「いまは心が焼け野原」日本に取り戻してほしい「価値無限思考」とは?

2月28日「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送)、大竹メインディッシュのコーナーに慶應義塾大学商学部准教授で経営学者の岩尾俊兵さんが出演。発売中の著書『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』と『世界は経営でできている』に関連して、いまと昔の日本経済について語った。

大竹まこと「日本はいま、こういう状態になっているけど、戦後立ち上がってきて。焼け野原から、あっという間に世界のトップレベルまで(成長した)。ジャパン・アズ・ナンバーワンまでこぎつけたわけだ」

岩尾俊兵「本当にそうです。1945年の敗戦後、焼け野原になっている状態から、資源も土地もない、しかも敗戦で外交的にもいろんな制限がつけられた。それがたった20年ちょっとで、1968~1969年にはアメリカの次の経済大国になったという、とんでもない価値創造大国だったんですね」

大竹「朝鮮の動乱とかいろんなことがあって、それが景気を生んだ、という外因もあるけどね。それでも短い時間で立ち直ってきた」

岩尾「しかも脳みそという資源を使ったのがすごく大きいと思います。それをいま忘れている、と。みんな貧乏、貧乏と言うけど、いまは物質的にすごく豊かですよね。私もさっき食べましたけど、誰もが牛丼ぐらいは食べられるようになって。摩天楼はこの辺もいっぱい建っているわけですけど、逆に心の中が焼け野原、みたいになっている」

大竹「うん」

岩尾「アメリカが全部悪いというわけではないですけど、プラザ合意の、金がとにかく大事で、価値は有限で、無限につくれるのは幻想だ、と思い込んだことによって、いま心が焼け野原になっている。そういう状態だと思います」

大竹「なんでそうなっちゃったの?」

岩尾「一言でいうと、価値有限思考というものが蔓延したからだと思います。世の中にとって、誰かにとって、価値があるものですね。わかりやすいものでいうとお金とか。あとサービス、尊敬もそうですね。SNSの時代で、みんな尊敬という価値をほしがる。有限だから奪うしかないと思い込んで、奪い合いをするからギスギスしている」

大竹「うん」

岩尾「たとえば高齢者の方が豊かな生活をしている。価値は有限だと思っていると、若者の手に入る価値が減っているんだ、高齢者をどうにかしろ、という人がいる。それが文化人だと持てはやされて……。価値が有限だと思うからそうなるんです」

大竹「価値は無限だと」

岩尾「そういうことです。私の(著書)『世界は経営でできている』『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』、どちらも価値有限思考から価値無限思考に戻そう、と。価値無限思考のほうがいいというわけではなく、もともとそれが本質だったんだ、と。日本の経済成長を支えたのも価値無限思考だったし、という。過去にもあったんだから過去の良さを取り戻して、もう1回、価値はつくれるんだ、という発想に戻そうと。そういうことです」

© 株式会社文化放送