政倫審「全面公開」で開催へ…岸田首相、政倫審に“押しかけ出席”表明が奏功か

(写真・時事通信)

自民党の政治資金パーティー裏金問題を審査する政治倫理審査会(政倫審)の開催に向けて二転三転するなか、岸田文雄首相が突然、「私自身、自民党総裁として政倫審に出席し、マスコミオープンの場で説明責任を果たしたい」と表明して与野党が対応に追われた。現職首相が政倫審に出席するのは初である。

「2月27日昼の段階では28日、29日に衆議院で開催、安倍派の西村康稔前経済産業相と二階派の武田良太元総務相が審査に出席する段取りでした。しかし自民党が報道関係者の傍聴、録音などを認める案を出したことが伝わると、全面公開を容認していた西村氏でしたが『聞いていない。安倍派として対応をあわせるため自分だけ公開で応じることはできない』と拒否したのです。

塩谷立安倍派座長、高木毅前国会対策委員長、松野博一前官房長官は公開に絶対反対でしたから、そこに合わせた対応を望んだのです。西村氏の欠席を知った武田氏も公開を承諾していましたが『1人だけが(政倫審に)出るのは納得がいかない』と言い始めて28日の開催そのものが流れてしまいました」(政治担当記者)

こうしたドタバタに危機感を抱いた岸田首相が局面打開のために、27日の夜に出席を決断したようだ。これまで政倫審は9回開催され、衆院の政倫審では議員にも報道陣にも公開されなかった「完全非公開」は1996年9月、加藤紘一自民党幹事長(当時)の共和ヤミ献金疑惑をめぐる審査の1例のみだった。

「27日、岸田首相はそのことを念頭に『これまで政倫審が完全非公開だったのは過去に1回だけだ』と発言していました。暗に公開の方向を打ち出していたのです。

しかし周囲に相談した形跡はなく、1月18日に突然『宏池政策研究会(岸田派)』の解散検討を表明したときと同じ展開です。当時は雪崩を打って『清和政策研究会(安倍派)』『志帥会(二階派)』『近未来政治研究会(森山派)』が解散の意向を示しました。

その成功体験から『政倫審は他の議員も公開で応じるはず』と考えたのでしょう。それが奏功したのか、28日午後には西村氏が急転直下、『公開で出席しても構わない』と表明。すると松野氏、武田氏、高木氏、塩谷氏の4人が慌てるように『全面公開』での出席を表明しました。公開での政倫審に応じず、白い目で見られることを恐れたのでしょう」(政治ジャーナリスト)

一方、野党は岸田首相の「政倫審押しかけ出席」に反発している。立憲民主党の泉健太代表も自身のXで《呼んでもいない岸田総理が、突如政治倫理審査会への出席を表明》とポスト。

その後も《総理の出席で、他の裏金議員が免責されるものでもないし、総理が安倍派の裏金の経緯を語れるのか、など総理の出席の意味は問われます》と疑問視するコメントをあげている。

また、国民民主党の玉木雄一郎代表もXに《安倍派や二階派の裏金づくりについて明確な説明がなければ、予算委員会でののらりくらりとしたやりとりを見せられるだけの結果に終わる可能性が高い。総理が期待する『志ある議員』が後に続く保証もない。自民党の党内ガバナンスは大丈夫か》と綴っている。

永田町の右往左往に国民は呆れ返っている。

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