学び直して「高校に」 栃木県、26年に初の公立夜間中学 民営校生徒の声は

息子(左端)と一緒に音楽の演奏を楽しむ村山さん(左から2人目)=2月中旬、宇都宮市中今泉3丁目

 義務教育を十分に受けられなかった人たちの学び直しの場となる「夜間中学」。栃木県教委は今月、栃木市の学悠館高内に2026年4月、県内初の公立校を開校すると発表した。現場ではどのような学びが求められているのか。今月中旬、民間が運営する県内2校の自主夜間中学に、さまざまな思いで通う人たちの声を聞いた。

 日曜日の午前、小山市の白鴎大。普段は学生でにぎわう食堂の一角に、「おやま自主夜間中学」で学ぶ“生徒”16人の姿があった。10~60代と年齢層は幅広い。ボランティアが付き添い個別に学習を進める。

 パキスタン出身のアリサイド・フセインさん(17)は来日時、学齢期を過ぎていたため学校に通っていない。公立中に入学した弟に比べ、日本語の習得に苦戦していたという。

 この日は数学の図形問題に挑戦していた。「今の目標は」と尋ねると、「目標の意味はゴールですか?高校に入学したい」とはにかみながら答えた。

 茨城県から電車で通う女性(67)は、真剣な表情で3桁の足し算を解く。家庭の事情で通信制高を1年の時に中退した。「本当はもっと勉強したかった」。小学校の内容から学び直し、「少しずつ進んでいる」と充実した笑顔を浮かべた。

 時代状況を映す「社会の鏡」とも言われる夜間中学。増加が続く不登校の経験者も出席し、真剣な表情で机に向かった。同校を運営するNPO法人の結城史隆(ゆうきふみたか)代表(73)=白鴎大名誉教授=は「対人関係に不安を抱く人もおり、きめ細かい対応が必要」と話す。

 同じ日の午後6時。宇都宮市東生涯学習センターでは、「とちぎ自主夜間中学宇都宮校」の年に1度の交流会が開かれた。バルーンアートや折り紙、音楽。学ぶ側と教える側が肩を並べ、リラックスした表情で楽しむ。自主夜間中学では誰もが「対等」な関係だ。

 フィリピン出身の村山(むらやま)エマリンさん(32)は、アフリカの太鼓に夢中になる2人の息子の姿に笑みを浮かべた。2年前に宇都宮工業高定時制課程へ進学したが、今も夜間中学に通い続ける。「高校の授業だけでは勉強が足りない。高校で教わらないことを学べるので助かる」

 川村滋(かわむらしげる)校長(72)は「公立の学校ができても、ここはなくならないので安心してください」と声をかけ、参加者の笑顔を見守った。

© 株式会社下野新聞社