「発生した状況が参考になる」南海トラフ地震と多くの類似点 能登半島地震の津波“3つの特徴”【わたしの防災】

能登半島地震では揺れとともに津波が発生し沿岸部を襲いました。今回の津波は、南海トラフ地震や活断層の地震で静岡を襲う津波と似ている点が多いと専門家が指摘しています。

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<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「今回の能登半島地震の津波では、多くの発生した状況が静岡のみなさんの参考になると思っています」

こう語るのは、津波のメカニズムなどを専門とする東北大学の今村文彦教授です。
今村教授は能登半島地震の津波には「3つの特徴」があり、将来、静岡を襲う「南海トラフ地震」や「活断層の地震」との類似点が多いといいます。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「とにかく(到達が)早かった。珠洲市の半島の先端では1分程度で来たと思います。被害が大きかった珠洲市宝立町では第一波が10分ぐらい、非常に短い時間で津波が来襲し、かつ陸上に遡上した」

1つ目の特徴は「第一波の到達が早かった」こと。陸の活断層だけでなく東側の海の活断層が動いたことから、沿岸部のすぐそばで津波が発生。到達までの猶予がなかったのです。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「これは日本での活断層を示しています。陸域だけでなく海域にあることが分かると思います。こちらが静岡の駿河湾になります。非常に活断層が沿岸部近くにある。強い揺れのあと、即時に津波が来るということで、東海地震のプレート間地震、また活断層の地震もあるので、津波発生の条件が(能登半島地震と)類似しています」

2つ目の特徴は、津波の「継続時間が長かった」ことです。赤が押し寄せてくる津波、青が引いていく津波。押し波と引き波を繰り返しながら、何度も押し寄せてきたことが分かります。津波の警報や注意報がすべて解除されるまで18時間、海面変動は24時間続いたとみられます。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「(能登半島周辺の)富山や新潟にも来襲しますが、逆方向がロシア側や朝鮮半島側に伝播してきました。2時間で対岸に到達し、それが反射して合計4時間で往復している。大体24時間続いていたので、6往復していたことになります。こういう閉鎖空間で起きたのが長時間続いた理由」

さらに、入っては、ぶつかってを繰り返すことで津波が大きくなり「最大波が遅れてやってきた」ことが3つ目の特徴です。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「湾の中でも振動が起きまして、例えば駿河湾ですと20分~30分、それと津波の周期が合うとブランコをこいで、どんどん大きくなるのと同じ増幅効果があります。きちんと津波が収束するまで避難をし続けることがさらに大切になります」

ここまでの3つの特徴とは別に、もう一つ。静岡でも起こる「気をつけたい現象」が能登半島の付け根、富山湾で発生していました。富山湾は、震源から少し離れているため、津波の到達まで20分から30分かかる計算です。しかし、地震だけでは説明できない水位の変化がすぐに現れていたといいます。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「ここ(富山湾で)記録された津波は、地震とともに水位が低下していきました。初動が非常に早かった。富山湾の奥では海底の傾斜がきつくて、今回、大きな揺れがきっかけで海域で地すべりが起きた」

海底地滑りが起きると土砂が崩れた分、波が引くことがあります。しかし、その周辺では海面が盛り上がり、すぐに津波となって押し寄せます。

2009年の「駿河湾の地震」でも海底地滑りが発生し、焼津や御前崎で津波を観測しています。

<東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授>
「海底地滑りの場所は複数にわたる場合が多くて、津波を推定しにくい。いきなり津波が来ている状況もあると思います」

津波避難で大事なことは、一刻も早く避難することです。さらに、静岡では能登半島地震と同じく1日程度、津波が継続するおそれがあります。屋外で長い時間、避難を余儀なくされることを考え、非常持ち出し品として、冬の寒さや、夏の暑さ対策も必要になってきます。

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