセントレジス・バイア・ビーチ・リゾートで結婚式を挙げていた。招待客は150人を超え、10人のチームメイトも出席。米メディア『The Athletic』は、春季キャンプを行なっているマノーアや結婚式に出席していたブルージェイズの選手や監督に取材し、当時を振り返ってもらった。

クローザーのジョーダン・ロマーノは結婚式前日の8日午前、ホテルのプールサイドで携帯をいじっていた。「ニュースを見て、まさかと思ったよ。すぐにみんなに話したんだ。彼(大谷)がトロントに向かっているぞ。ブルージェイズと契約するはずだ、ってね。みんなのテンションが一気に上がったよ」。選手たちはその後、ゴルフを楽しんだ。そこでも大谷が話題の中心で、誰もがゴルフに集中できなかったという。

投手のケビン・ゴーズマンは、「ゴルフの最中、誰かが『大谷はどうなった?』って言ったのを覚えている。みんな「本当に大谷が来るのか?」という感じだったね」と話し、ロマーノは「ゴルフをしながら、2~3ホールごとにXを見たり、グーグルで“Ohtani Blue Jays”と検索していた」と、速報ニュースを率先して探していたと明かした。

出席していたジョン・シュナイダー監督も大谷の話を耳にし、「それは素晴らしい」と思った一方で、こうも考えていたという。「もし噂が本当なら、ロス・ワトキンスGMやマーク・シャパイロ球団社長から連絡があるはずだ」。しかしそうした連絡はなく、「同じように噂を知った友人たちから、似たような話ばかりを聞かされた」と語った。

さらにシュナイダー監督は、「大谷が数日前に、フロリダのチーム施設を訪問していたのは知っていた。ただ、交渉がどうなっていたのかは知らなかった。だから深く考えないようにしたよ」とも振り返っている。
翌9日、結婚式の当日だった。結局、大谷はプライベートジェット機に乗ってはおらず、最終的にロサンゼルス・ドジャースと契約した。

新郎のマノーアはこう語った。「はっきり覚えているよ。バージンロードを歩く直前に、父がこう言ってきた。“ブルージェイズは大谷を獲れなかった。彼はドジャースと契約したよ”って。『くそ、最悪だ』が最初の感想だった。バージンロードを歩いてみんなに挨拶していたら、チームメイトたちが一緒に座っているのが見えてね。こう声を掛けたんだ。大谷を獲得できなかったな」。この時マノーアは、感情の起伏を共有していた仲間たちと一緒に大笑いしたという。自身の晴れ舞台に加えて、降って湧いた“オオタニ狂騒曲”。マノーアは「あの日のことは忘れない」と思い返した。

ゴーズマンも「間違いなく、忘れられない48時間だった」と回想し、ロマーノは「(プライベートジェット機の)フライト情報のスクリーンショットを見たのを覚えている。あの情報を逐一追いかけていたのは間違いない」と振り返った。

また、ブルージェイズの菊池雄星が「大谷をもてなすディナーのために、レストランを貸し切った」という怪情報についても、選手たちが語っている。ボー・ビシェットは菊池とのやりとりをしていた。「彼はメールで、『何が起こっているのか分からない』と教えてくれた。だから噂は本当じゃないんだなと、なんとなく気が付いた。もし本当なら知っていたはずだからね」と明かした。

さらにビシェットは当時の心境を語った。「ある時点で、本当に大谷を獲得するんだと思ったことを覚えている。日本中がブルージェイズに注目するんだろうなと考えたら、しばらく興奮が収まらなかった。でも、そうならなかったね」。このようにブルージェイズの面々は、感情が大揺れした当時の状況を振り返った。

同紙は最後に、「もし、大谷がこの場にいたら、どのロッカーを使っていた?」と選手たちに質問。マノーアは部屋の向こう側を指さして、「おそらく、他の“金持ち選手”と一緒に、打者側のロッカーにいただろう」と語り、ジョージ・スプリンガーは「本人が望むところならどこでも」と返答。ゴーズマンは「グレンデール(ドジャースのキャンプ地)に行って、本人に聞いてきてくれ」と、“たられば”の話に付き合った。

構成●THE DIGEST編集部

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