特集はラーメンです。長野をラーメンの街として売り出そうと、市がPRに本腰を入れています。市民がラーメン好きであること、ご当地ラーメンはないものの、さまざまなラーメンを味わえることをアピールしています。
■多様性あふれるラーメン
深みのある味わいのしょうゆラーメンに、濃厚で熱々のみそラーメン。こちらは豚骨醤油のいわゆる家系ラーメン。いずれも長野市内の店が提供する人気のラーメンです。
今、長野市がこうした市内のラーメンに熱視線を送っています。
長野市観光振興課・清水美有さん:
「多様性あふれる長野市のラーメンですとか、ラーメン文化というものを広くPR、魅力を発信」
こちらは、市が1月、開設したウェブサイト、その名も「ながのラーメン物語」。
市内のラーメン店と一押しメニューを紹介するもので、「長野駅周辺エリア」や「中部エリア」といったエリア別、「醤油系」や「塩系」といった味別でラーメン店を知ることができます。
■“粉もの文化” 市民はラーメン好き
それにしても、なぜ今、ラーメンなのでしょうか。
長野市観光振興課・清水美有さん:
「もともと長野市というのは、そばとかおやきといった粉もの文化というのが非常に根付いている場所。小麦粉は全国で消費量第1位、それに加えて中華そばの消費量も9位ということで、非常にラーメンについても市民の方に親しまれているものだと考えております」
総務省の家計調査によると、(2020~2022年平均)長野市の小麦粉の購入量・購入額は全国1位。
確かに「おやき」に「にらせんべい」、「山菜の天ぷら」と小麦粉をよく使います。
そうした「粉もの」好きの影響もあってか、外食での中華そば消費額は全国9位。市民はラーメン好きと言えそうです。
市民:
「私ね、しょうゆラーメンが好きです」
「よく主人と一緒に行ったりとか、家でも袋ラーメン作ったりとか夕飯にラーメン食べたりするので」
「(何ラーメンが好きですか?)二郎(系ラーメン)とかですね。食べに行くのは(月に)3、4回とか」
2023年10月、長野市と近隣市町村の住民を対象に行ったWEBアンケートでは、月に1回食べる人は68%に上りました。
一方、長野市には、札幌の味噌ラーメンや博多の豚骨ラーメン、さらには隣県の「富山ブラック」や「高山ラーメン」のような「ご当地ラーメン」と呼べるものはありません。
■ご当地ラーメンはないけれど…
2010年、青年会議所が中心となって、みそ味の「長野ヤキメン」をご当地グルメとして定着させようと取り組みました。
しかし専用の麺がややコスト高で取り扱う店舗が減少。徐々に注目度も薄れていきました。
そこでー。
長野市観光振興課・清水美有さん:
「新しいものを生み出すといったところとは少し視点を変えまして、もともと市内にあるラーメン店さん、店主さんが切磋琢磨しながら、こだわりの一杯を作っている。そういった魅力を行政としてサポートして一緒にラーメン文化を盛り上げていきたい」
荻原市長もー
荻原健司市長:
「長野市にはご当地ラーメンというものがない中で、私としてはいろんな個性あふれるラーメン店がたくさんあるなということは、一市民として長野市に長く暮らしてきた中で感じていた」
ご当地ラーメンがないことを逆手にとって多種多様なラーメンが味わえる街としてPR。これが市の狙いです。
■ラーメン店も取り組みを歓迎
現在、ウェブサイトで紹介しているのは31店舗。
「長野土鍋ラーメンたけさん」もその一つです。
一押しは土鍋で熱々にした信州みそと豚骨を合わせたスープに、黒ゴマが練り込まれた太麺を入れた「土鍋味噌豚骨」。
多い日は100杯以上出る人気メニューです。
客:
「おいしいです。変にしつこくなくて」
「非常においしくいただいています。(額に汗が出て…)かなり熱いですね。寒い時期にはいいかなと思いますけど」
店は今回の取り組みを歓迎しています。
長野土鍋ラーメンたけさん・竹田哲章代表:
「どうしても個人の力というか広がるスピードというか、ちょっともどかしい部分があった。私たちにとっても、とても助け舟になるイベントだなと感じております」
■インバウンド客向けの観光資源に
今回のPRにはもう一つ、テーマがあります。
長野市観光振興課・清水美有さん:
「インバウンドの方にも、非常にラーメンが人気のコンテンツだということで承知していますので」
パティオ大門にある「麺道 麒麟児 大門店」。善光寺の門前ということで外国人客の取り込みも想定して2023年4月にオープンしました。
人気メニューは―。
鶏ガラと鴨ガラでうま味を増したしょうゆベースのスープに、ストレートの麺を合わせた「中華そば」。
2種類のチャーシューも乗っています。
客:
「おいしい、おいしいです。しょうゆ味で、すごく深みがあって、でもあっさりしていて」
「鶏のうま味がすごく詰まっているような味で一口一口が本当においしいです」
麺道 麒麟児 大門店・香川葵店舗マネージャー:
「こちらの大門店では、善光寺下というのもありますし、観光地なので外国人観光客の方が多い。市全体としても、お店としても盛り上がって、(お客さんに)たくさん来てほしいです」
豚骨醤油の家系ラーメンを提供する「よし家」も掲載店の一つ。
店主の清水さんは「地元客含め観光客にも長野のソウルフードとして選ばれれば」と話しています。
店は駅に近いこともあって外国人客が足を運んでいます。
シンガポールから:
「やさしい味でおいしい」
市としてはラーメンをインバウンド客向けの観光資源にという思惑があります。
■「長野らしさ」が表れている
長野の多種多様なラーメン。
食文化に詳しい長野県立大学の中沢教授は地理的な要因を背景にした「長野らしさ」が表れていると指摘します。
長野県立大学・中沢弥子教授:
「(周りの県の)文化を吸収して融合して、それぞれのお店のこだわりを生かしたものを提供していただいている。
」
そばやおやきのように「長野と言えばラーメン」とイメージできる日は来るのでしょうか。
取り組みは始まったばかりです。
長野市観光振興課・清水美有さん:
「多様な種類のラーメンですとか、非常にこだわり抜いて作られたラーメンというのが、魅力的なものがたくさんありますので、ぜひこの長野ラーメンというものを食べに長野市にもお越しいただきたいなと」