ローカル5Gソリューション市場に関する調査を実施(2024年)~2030年度の国内ローカル5Gソリューション市場規模は558億円に成長を予測、既存の通信規格から5GベースのIoTへ代替が進展、ローカル5Gソリューション市場は2025年度以降に本格普及へ~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の5Gソリューション市場を調査し、製造、建設、物流、医療、セキュリティ、社会インフラ、スタジアム/ライブソリューションなど分野別の5G活用およびIoT型ソリューションの普及動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、ローカル5Gソリューション市場予測、分野別の普及動向、プライベート5G市場動向等について公表する。

1.市場概況

一般企業や自治体、各種団体などが総務省に免許を申請し、企業や自治体、団体の建物や敷地内など特定範囲(狭域)限定で構築する5Gネットワークであるローカル5Gは、コロナ禍による行動制限が緩和された2022年度から導入検討/PoC(概念実証)が進展した。2023年度に入るとPoC件数の増加とともに、徐々に実装段階のプロジェクトも増えており、2023年11月末現在でローカル5Gの免許人は152者(公表を承諾している事業者のみ)となっている。そうしたことから、2023年度のローカル5Gソリューション市場規模は、事業者売上高ベースで前年度比217.2%の63億円を見込む。

ローカル5Gソリューション市場は黎明期~導入期にあり、本格的に普及するのは2025年度以降になると考える。ローカル5Gソリューションのターゲットとなるのは、リアルタイム対応/遠隔モニタリング、最適化、意思決定支援、自動化・自動制御、データを基にした予知・予測・予防、価値向上といったテーマになる。
また、ローカル5Gネットワークを企業や団体が単独で利用するのではなく、複数の企業や団体が共同利用するローカル5G基盤の共有型や、レンタルパッケージ(レンタル型、サブスク型)などのローカル5Gソリューションも登場している。さらにローカル5Gネットーワークの用途を特化することで、運用コストの低廉化を実現するソリューションも期待されている。

2.注目トピック~プライベート5G市場動向

近年、プライベート5Gが注目され、一般企業や自治体、団体のDX化/デジタル化のサポート技術として、キーワードになっている。

プライベート5G※は、MNO(Mobile Network Operator:移動体通信事業者)がセルラー5G(キャリア)回線を使って、企業や自治体、団体の建物や敷地内などに、必要な帯域で5Gネットワークを提供するマネージドサービスである。
プライベート5Gでは、ローカル5Gと違ってユーザ企業サイドが無線局免許を取得する必要はなく、MNOがユーザ企業の建物や敷地内に基地局設備を設置し、その保守運用も行う仕組みである。そのため、ユーザ企業サイドの投資・運用負担は比較的少なく、ローカル5Gへの投資に二の足を踏んでいる企業や自治体、団体が注目するサービスとなっている。

製造/工場向けの5GベースのIoTソリューションは比較的新しい技術であるため、当面は新たな課題や問題に直面する蓋然性が高い。プライベート5Gの建て付けであれば、高コストや運用に手間がかかるといったローカル5Gでの課題を解決する手段を持った事業者も登場してきており、併せてIoTソリューションにおけるユースケース(Use Case)の積み上げが進みつつある。
見方によっては、「プライベート5Gはローカル5Gよりも有望」といった見解も見られ、5G活用での方向性の一つとして、プライベート5Gは無視できない技術領域であると考える。

※プライベート5Gは、ネットワークスライシング技術でネットワークの論理分割を行い、高い安全性でユーザ企業の閉域サービスとセルラー5G(キャリア)回線を接続するマネージドサービス。

3.将来展望

2025年度以降、本格的な普及が進むローカル5Gソリューションでは、既存の通信規格を用いたIoTシステムの更新タイミングに合わせて、5GベースのIoTソリューションへの代替が進展する見込みである。この場合、当面はセルラー5GベースのIoTソリューション導入が主導するが、併せてローカル5G及びプライベート5Gも並走し、用途や目的に沿った使い分けが進む見通しである。
現状のローカル5Gのポジションは、先行するITベンダーによる自社グループ内の工場や事業所での実装/PoC(概念実証)や自動車メーカーに代表される先進的なユーザ企業による実装/PoC案件が増えている。しかし、多くの案件は2024年1月現在では圧倒的に実証/PoCに止まっている。このようにローカル5Gソリューションの現在地はまだ黎明期にあると言える。

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