NHK松江制作ドラマ「島根マルチバース伝」主演・桜庭ななみ&地元出身・佐野史郎が島根のよさをアピール!

NHK総合(島根県域)で、3月1日放送の島根発地域ドラマ「島根マルチバース伝」(午後7:57=NHK松江放送局制作。NHK BSでは3月22日午後5:00/全国放送)の完成試写会と取材会が行われ、主演を務めた桜庭ななみ、共演の佐野史郎、脚本の竹田モモコ氏、演出の岡村祭冬氏が参加した。

2022年に開局90周年を迎えたNHK松江放送局は、これを記念して、島根県内の若者から「10年後の私への手紙」を募集。集まった508通の手紙を基に、さまざまな番組を発信する中で、「島根マルチバース伝」を制作した。地元で輝こうともがく主人公・門脇ひかり(桜庭)の悲喜こもごもを通して、島根で暮らす人々、地方で暮らす人々にエールを送る喜劇を届ける。

28歳のひかりは、高校演劇で神童と呼ばれ、かつて女優になることを夢見ていたが、今では地元のスーパーマーケット「ましまや」でアルバイトをしながら、「自分が輝けないのは島根にいるせいだ!」と家族や友人に愚痴を吐きながら過ごしていた。そんなある日、占い店のような怪しい男(佐野)の店に入ると、「あなたが輝くはずだった人生を見てみますか?」と不気味な提案を受ける。なんとそこで別のバース(異なる選択をした自分の人生)に生きる自分を目撃するが、そのどれもが理想とは程遠い姿ばかり。そんな時、妹から地元の市民劇に誘われる。

桜庭は「作品を見て、本当に島根の方々に協力していただいて完成した作品だと思いました。その作品を、いよいよ、皆さんにお届けできる日が来るのだとワクワクしております。この役を演じながら、私自身も何かのせいにしたい気持ちがあるなと感じたり、(今のさえない自分は)島根にいるせいだと理由をつけるひかりに感情移入できるというか。だからこそ、この役を演じながら、私もこれから頑張ろうと思えました。この環境だからこそできることもたくさんあると思いますし、この作品を通して、また新たな目標が自分の中でも見つかった気がしました。皆さんにもこの作品を見て、そう思っていただけたらうれしいです」と出演した感想を伝える。

一方、「このドラマを見て、不覚にも胸が熱くなるというか、涙がにじみそうになりました」と感慨深げに語り始めた島根県出身の佐野は、「俳優の道を歩み始めて今年でちょうど50年になりますが、若き日の自分と重ねていたこともありますし、映像の世界に入ってから、いつか、この島根を舞台にテレビドラマができたらとずっと思っていて、その夢が一つがかなった思いでもあります。私の出演したシーンは松江大橋の北詰のバーが中心でしたが、大根島、雲南市、奥出雲の風景なども作中にはたくさんありました。そして、主演の桜庭さんの魅力がさく裂したドラマだと思います。さらに、脚本の竹田さんが書かれたセリフの積み重ねにリアリティーを感じました。私も舞台出身なので、ドラマの原点、映像の原点に戻ったような気持ちで演じていましたし、最後まで楽しく見ることができました。とても奇麗なドラマだと思います」と作品への思いを語った。

脚本の竹田氏は「私が初めてのドラマ脚本を担当させていただいたのが、この作品になります。私は戯曲家で、普段、舞台の台本を書いていますが、このように映像化されて、とても感動しました。自分の書いたもので感動するのはおかしいですが、自分と重ねてしまったところもあり、さらに俳優の方々が体当たりの演技をしてくださって、とても素晴らしい作品になったと思います」と確かな手応えをにじませた。

島根県内でオーデイションを実施し、地元の人々も出演している「島根マルチバース伝」。演出を務めた岡村氏は「島根の皆さんと、この作品を作らせてくださった方々にお礼を申し上げたいと思います。脚本の竹田さんに、どうやれば島根の人たちを応援できるかとか、地元で生きることを誇りに思ってもらえるかということを託し、素晴らしい台本を作っていただきました。そして、桜庭さん、佐野さんに素晴らしいお芝居でそれを形にしていただきました。その過程でたくさんの島根の皆さんにご協力いただきました。今日お越しいただいた一般から出演してくださった方々や、ロケ地を貸してくださった方、そしてたくさんの地元エキストラの方々。大変寒い、過酷なロケでしたが、島根の皆さんが力を貸してくださったおかげで、作品を完成させることができました。われわれとしては大変面白い作品ができたと思っております」と周囲の協力あってこそ、作品が完成したことへの感謝を述べた。

地方に住む若い世代に向けてエールを送る作品となるが、竹田氏は「島根県の若者にエールを、ということでしたが、大人が若者にうそをついてはいけないと思いました。地方に住む若い人がどういうモチベーションで生きていくか、難しいことだと思います。それを奇麗にラッピングして、田舎の自然や人の温かさを書くのもうそっぽいと思いました。できるだけ、『大人もあなたたちのことを分かっているよ』ということを言いたくて、そういう書き方を意識しました」と思いを伝えつつ、「作品を見て感じることは人それぞれですが、その土地で、“自分の全部を使ってトライすること”を、若い方にしていただければうれしいです」と若者へメッセージを寄せた。

佐野も「作品はご覧になる方、一人一人違うと思いますが、夢を持つ時間っていうのかな。それが大きなものであれ、ささいなものであれ、どんな思いでもいいので、そういう思いを抱いているその瞬間こそが幸せなんだということ。それがドラマを見ている時間と重なれば、この仕事をしていて、そのかいもありますし、皆さんと共感したいところでもあります」と自身の思いを口にした。

撮影では、島根の方言に苦労したという桜庭。「アドリブで監督に『だんだん』(ありがとうの意味)を入れてほしいと言われたんですが、全然口がなじめなく…。シーンの中には入ってるんですが、めちゃくちゃ小さい声で言いました」と自信なさげな様子だったが、岡本氏は「その声の小ささがリアルな感じでちょうどよかった」と言い、今はもうあまり使われていない方言ではあるものの「地元の人が喜んでくれるのではという思いでリクエストした」と説明。それを聞いた桜庭は「『だんだん』を見つけてほしいですね」とほほ笑むと、桜庭の方言について、佐野が「間の取り方が絶妙だった。ネイティブでしたよ」と太鼓判を押した。

さらに、島根ロケで印象に残ったことを尋ねられると、「大根島で食べたシジミ汁がめちゃくちゃおいしかった」と声を弾ませた桜庭。「ドラマの中で自分がシジミになるシーンがあるので、そこも注目していただきたいです」とアピール。細かい指示の下で演じたそうで、「自分がシジミになっているように感じました。地味な泡の感じとか最高でした!」と、シジミ役も楽しんだことを報告した。

島根のお勧めスポットについて、佐野は「(ドラマの中にも登場する)宍道湖に沈む夕日以外、思い浮かばないですね。子どもの頃から一番美しいと思っているので。そのほかにもいろいろ魅力的なロケーションが映っていたので、聖地巡礼していただきたいですね」と、島根のよさが全国に伝わることを願った。

そして、最後に桜庭が「この作品は『なんだこれ?』というシーンもあって…。(佐野「その通りです」)本当に笑って楽しく見られる作品ではありますが、その中でも、『今日から頑張ろう』というメッセージが伝わる作品になっていると思います。この作品を見て、島根のよさが伝わればうれしいですし、ご覧になった方々へのエールになればと思います」、佐野が「神話のふるさとでもありますし、ファンタジーとして楽しんでいただければと思います」とそれぞれ作品をアピールし、取材会を締めくくった。

会見では、島根出身のお笑い芸人4人の出演も発表。ネルソンズの和田まんじゅうが荒廃したバースの男役、青山フォール勝ちが酔っ払い役、メンバー(山口提樹、潮圭太)が、劇団員の男と記者役の1人2役を務めている。

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