「さすがに保証人までは」たじろく姪っ子にお門違いの怒り…勝手な思い込みが招いた〈おひとりさま〉の老人ホーム入所トラブル【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

おひとりさまが何かと頼りにしがちなのが、兄弟姉妹の子どもである姪や甥。しかし老人ホームの入所契約で保証人を頼むなど、負担の大きい依頼事はきちんと話をしておかないと思わぬ行き違いが起きる可能性があります。本記事では『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)から一部抜粋し、「親族なんだからやってもらって当たり前」という思い込みから発生したトラブルをご紹介します。

施設入居時に姪のサポートを得られると思い込んでいたが…

施設の見学に駆けつけてくれたIさん(82歳、男性)の姪。契約にも立ち会うと言ってくれたので、同席してくれるよう連絡を入れていました。

Iさんは、その流れで入所契約に必要な保証人にもなってくれるものとばかり、安易に考えていました。親族なら当然だろうという先入観を持っていたのです。

ところが、いざ契約の話になり、施設担当者が「保証人は今日来てくださっている姪御さんでよろしいでしょうか?」と尋ねた途端、姪の顔がこわばってしまいました。契約書に記載された月々の支払い額や病院への付き添いが必要になるなどの説明を聞き、姪は戸惑っていたのです。

追い打ちをかけるように、保証人になる人に印鑑証明書の提出を求められました。姪は、自分自身の家族のこともあるのに、そこまでするつもりはないというのが本音です。すっかり気持ちが後ろ向きになってしまっており、「保証人まではできない」とどう伝えたらいいかと、たじろいでいました。

Iさんは、煮えきらない姪の態度に憤慨してしまいました。ここまで来て、なぜ拒むのか……。消極的な姪の姿を見て、「もういい。あなたには頼まない」と思わず言い放ってしまったのです。

実は、姪とは日頃から親しい付き合いがあるという間柄ではありませんでした。比較的近くにいるということと、姪というただそれだけの理由で、施設の入所契約に立ち会ってもらったのです。

Iさんの発言により、姪に頼む道が完全に閉ざされてしまいました。ただでさえ細い糸が、いとも簡単に裁切れとなったのです。

せっかく施設を見つけ、いざ入所というところまで来て、話がストップしてしまう状況となりました。

保証人がいないということで、いったん入所は保留となりました。ただ、元いた家はもうすぐ賃貸借契約が終了し、出て行かないといけません。何としても、次の住居を確保する必要性に迫られています。

後日、入所に関して施設の担当者が上の人と話をしてくれ、保証金として40万円を別に支払うことで、何とか受け入れが可能となりました。

「親族なら当たり前」と、一方的にあてにしてはいけない

しかしながら、施設に入ればこれで終わりというわけではありません。今後も保証人や付き添いが求められる場面は出てくるはずです。

「もし自分の身に何かあった時、いったい誰が対応してくれるのか?」と、心配でたまらなくなりました。今回のことで姪があてにならないことがわかった今、Iさんは自分がおひとりさまであることを改めて実感したのです。

この事例のように、普段付き合いのない親戚をあてにするのは危険といえます。おひとりさまでも、甥や姪がいる人は多いでしょう。

しかし、人には人の思いや事情というものがあります。自分たちの家族のことで手いっぱい、遠方にいて頻繁に動くことはできないなど……。親族であれば当たり前とあてにしていては、思わぬ落とし穴に陥ることが十分あり得るのです。

もしお願いするとしても、どこまで頼めるのかよくよく確認をしておかなければなりません。ふとしたひと言で関係が悪化しないような配慮も求められます。

親族に頼めるのかを含め、まずは自分できちんと今後のシミュレーションを行いましょう。そして、事情に応じて対策を取ることが先決です。それが、自分の人生を守ることにつながります。

※本記事に登場しているのはすべて架空の人物です。

岡 信太郎

司法書士

※本記事は『「ひとり終活」は備えが9割』(青春出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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