「両ドライバーの未来を決定する対決だ!」成長著しい角田裕毅か、経験豊富なリカルドか!? 前評判の高いRBの「チーム内バトル」を専門メディアが予想

バーレーンでのプレシーズンテストで、ビザ・キャッシュアップ・RB(以下RB)は角田裕毅が計157周、ダニエル・リカルドが210周をそれぞれ走行し、前者の1分30秒775というベストタイムは3日間におけるランキングで7位につけた。

角田が自身のSNSで「とても充実した3日間でした! 車への理解を深め、シーズンに向けていい準備ができました」と投稿したように、ドライバー、スタッフともに好感触を掴んだことを明かしているが、これに対して各国メディアもこのイタリア籍チームをポジティブに評価している。

F1公式サイト『F1.com』もそのひとつで、今回の直前テストの「勝者と敗者」をそれぞれ4チームずつ挙げた記事の中で、RBをレッドブル、フェラーリ、メルセデスとともに「勝者」に選定した(「敗者」はアルピーヌ、ハース、ウィリアムズ、アストンマーティン)。

同メディアは、ラップタイムではなく、走行距離を重要視し、「RBの367周はレッドブルから23周しか離れておらず、さらに両ドライバーともにほとんどトラブルなく走行を終えることができた」と振り返って、今季の同チームに対する展望を以下のように示している。

「ローラン・メキーズ代表とピーター・バイエルCEOは、昨季終盤来の開発を継続するという方針を固めたことから、アップグレードに関して大きな進展が見られるのは新シーズンの中盤以降だと見ているが、昨季終盤の彼らの車は非常に強力であり、加えて昨季圧倒的な勝利を収めたレッドブル(RB19)のパーツを採用していることから、RBが序盤から中団の先頭を走る可能性は高い」

また、スポーツ専門チャネル『ESPN』は直前テストを終えての、各チームを独自の視点でランク付けし、RBはレッドブル、フェラーリ、メルセデス、アストンマーティン、マクラーレンに次ぐ6番手(以降はアルピーヌ、ウィリアムズ、ザウバー、ハースの順)。こちらも、昨季終盤のアップグレードによって得た収穫や教訓を今季に活かすことで、「テストでは上位とのギャップを埋めた」と評し、新シーズンの展望も明るいものとなった。

「角田はテスト最終日にC4タイヤを使用し、全体5番手の速さを記録したが、そのタイムは、王者マックス・フェルスタッペンがC3で出したベストタイムとほぼ同じだった(C3とC4のタイム差は約0.6秒と推定される)。チームは3日間で健全な数の周回を完走した。角田とチームメイトのリカルドは、チャンスが訪れた時にはトップ10に食い込める可能性を感じているだろう」 過去2シーズン(昨季終盤を除く)の低迷期を終えて、いよいよ新たな飛躍の時を迎えることが期待される新生チームだが、同時に注目されるのが2人のドライバーによるチーム内対決だ。とりわけ、勝者にはセルジオ・ペレスの成績次第ではレッドブルのシートが待っている可能性もあり、F1ドライバーとしてのキャリアにおいても重要な対決である。
スポーツ専門メディア『sportskeeda』も同じことを指摘しており、「両ドライバーの未来を決定するであろう対決だ! ユウキとダニエルは2023年、互いに優位を築くことができなかった。来る新シーズン、全てが上手くいけば、彼らはレッドブルへの切符を与えられるかもしれない。我々(同メディア)は、リカルドが角田の先を行くと予想する。たとえ、日本人ドライバーが時折、良い結果を残す可能性があるとしても」と、オーストラリア人の勝利を予想した。

8回の優勝を飾るベテランが手強い相手であることは間違いないが、角田の成長ぶりについてRBのテクニカルディレクターであるジョディ・エッギントンは「ユウキは成長し、進化しており、ドライバーとしてさらなるスキルを身につけた。そして彼はまだ、ピークに達していないと思う。持ち前のスピードに疑いの余地はなかったが、現在ではより安定したドライバーとなっている。優れたデータバンクと優れたリファレンスを手に入れ、これまでの経験を活かせるようになった」と、賛辞を贈っている。

「よりも多くの経験を積み、チームのことをよく知り、なおかつ自分の考えや自分が何を望んでいるのかを承知している」(エッギントンTD)という角田に対しては、バイエルCEOがマーケティングの見地からも、この日本人ドライバーがアジアから、そして非常に若い年齢層のファンを惹きつけていることを明かし、コクピットの外での貢献度の高さも強調した(もちろん、リカルドについても国際的な人気の高さを認めているが)。

チームとして協力し合いながらも、熾烈な争いを展開することになるであろう両ドライバー。それがRBにいかなる恩恵をもたらすのか否か。興味深い新シーズンはいよいよ今週末に幕を開ける。

構成●THE DIGEST編集部

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