大分トリニータ初陣検証 何より評価すべきは「勝ち点1」 【大分県】

1万6000人もの観衆が詰めかけた大分トリニータの開幕戦は、1-1の引き分けに終わった。試合開始1時間前にGK西川幸之介の体調不良で、浜田太郎が急きょピッチに立った布陣での勝ち点は、ネガティブな結果ではない。片野坂知宏監督は「90分間を通して、考えたプランを実行できた。最後までギアを落とさず、総力戦で力を出し切った」とむしろポジティブだ。

前半は開幕特有の緊張感の中で相手の攻撃に耐えた。ボールの失い方が悪かったため、プレーを明確にするために長いボールを蹴り、セカンドボールを拾うことに力点を置いた。相手の両翼から攻め込まれる場面があり、パスミスから失点することもあったが、「0-1は想定内」と、後半11分に交代カード3枚を同時に切り、攻撃のギアを上げた。

高さのある長沢駿がクロスのターゲットになり、運動量豊富な中川寛斗が中盤の潤滑油として攻守の切り替えをスムーズにし、野嶽惇也がサイドの推進力をもたらした。これにより中盤の底にいた弓場将輝、保田堅心の若い2人が躍動し、セカンドボールの回収率が高まり、相手を押し込む時間帯が長くなった。

同点ゴールの起点となった保田堅心

後半38分には、保田のスルーパスに抜け出した、途中出場の薩川淳貴のクロスを、長沢が左足で合わせて同点とした。薩川が「先発メンバーから外れ悔しい思いがあったが、イメージ通りのプレーができた」と言えば、昨季の契約満了から再契約となった長沢も「シーズン前のことは考えないようにしていた。ピッチに立った時の立ち振る舞いを考えていた」と悔しさを内に秘め、ベテランらしい落ち着いたプレーで結果に結びつけた。

けが人が多く、初陣から総力戦を強いられているが、先発組がしっかり試合をつくり、交代出場の選手が試合の流れを変える。チームの底上げは確実にできている。長沢は言う。「若い選手を含め、みんながチームにプラスのものを生み出せるようになってきた。そういう部分を今年は期待してもいいと思っている」。次節以降のポイントは、守備の安定感を維持し、どこまで攻撃の機能性を高められるか。攻守のバランスをてんびんにかけながら、最善の着地点を見つけたい。

今季のチーム初得点を決めた長沢駿

(柚野真也)

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