青色申告初心者が会計処理を行う場合、しばしばつまずきがちとなるポイントがあります。今回は、自動車の購入、事務所や店舗の敷金や保証金の会計処理について見ていきましょう。※本記事は小林敬幸氏の著書『改訂2版 3日でマスター! 個人事業主・フリーランスのための会計ソフトでらくらく青色申告』(あさ出版)より抜粋・再編集したものです。
自動車を購入したが、請求書の項目が細かすぎて…
◆自動車の請求書は「5つのパート」に分けて読む
自動車を購入すると、図表1のような請求明細書をもらいますが、「項目が細かすぎてよくわからない!」という声をよく聞きます。
自動車の請求書は、大まかに、次の5つの要素に分けることができます。
①車両本体とオプションや付属品といった、車両の金額(消費税がかかる)
②取得時の環境性能割(旧自動車取得税)、自動車重量税、自動車税といった、租税公課(消費税はかからない)
③自賠責保険料などの保険料(消費税はかからない)
④法定登録費用など(消費税はかからない)
⑤業者の登録代行手数料など(消費税がかかる)
このうち固定資産として減価償却を行っていく必要があるのは、①の「車両本体」の金額のみ。残りの経費は全額購入した年の経費にできます。環境性能割や登録のための手数料は、車両本体額に合算せず別々に経費にしたほうが、購入年の経費が大きくなるということです。
反対に経費を少なくしたいときや面倒なときは、まとめて車両本体額に合算することも可能です。
◆自動車を購入したときの入力のコツ
1 購入した際の請求書の用意
図表1の太枠で囲った部分を、下の「◆計算方法」で計算します。
[図表1]購入した際の請求書の用意
2 預金出納帳、現金出納帳に入力
預金出納帳、現金出納帳などで支払時に図表2のように入力します。
[図表2]預金出納帳、現金出納帳に入力
※「車両運搬具」については、固定資産台帳にも登録しておきます。 なお車両本体以外の諸費用は、車両本体と合算して「車両運搬具」とすることもできます。
事務所や店舗を借りたときの「敷金」「保証金」の処理方法
◆解約時の返還金などにより「計上のしかた」が変わる
事務所や店舗を賃借した場合、毎月の賃料のほか、「敷金」「保証金」「礼金」「権利金」「仲介手数料」などを支払う必要があります。それぞれ処理のしかたが異なりますので、注意が必要です。
解約時に返還される保証金や敷金については契約書を確認しましょう。返還されない権利金・礼金などの金額がある場合にはそれを区分して、繰延資産として処理しなければなりません。各項目の計上のしかたは次のとおりです。
①毎月の家賃や日割家賃……「地代家賃」として経費処理する。
②敷金・保証金といった解約時に返還されるもの……「敷金」「保証金」として資産計上する。
③礼金・権利金など契約時に払うお金で解約時に返還されないもの……繰延資産として資産計上し、固定資産台帳に登録する。更新料の支払いがある場合には「契約期間」、支払いがない場合には「5年」で償却していく。
④不動産業者に払った仲介手数料……「支払手数料」として経費処理する。
具体的には、図表3~4の入力例をご参照ください。
◆事務所や店舗を借りたときの処理のしかた
1 契約書を用意して、内容を確認
図表3の例では、
①5月(1カ月)分の家賃20万円
②敷金100万円
③敷金のうち解約時に返還されない50万円
④不動産業者への仲介手数料20万円
などの入力が必要となります。
[図表3]契約書を用意して、内容を確認
2 預金出納帳、現金出納帳などに入力
支払時に、図表4のように入力します。「長期前払費用」については、固定資産台帳にも登録しておきます。
[図表4]預金出納帳、現金出納帳などに入力
小林 敬幸
税理士、ファイナンシャル・プランナー