ライブ映画『チェッカーズ 1987 GO TOUR at中野サンプラザ』 演奏曲から魅力を探る

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3月1日から2週間限定で、ライブ映画『チェッカーズ 1987 GO TOUR at 中野サンプラザ【デジタルレストア版】』が上映されます。チェッカーズ全盛期の貴重な映像と、その魅力について、シンガーソングライター・音楽評論家の中将タカノリと、シンガーソングライター・TikTokerの橋本菜津美が、主な演奏曲についての話を交えながら、ラジオ番組で語り合いました。

【動画】ライブ映画『チェッカーズ 1987 GO TOUR at中野サンプラザ』予告編より

※ラジオ関西『中将タカノリ・橋本菜津美の昭和卍パラダイス』2024年2月23日放送回より

【中将タカノリ(以下「中将」)】 3月1日公開のライブ映画『チェッカーズ 1987 GO TOUR at 中野サンプラザ【デジタルレストア版】』の試写会に行ってきました!

この映画は、これまでほとんど世に出ていなかった1987年のチェッカーズ「GO」ツアーの中野サンプラザ公演の映像を最新技術で編集したもので、ファンはもちろん、昭和マニア必見の興奮の内容でした。

【橋本菜津美(以下「橋本」)】 お誘いがあったとおっしゃっていましたね! どんな内容なんですか?

【中将】 楽屋風景とかコメントも挟まれるのですが、基本はライブ風景でした。たっぷり125分ということで、最近長い映画はあまり自信がなかったのですが、最初から終わりまで退屈せず観ることができました。さすがチェッカーズだとあらためて思いましたね!

【橋本】 1987年のチェッカーズはどんな時期だったのでしょうか?

【中将】 1983年にアイドルバンド的なイメージでデビューして大ブレイクしたチェッカーズですが、この時期になると自分たちのオリジナル曲を前面に押し出して、アーティストっぽいイメージに変わりつつありました。その変化の大きなきっかけが、同年のアルバム『GO』だったわけです。藤井フミヤさんをはじめ、スターらしい貫禄もついてきて、全盛期の勢いと彼ららしい音楽性を両方味わえる”おいしい”時期のチェッカーズですね。

映画のオープニングは、『GO』の収録曲『REVOLUTION 2007』(1987)。今回は、このライブ映画で演奏されていた曲を紹介しながら、その魅力について語っていきたいと思います。

【橋本】 (『REVOLUTION 2007』は)まさにオープニングという感じの楽しい曲ですね。作詞がフミヤさんで、作曲が鶴久正治さん。メンバーのオリジナル曲ですね。

【中将】 はい。『GO』以降は全部オリジナル曲になります。それまでもオリジナル曲はありましたが、シングルは主に作詞家の売野雅勇さん、作曲家の芹澤廣明さんコンビが手がけていました。映画では売野・芹澤コンビが最後に手がけた1986年のシングル『Song for U.S.A』も披露していました。

【橋本】 『Song for U.S.A』は名曲ですね!

【中将】 売野・芹澤コンビ、特に芹澤さんはメンバーにとって育ての親とも言える存在だったのですが、チェッカーズが方向転換をはかる中で、フミヤさんと軋轢が生まれてしまったみたいですね。フミヤさんもソロになってから数年前まで芹澤さんの曲は歌わないという状況でしたが、どうやら2020年に和解。フミヤさんが芹澤さんに電話して、謝罪とかしたわけじゃないんだけどお食事に行く仲まで関係回復したそうです。

【橋本】 なんとなく関係修復っていうのが男同士な感じですね! 女性同士だと難しいかもだけど(笑)。

【中将】 30年以上の月日を経たからというのもあるだろうけど、フミヤさんが芹澤さんの曲を歌うようになったのはファンにとってはうれしいでしょうね。人生いろいろです。

さて、映画で演奏していた曲をどんどん紹介していきますが、次は『GO』の収録曲『MY GRADUATION』。彼らのドゥーワップ的な要素がたっぷり詰まった曲です。

【橋本】 歌メロの部分は素敵な卒業ソングだとわかったのですが、間奏の英語の語りはなんとおっしゃってるんでしょうか?

【中将】 制服のボタンをあげた女子に「一発お願いします」とお願いしてビンタされるという、なんとも言えない内容です(笑)。

【橋本】 青春ですね(笑)。

【中将】 チェッカーズは福岡・久留米の不良仲間みたいなところから始まっているので、映画ではフミヤさんを中心にしたメンバーの、ちょっとイキったMCも見どころのひとつでした。「俺たち昔はもっと悪かったから……」みたいな(笑)。次に紹介する『NANA』もそんな不良フィーリングが詰まった曲だと思います。

【橋本】 私の年上の友人が昔、追っかけをするほどのチェッカーズのファンだったそうなんですが、一番好きな曲は『NANA』だと言ってました。

【中将】 『GO』の収録曲でシングルにもなっているから、ファンにとっては印象的な曲でしょうね。歌詞も妙にエッチで「濡れてくれ」「やろうぜ」といった歌詞が性行為を連想させるとして当時、NHKでは歌えなかったそうです。

【橋本】 洋楽とかだとこれくらいの表現は全然大丈夫だと思うんですけどね……。

【中将】 さて、今回(番組で)紹介する曲は次で最後です。『GO』収録曲でシングル。映画のエンディングで披露された『I Love you, SAYONARA』。

これも名曲ですが、あらためて聴いているとチェッカーズの曲ってサウンドも華やかでかっこいいけど、歌詞は案外平凡な青春の風景を歌ったものが多いなと思います。あまり都会的だったり鋭すぎたりしていないからこそ、多くの若者の共感を得ることができたんじゃないかなと。沢田研二さんの『勝手にしやがれ』(1977)もそうだけど、地味な歌詞と華やかなサウンドの組み合わせって、絶妙な化学反応を起こすんですよね。

【橋本】 私にとっては、フミヤさんの英語を多用した遊び心のある歌詞も印象的です。

【中将】 フミヤさんは少年時代にキャロルが大好きだったそうなので、ジョニー大倉さんの日本語と英語をチャンポンした歌詞には大いに影響を受けていると思います。チェッカーズってアイドルっぽいイメージだけど、あくまでロックンロールの系譜の中にいるバンドなんですよね。

【橋本】 なるほど! 以前から気になってましたが、私ももっとチェッカーズについて知りたくなってきました。映画も観に行かなきゃですね。

『チェッカーズ 1987 GO TOUR at 中野サンプラザ【デジタルレストア版】』
配給 株式会社ポニーキャニオン

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