「今、干されるのは困る。“救民内閣”実現まではテレビでの本音は2割、いつかすべてさらけ出す!」【泉房穂の「ケンカは勝つ!」第35回】

『キャッチプラス』(サンテレビ)出演時。「本当のことを言うのが正しいわけではない。世の中、単純じゃないとは思っている」(泉氏)

辛口、本音……。私の発言について世間はそう言うけど、本当は言いたいことの半分も言えてない。

かつては「暴言市長」と叩かれたが、このときでさえ本音の1割も言えていなかった。批判にじっと耐えていたことがほとんど。明石市長とは、市民に対して責任を負う立場。いちいち反論していたら市政が混乱するし、市民生活にも影響が及ぶ。保身や名誉よりも、市民を優先した。

その後、SNSデビューして、だいぶものを言えるようになった。市長を終えてからは、積極的にメディアに出ている。それでも結局、歯に衣着せまくっている。その程度はメディアによりけりだが、総じて思いの半分以下しか言葉にできていない。テレビだと2割、ラジオは3割、雑誌やネット記事は4割、YouTubeや動画配信サービスなら5割。新聞はストレートニュースで1割、インタビューで4割という感じ。

テレビによく出るようになったのは、2023年10月の埼玉・所沢市長選の応援の後。それまではABEMAや、ローカル局に出ていたが、最近は地上波の全国放送も増えてきた。今こそ、「救民内閣構想」をアピールするチャンスや。

市長時代に比べたら、テレビでも本音に近いことを少しは言えるようになった。それでも、せいぜい2割くらいしか話せていない。番組にはスポンサーがついているし、放送権を与える政府の管理下にある。だから、テレビは中立ではなく、時の権力との関係ではいわば忖度機関であって、なんでも自由に発言できるわけではない。

それを実感したのが、ある情報番組での出来事。「泉さん、まさか選挙に出ませんよね」。毎回、出演のたびにスタッフからこう聞かれる。「選挙の応援にも行きませんよね」とも。選挙の応援をしただけでも出られんらしい。

そこで、「自民党の現職を応援するのはええんか?」と聞き返すと、スタッフは黙り込んでしまった。もしかすると、泉が応援した候補が、自民党の候補を倒すのが嫌なんかな。これは、スタッフではなく局の中枢の指示かもしれへん。現場スタッフには、私のファンもそれなりにいて、しばしば歓迎してくれる。でも、上層部は私みたいな権力批判をする人の扱いにかなり困っているらしい。

おそらく、「泉は何かしでかすんちゃうか」と思われているんやろうね。実際、そういう声も聞こえる。私も、そのへんは理解しているつもりや。生放送で「マスコミ批判」もしたことがあるけど、自分なりに配慮してギリギリセーフの球を投げたつもり。とはいえ毎回、「これで最後の出演かな」とも思っている。

先日、ある名物ジャーナリストとバトルになった。私は、自民党の裏金問題で第三者委員会を作るべきと主張した。すると、先方は曖昧な返事やったから、私はそれに突っ込んだ。相当、歯に衣着せたつもりやったけど、気分を害したらしい。これだけ私が忖度しても「本音トーク」と言われるんやから、テレビのコメンテーターは忖度文化に染まりきっているんやね。

そのジャーナリストとは、これまで何度も同席したが、最近になって別々に出演している。なぜ突然、共演がなくなったのかについては、よくわからない。

私のテレビ出演に対しては、「あいつは権力の味方をしている」という批判もある。辛口トークが売りなのに、制約の多い地上波放送に出られるわけない、何か裏があるはず、という陰謀論よ。

先述したように、今は救民内閣構想を世間に広める時期。だから、テレビだけでなく、また右・左問わず幅広くメディアに出ている。保守系の雑誌や、右寄りといわれる評論家のラジオ番組からのお呼びにも応じている。

ネット系のコアなファンも大事やけど、お茶の間にもメッセージを伝える必要がある。その意味で、地上波の全国放送は影響力が非常に大きい。視聴率の高いテレビの人気番組に出るたびに、新しい層から目に見える反響がある。しかも、政治的発言だけやなく、泉房穂なる人間をトータルに知っていただけることは、ある意味ありがたいことだと思っている。

ところで、日本は「報道の自由度ランキング」で180カ国中、68位(2023年)。主要7カ国では最下位で、独裁国家といわれるような国よりも低かったりする。みんな気づいていないかもしれないが、それが日本の現実。

先日、田原総一朗さんとお会いした。田原さんは、誰もが使えるSNSではなく、放送許認可権のもとにあるテレビで戦うことに意味があるとおっしゃっていた。自由がない前提で、自由を確保するのがジャーナリズムやと。

かつて私が関わっていた『朝生』は、タブーを破る形で「原発の是非を問う」とか「天皇制」などのテーマを取り上げた。そんな『朝生』全盛のころと比べると、テレビ業界は萎縮している。討論してもどこか遠慮がちで、問題の核心までには至らない。

今、私は多くのメディアから声がかかるようになったが、偏りがあるのも事実。テレビだと、東京のテレビ朝日とTOKYO MX、関西の読売テレビと関西テレビからの出演依頼が多いが、NHKなんてなんの音沙汰もない。

新聞社も、私の救民内閣構想に好意的なのは「東京新聞」と「毎日新聞」。

「朝日新聞」は取り上げてはくれるが、私への批判と必ずセットにする。取材には来るが掲載しない新聞社もあれば、取材にすら来ない新聞社もある。

そう批判する私も、じつは何かと気を遣って発言している。歯切れが悪いように思うかもしれん。でも、政権交代を実現するまでは、メディアで発信を続けたいから、今、干されるのは困る。出演を続けながら、言いたいことを言っていくって、けっこう難しいことやね。でも、いつかすべてさらけ出すつもりよ。

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