NATO各国、地上部隊のウクライナ派遣を否定 マクロン仏大統領の発言受け

イギリスやアメリカ、ドイツを含む北大西洋条約機構(NATO)の一部加盟国は27日、ウクライナに西側の地上部隊を派遣する可能性を否定した。フランスのエマニュエル・マクロン大統領が前日、派遣について「何も排除すべきではない」と述べたことを受けてのもの。

マクロン大統領は、地上部隊の派遣について「合意はない」としている。

一方、クレムリン(ロシア大統領府)のドミトリ・ペスコフ報道官は、NATO部隊がウクライナに派遣された場合、直接的な紛争になると警告した。

ロシアはこのところ戦果を上げており、ウクライナ政府は各国に早急な兵器の供給を呼びかけている。

ロシアのウクライナ全面侵攻は、今月24日で丸2年を迎えた。第2次世界大戦後で最大の欧州での戦争に終わる気配はない。

パリでは26日、ウクライナ支援について話し合う緊急会議が開かれた。ドイツのオラフ・ショルツ首相やイギリスのデイヴィッド・キャメロン外相、アメリカやカナダの代表団などが出席した。

マクロン氏は記者会見で、「一定の要素の配備が正当化される、安全保障上の必要性が生じるかもしれない。それを排除すべきではない」と発言した。

一方で、「しかし、フランスがどういう姿勢を維持するか、私は皆さんに明確に話した。私が支持するのは、戦略的なあいまいさだ」と付け加えた。

各国が部隊派遣を否定

マクロン氏の発言に、欧州各国やNATO加盟国は即座に反応した。

米ホワイトハウスは声明で、ジョー・バイデン大統領は「勝利への道」は軍事支援を提供し、「ウクライナ軍が自衛に必要な武器と弾薬を持つこと」だと信じているとした。

そして、「バイデン大統領はアメリカがウクライナでの戦闘のために部隊を派遣することはないと明言している」と付け加えた。

ドイツのオラフ・ショルツ首相も、欧州やNATO加盟国はウクライナに部隊を送らないという合意された立場に変更はないと述べた。

イギリスのリシ・スーナク首相の報道官は、イギリスは現在ウクライナ軍を訓練している少人数の軍人以外に、ウクライナに大規模な軍事派遣をする計画はないと述べた。

イタリアのジョルジャ・メローニ首相の事務所も、イタリアの「支援には欧州やNATO加盟国の軍隊がウクライナ領土に滞在することは含まれていない」とした。

ロシアのペスコフ報道官は、マクロン氏の示唆は「非常に重要な新要素」だと述べ、NATO加盟国の利益には全くならないと付け加えた。

「こうした場合、我々は(直接対決の)可能性についてではなく、必然性について話す必要がある」

NATOのイエンス・ストルテンベルグ事務総長も先に、ウクライナに部隊を送る可能性を否定。一方で、NATOに加盟していないウクライナを引き続き支援すると強調した。

こうした姿勢は、スペインやポーランド、チェコといった多くのNATO加盟国も同調している。

米大統領執務室で「最も激しい」会議

バイデン大統領は27日、大統領執務室での会議で連邦議会幹部らに対し、ウクライナへの軍事支援600億ドルを含む総額950億ドル(約14兆3000億円)余りの外国支援包括予算案を承認するよう求めた。

予算案は13日に連邦上院で可決され、現在は下院で審議されている。下院のマイク・ジョンソン議長(共和党)は会議で、まずアメリカの南部国境対策を強化すべきだと強く訴えた。

ジョンソン氏はメキシコとアメリカの国境の危機を最優先事項としている。バイデン氏はすでに改革案を支援パッケージに含めるとしているが、共和党はこれを拒否している。

民主党のチャック・シューマー上院院内総務は、これまでで「最も激しい」大統領執務室での会談だったと語った。

アメリカはウクライナへの軍事支援で、最大の貢献国となっている。ドイツのキール世界経済研究所によると、今年1月15日までに422億ユーロ(約6兆8800億円)を拠出している。

続いてドイツが177億ユーロ、イギリスが91億ユーロを支援している。

26日のパリでの会議にビデオリンクで参加したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「ロシアの侵略から身を守るために我々が共同で行うことはすべて、今後数十年にわたり、我々に真の安全保障をもたらすものだ」と述べた。

(英語記事 Nato allies reject Emmanuel Macron idea of troops to Ukraine

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