安西水丸、没後10年 『手のひらのトークン』続編となる幻の未発表小説『1フランの月』初の書籍化

雑誌の表紙や挿絵をはじめ、書籍の装画の他にも、小説、エッセイ、絵本、漫画など数々の功績で知られるイラストレーター/作家・安西水丸。2024年3月で没後10年を迎えるなか、幻の未発表小説『1フランの月』が年2月28日に小学館より刊行される。

本作は1990年に刊行された『手のひらのトークン』(新潮社)の続編となる未完の小説。1970年代初頭のパリ、リスボン、マドリード、ローマを舞台に、安西自身と思われるイラストレーターの様々な出会いと別れが描かれる。

本作に加え「旅」をテーマにした未刊行エッセイ、イラスト、スケッチなどを加えた、懐かしくも新しい安西水丸の世界を凝縮した1冊となっている。

■担当編集者コメント
今回、安西水丸さんと交流のあった様々な皆さんとの出会いにより、安西水丸事務所より未発表原稿をお預かりすることになりました。

手書きの原稿用紙にブルーの万年筆で書かれていたのは、
まだメールやインターネットがなかった時代に海外を旅したことがある方ならきっと懐かしく感じるだろう、
またそんな時代を知らない方にはきっと新しく感じるだろう「旅の日常」でした。

小説自体は未完となりますが、それにもかかわらず不思議な余韻があるのは、
まるで10年前に突然、私たちの目の前からいなくなってしまった安西水丸さんが、
今でもその膨大な作品を通して「生き続けている」ことと似ているかもしれません。

書籍は、この小説に加え、エッセイやイラスト、スケッチを通して、
「安西水丸さんと旅」を存分に感じていただける一冊となっています。
この本のために、素晴らしい「あとがき」を書いてくださった作家・中上紀さんの文章とあわせてお楽しみください。

■著者紹介
安西 水丸
イラストレーター/作家。1942年東京生まれ。日本大学芸術学部美術学科造形コース卒業。電通、ニューヨークのデザインスタジオ(ADAC)、平凡社に勤めた後、独立。広告、雑誌の表紙や挿絵、書籍の装画の他にも、小説、エッセイ、絵本、漫画などの執筆でも活躍。朝日広告賞、毎日広告賞、日本グラフィック展年間作家優秀賞、など受賞多数。2014年3月19日逝去。

(文=リアルサウンド ブック編集部)

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