【インタビュー】FANTASTIC◇CIRCUS、純度高めた至極のリテイクベスト盤「全て僕が恵まれていたらこういう曲は書いていない」

FANTASTIC◇CIRCUSの音楽はなぜ多くの人を魅了し続けるのか──。今回のインタビューを読むと、その理由が分かって頂けるだろう。

前向きでいつも私たちの背中を押してくれる楽曲たちが生まれた背景には、多くの挫折経験とそれを乗り越えようとする不屈の精神があった。決して順風満帆なバンド人生ではなかった。周りからは歌を「やめたら」と心無い非難の言葉も浴びた。それでも30年以上音楽活動を続けてこられたのは信頼できる仲間がいたから。いつも応援してくれるファンがいたから。

2月28日にリテイクベスト盤『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』をリリースした。今作は2023年3月に発売した「FANATIC◇CRISIS」結成30周年を記念した『TENSEISM BEST SINGLES【1997-2000】』の続編で、2001年から2004年にかけてリリースしたシングル全14タイトルを収録している。前作同様、全楽曲を再レコーディング。石月努(Vo)、kazuya(G)、SHUN.(G)の“いま”が感じられる作品となっている。

本インタビューでは、新作であるリテイクベスト盤の聴きどころやリリースまでの経緯、栄光も挫折も味わい全員が青春を捧げてきた「FANATIC◇CRISIS」について、そして3月10日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で行うライブに向けての意気込みなどを、石月とkazuyaの二人に聞いた。

◆ ◆ ◆

■やれるうちにやっておきたいという気持ちが強くなった■綺麗にまとめられたので納得感があります

──2023年5月までの全国ツアー<tour THE END OF 30th BOYS 2023>以降の活動継続については明言しておらず、今作リリースの発表に歓喜したファンは多いと思います。

石月努(Vo):5月に東京・昭和女子大学人見記念講堂で全国ツアーのファイナル公演をやらせて頂いて、その後の活動は白紙でした。 けれども全国ツアーで見えてきたものがあって。「面白かったね、良かったよね」という話をしました。ただ今後の活動については今年なのか、来年なのかみたいな所は僕らの感覚で決めようと最初に約束事をしていて。結果的に2024年になったというのが一連の流れです。

kazuya(G):とにかく全国ツアーをやったことが大きくて。自分たちが思っている以上に待っていてくれた人や泣いて喜んでくれる人がいて。ツアー中に努と、「僕らは何て幸せなんだろう」って話していました。

石月:新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いてきて、ようやく声を出せるようになったという時期でもありましたしね。直接みんなの声を聞いて、僕らが感動させられたというのが正直な気持ちです。あと去年アーティストの方の訃報も多かったじゃないですか。やれるうちにやっておきたいという気持ちは強くなりましたね。

──ファンの方は嬉しいでしょうね。『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』のリリースが決まった経緯も教えて頂けないでしょうか。

石月:『TENSEISM BEST SINGLES』の第二弾をレコーディングしていこうかっていう話は2023年の秋ぐらいからですね。秋口に3人で話し合って、このタイミングでシングルスを出そうとなって。そこからは結構バタバタでしたね。

──リテイクベスト盤なので全曲再録ですよね。

kazuya:全部です。

石月:結構きつかったよね。

kazuya:笑っちゃうぐらい。

──どういったところが大変でしたか。

石月:時間的な問題と、当時の譜面みたいなものとかもないんで。もうそこから。

▲石月努(Vo)
──思い出すところから。

kazuya:そうですね。それはメンバーそれぞれで違うと思うんですけど、 僕の場合は大丈夫でした。けれどもSHUN.のギターのディレクションもしたので作業量が多くて。まずこの期間でやりましょうと決まってからすぐにスケジュールを組み立てました。レコーディングの順番もイレギュラーだったので。普通だったら多分、イライラしたりとかしたと思うんですよ。今回の環境下では。けれども、SHUN.が結構笑かしてくれたんですよね。ギター持って「音出ねえじゃん」って言ったらギターの線が刺さっていなかったりとか(笑)。そういうことが多々あって面白くて。こいつが相方で良かったなと思いました。

──忙しい中も相方に癒されていたんですね。

kazuya:癒しですね。僕にとっては。それがすごく良かった。

──石月さんから見たレコーディング時のSHUN.さんはどうでしたか。

石月:僕にとっても癒しですね。彼がいるだけで現場が明るくなるというか。あれはもう持って生まれたものですよ。努力してどうこうなるものではない。

kazuya:しかも本人は意図していないんですね。面白いことをしようとしなくても勝手に面白いことが起きるという。

石月:FANTASTIC◇CIRCUSに関しては、この3人でもう30年来の付き合いだし、酸いも甘いも色々な経験を共にしてきてますからね。

──SHUN.さんのおかげでレコーディングも乗り越えられた。

石月:そうですね。レコーディングはもちろん大変ではあったんですけどね。ただ気づきもあって。例えばちょっとディレクターさんが遅れて歌詞が用意されていなかったりした場合も、ほとんど暗記してるなと。そこは凄いなと思いましたね。

──約20年前の曲でそれは凄いですね。

石月:体で覚えているというのは、このことかと思いました。

──kazuyaさんはレコーディングいかがでしたか。

kazuya:前作でもそうなんですけど、まず仕込みとして何か機材を買おうと。僕はテンション上げるところからスタートなので。前回は椅子を買って、今回はオーディオインターフェースをRMEのBabyface Proに新調して臨みました。そしてSHUN.が笑わせてくれたので比較的楽しくやれましたね。

▲kazuya(G)
──『TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】』が完成して、改めていかがですか。

石月:今作はもちろん、以前の楽曲と聞き比べると全く違うんですけど、けれども当時を思い起こさせるというか、それは目指しましたよね。なんとかバージョンみたいな感じじゃなく。埃を取ってあげてピカピカに磨いて、ちょっとパーツが壊れたところは直してという感じです。

kazuya:僕の言い方でいうと、ちょっと濁ってた水をすくってあげて綺麗にしてあげたイメージ。今の方が純度というか綺麗さがあると思います。

──今作について深掘りしていきたいと思います。アレンジを変えた楽曲やその理由について伺ってもよろしかったでしょうか。

kazuya:当時は知識量がなく、「BLUE ROSE」と「everlove」は表現の仕方が甘かったなとずっと思っていました。でもあの頃はあれが全てであって。ただ今回録り直すにあたり、綺麗にまとめられたので納得感があります。

──具体的にどの部分を変えたのでしょうか。

kazuya:ギターのテンションコードの音の羅列にアボイド(避けるべき音)が入っている部分を直しました。あとは9thを入れるとか。テンションコードの数字の話なんですけどそこをきちんと計算通りに仕上げました。

石月:それでいうとリズムもそうです。16分なのか 8分なのかね。若さゆえに曖昧だったというか、それが却って良さになっている部分もあったと思うんですけど、「本当はこれがやりたかった」というところはきっちりとその形にしました。

──アレンジで一番苦労した楽曲というと。

kazuya:「BLUE ROSE」ですね。一番時間がかかりました。

石月:リズムも一番難しい。

kazuya:「答えこれでしょ」という形にようやくできました。

──石月さんが歌い方を大きく変えた楽曲はありますか。

石月:そうですね。この楽曲というのはないんですけど、曲ごとにそれぞれ変えてはいます。細かいところで言うと、昔は意図せずにビブラートが掛かっていた所をビブラート無しにしたりとかね。あえてニュアンスをつけてみようとか。 全曲どこかしらにそれはあります。「ゆらぎ」はあえて最後にブレスを残したりしていますし。

──「ダウンコード」の歌い出しが優しくなっている部分が印象的でした。

石月:感情の込め方は変わりましたね、やっぱり当時は必死だったので。あとはライブと同じように歌ってみたり。「追憶をこえるスピードで」は、イントロ とかで「ウォウウォウ」と言っているんですけど、原曲では入っていないと思うんですよね。

──変化を聴き比べるのも楽しいです。

石月:あとはそのときの予算の関係で、やりたくてもやれなかったことが今回できたものもあります。例えば「ダウンコード」には生ストリングスが入っていたりだとか、ピアニストの方に弾いて頂いたりとか。

──「ダウンコード」は音が豪華になっていると思いました。ちなみに生ストリングスの提案は?

石月:私が「入れたいです」と申告しました。

──それを聞いてkazuyaさんはどう思いましたか。

kazuya:僕は予算の心配をしました。

石月:ははは(笑)

kazuya:でも、めちゃくちゃいいなと思っています。今回の「ダウンコード」は、自分が携わった作品の中でも、トップレベルにクオリティが高い作品になりました。別にバイオリンを自分が弾いたわけではないですけど(笑)。早く多くの方に聴いてほしいなと思います。

石月:あと先着購入者特典で「ファントム」という曲がありまして。この曲はライブの DVDには収録されていますが、音源にはなっていないんですよ 。

──全員が初レコーディング。

kazuya:そうです。新曲ですよ。もう(笑)

石月:ほぼ新曲です。新鮮でした。特典ですけど「ファントム」もぜひ聴いて頂きたいですね。

■青春は「FANATIC◇CRISIS」に捧げてきた■今もこうして活動できていることに感謝です

──ギターの音作りにもこだわりましたか。

kazuya:特にSHUN.はめちゃめちゃこだわっていましたね。ギターを自分でも買ってきたり、借りてきたりと、ものすごい数を持ってきていました。個人的にはマイキングを変えて、新しい発見が結構ありました。

──音の厚みが格段に増しているなと感じました。

kazuya:音の太さは以前より出ていると思います。ギターは2005年の「FANATIC◇CRISIS」のラストライブで使ったストラトキャスターがあるんですけど、これで録りました。

──そのギター1本でレコーディングを?

kazuya:ほぼ1本ですね。あまり多くのギターを置いておくことが好きじゃないこともあるんですけど、このギターは「FANATIC◇CRISIS」の思い出でもあるので、使いたいなと。

──他に新調した機材はありますか。

kazuya:機材は最新型で揃えていますね。エフェクターも当時とは全然違います。ピックも自分に合うピックを見つけたので、今は前よりもギターを弾くのが楽しいです。これなんですけど。

──プラスチックのおにぎり型ピックですね。厚さは1mm。手に馴染む感じがします。

kazuya:これ頂いてから変わりましたね。

石月:10円玉もあったよね。

kazuya:10代のときは10円玉をピックにしてギターを弾いていましたね。お金がなくて。

──音に関して様々アップデートしているのですね。

kazuya:あと、エンジニアさんがすごく優秀な方で。なんとエンジニア さんも「FANATIC◇CRISIS」が好きだったらしく、録り音をミックスでオリジナルに寄せてくれるんですよ。愛があるなぁと思いました。

石月:今回リリースさせて頂くワーナーミュージック・ジャパンさんにも「FANATIC◇CRISIS」を聞いていましたとか 、やりたいと思ってたっていう方がいらっしゃって。本当に恵まれていますよね。もう感謝しかないです。

──あと、今作もリズム隊は同年代を駆け抜けたNATCHINさん(B / SIAM SHADE)と、LEVINさん(Dr / La'cryma Christi)。

石月:そうです。今回もライブからの流れで全曲お二人にお願いしました。基本原曲に忠実にコピーしてくれましたが、よりカッコよくなっているところもあって。今のFANTASTIC◇CIRCUSの音で録れたかなと思っています。

──ここからお二人にアルバムタイトルにちなみ、「2001-2004」の印象的な出来事を聞きたいと思います。

石月:今から20年前くらいなので、「FANATIC◇CRISIS」が完成されてきた時期じゃないですかね。これ以前は実験的な要素が多かったと思いますが、この頃の「FANATIC◇CRISIS」のシングルとなると、信頼してもらえてきたというか。あとライブをたくさんやっていましたね。

──リリースペースもかなり早かったですよね。

石月:リリースもそうですね。だからほぼ僕は、ライブやってリハーサルやって曲作っての延々ループですよ。変な話、恋愛する時間はもちろん多くの人が経験をするようなことが何もなかったんですよね。どうしようと思っていました。とりあえず本と映画を時間を見つけては見て、その世界観に入り込んで曲を書いたりとか。あとは時間が少しできたら街に繰り出してみて散歩とか。ほとんどそれ以外していないという。

──音楽のことばかり考えていたのですか。

石月:毎日毎日そうですね

──多忙だった。

石月:今考えると「ちょっと無理」となりますね(笑)。

──kazuyaさんにとって「2001-2004」はどのような時期でしたか。

kazuya: 前回のシングルスの時期っていうのは僕の中で結構闇で。もうどうしていいかも分からなくて、本当にちょっとダメになっていました。でもそれは何が悪かったかと言うと自分の知識不足だったり、言語能力が無かったことに尽きるんですよ。でもその頃はそれが分からないから、とりあえず人のせいにしたりバンドのせいにしたりしてましたね。でも必死にもがいている自分がいたんです。

──かなり辛い時期が続いていたのですね。

kazuya:でも「2001-2004」ぐらいになってくるとちょっと友人関係の幅が広がりました。 僕らって友人がほぼメンバーしかいなくて、本当にメンバーと遊ぶ以外の選択肢がなかったんですよ。でもそこからちょっとずつ交友関係が広がって、メジャーの世界で活躍している人のデモテープを聞くことが増えました。

──転機の時期だったのですね。

kazuya:ただこれがかなり衝撃だったんですよ。デモテープが発売している音源とほぼ変わらなくて。「これはいかん」と思って、全財産を握りしめてパソコンを買いに行って1日でぶっ壊して、みたいな一連の話があるんですけど。

──かなりハードなエピソードです。

kazuya:なんと買ってきたパソコンが1日で火を吹いたんですよね。それを直してから徹くん(Dr /FANATIC◇CRISIS)にもパソコンやソフトの使い方を聞いたりして学んで、好きな作曲家の書いた曲を全部コピーして、良いと思ったことを全部言語化できるようにしたんですよ。そこからようやく「moonlight」のカップリングの「サクラ咲く街で」ができて、僕個人の作曲名義っていうのはここからスタートしたんですね。

──凄まじい努力です。

kazuya:僕は歌が歌えないので、自分は作曲ができるようにならないと価値がないんだと思っていたからですね。そこから一生懸命頑張って「月の魔法」とか「追憶をこえるスピードで」でようやく結果が出てきたのかなと。僕にとってこの時期は革命期でしたね。今では作曲のお仕事を頂いているので、この経験も良かったなと思っています。

石月:それでいうと「ダウンコード」も、大元のアレンジはkazuyaだったと思います。kazuyaがマニピュレーションを始めてやったのが「ダウンコード」でしたね。

──この時期は、kazuyaさんがまさに覚醒した時期だったのですね。ほかに印象的なエピソードはありましたか。

石月:本当にこの時期はメンバーと一緒にいました。僕の家兼スタジオみたいなところで録ったりしていたんですけど、この頃からほぼ家に徹がいるっていう(笑)。家賃払ってもらおうかなってぐらいに。

kazuya:今考えたらそうやな。

石月:常に誰かしらがいるっていう。

kazuya:食べる物も一緒だったしね。ずっと。

石月:それで俺が。

kazuya:カレー作って。

石月:そうそう。カレー作って振る舞うという。ビーフシチューとか煮込んで二、三食いけるものを全員に振る舞う。合宿所兼スタジオみたいな感じでしたね。

──音楽に全てを捧げたという時期だった。

石月:それ以外のなにものでもないです。

kazuya:本当にデビューから休みがなかったよね。そう言って頂いてOKです。

石月:でもその中でもSHUN.とかはたまに 2〜3日間とか空くと、アクティブにインドに行ったりしていた記憶があるんですけど、僕はそんな休みがあるなら曲を書くみたいな。それぐらい本当にずっとやってましたね。

kazuya:でもこの時期も忙しい中、SHUN.にはいろいろ笑わせてもらいましたね。

石月:なぜか彼のところには奇跡的に面白いことが起こるんですよ。面白いことも災難も寄ってくるという。

石月:犬も寄ってくるよね。

kazuya:うん。そういう関係図って変わらないんでしょうね。

──素敵な関係性ですね。

石月:紆余曲折経て、また帰ってきたみたいな感じですかね。このバンドの始まりは、僕がkazuyaのライブを見た時から始まっているんで。ライブでギターを弾いているところを見て、「分かった。彼を誘えばいいんだって」思ったところから。

kazuya:「ひらめいた」って(笑)。

石月:うん。リュウちゃん(RYUJI:B /FANATIC◇CRISIS)もそうなんだけどね。その頃は携帯もなかったので毎日家に電話ですよ。kazuyaから「バンドやっとるんで」と言われても「いや!」って。そこからはじまっているんでね。

──石月さんがkazuyaさんに「俺とやったら売れるから一緒にやろう!」と言ったエピソードですよね。これは電話だったのですか。

石月:そうそう。僕は一番年下の15、6歳のガキンチョだったんですけど、自信だけはなぜかあって。あとは何もないんですよ。でもビジョンだけは浮かんでいました。その頃だったらkazuyaがいて、SHUN.がいてリュウちゃんがいて。僕は戦隊もののイメージだったんですよ。バンドって。いろんなカラーがあって。結局1人だと負けちゃうんだけど、5人そろうと強いみたいな。だから売れるイメージしかなかったですね。

──kazuyaさんのライブを見たときにイメージできた。

石月:そうですね。なんなんでしょうね。あの自信は。今考えるといっちゃってますよね。

──紛れもなく運命の一言ですけどね。kazuyaさんはこの発言を聞いたときどう思いましたか。

kazuya:実は「FANATIC◇CRISIS」を結成した理由は、努が面白いからなんですよね。歌がどうこう、音楽がどうこうじゃなくて。さっき言ったように発言すら面白くて。

石月:ははは(笑)

kazuya:で、ライブを2人で見ていると、いつも「俺だったらこうやるよね、こうだよね」って言っていて。何もないのに(笑)。すごい自信で2人でしゃべったりしているのが、僕はすごく楽しかったんですよ。

石月:自分の居場所が見つかった気がして、何の用もないのに、なんならスタジオがない日も遊んでいましたからね。

──音楽というより人柄の面で惹かれ合っていたんですね。

石月:今思えば、青春は「FANATIC◇CRISIS」に僕も捧げてきたし、今もこうして活動できていることに感謝です。転生したことの意味合いみたいなことはリテイクベスト盤 2枚を通して伝わってくれればと思いますね。

■皆さんがいたからここまで続けられた■心折れながらも色々なことがありながらも

──本当に心に響く楽曲ばかりで、どんな人生を送るとこういう曲が作れるのかというのは、多くのファンの方も気になるところだと思います。

石月:それは全て「FANATIC◇CRISIS」に懸けたからだと思いますね。

──お話しを聞いているとそれがよく伝わってきます。ちなみにお二人はずっと輝いているイメージですが、挫折経験などはあるのでしょうか。

石月:それはもう結成して最初からありましたね。 僕は周りの人に「努ってボーカル向いてないんじゃないかな」とか「歌、やめたら」とか言われてて。ライブハウスからも「やめちゃえばいいんじゃない」とか言われてました。そんなこと普通でしたからね。

──そんな過去があったとは。今では考えられないです。

石月:常にそうでしたからね。逆に今だと「ありがとう」ですけど。それがあったから、「絶対負けない」って思っていました。少年漫画みたいに叩かれれば叩かれるほど強くなりましたからね。

──私もリアルタイムで楽曲を聴いていましたが、そういう経緯があったとはまったく想像できなかったです。常にカッコよく、颯爽としたイメージでした。

石月:いきなりありましたよ(笑)。

──常に批判の声も力に変えてきた。

石月:でも僕一人だと折れていたと思うんですよ。ほかにも自分が寝ているときに……実は起きていたんですけど、僕への批判をメンバーに言っているのを聞くっていう。よりショックなこともありましたね。けれどもメンバーが庇ってくれたりとかあって。普通何度も歌を「やめろ」と言われたら折れますよね。でも当時は「何言ってるんだ」と逆に思っていましたからね。

──今の日本人に最も必要なメンタリティな気もしていて、見習いたいところがたくさんあります。kazuyaさんはいかがでしょうか。

kazuya:挫折しかないですよね。うまくいった、なんてことはないです。インディーズの頃、僕はすごく楽しくて。当時の僕の作曲は、僕がコード進行を持っていって、それにメロディーを乗せるというのが楽曲のほとんどだったんです。ですがメジャーに行ったらそんなのは作曲じゃない。メロが全てだと言われて。僕の体感では「お前がやっていることなんて何の価値もない」みたいに感じて、本当に辛かったです。でも僕は自分が正しいと思っていて。メロディーは確かに一番であることは間違いない。でもコードというものが 僕はセットだと今でも思っています。それを立証するために努力して、作曲家になった今があるんですよ。

──自分の考えを立証するためにひたむきに頑張ったと。

kazuya:今はメロディーはコード次第でどうにでもなると分かっているから言い返せるんですけど。 その頃は言語化能力がないから、 ただただショックで、本当に辛かったですよ。そんなことばっかりです。でも今幸せなんで全部オールOKなんじゃないかなと思います。自分を信じるしかないんですよね。

──最初の自分の考えを今でも貫いているところが凄いです。

石月:僕がバンドをやりたかったきっかけというのは、実はコンプレックスの解消だったんですね。自分の好きな部分がないというか。自分のことが好きじゃないしコンプレックスだらけだし。やっぱりそれを払拭したかった。最初は本当に散々でしたけど、1人、2人とファンができて、ライブハウスをソールドアウトできるようになって、次はちょっと広めの箱でやって、ホールでできるようになりました。それでラストインディーズは渋谷公会堂(現LINE CUBE SHIBUYA)です。……これを傍から見るとサクセスストーリーだと思うんですけど、もう当人たちは挫折の連続でした。上下関係もかなり激しくて、色々ありましたね。

──不屈の精神で何度も立ち上がり辿り着いた舞台だったのですね。

石月:この経験が多分楽曲に反映されていると僕は思っていて。前向きな曲が多いのはそういうことかなと思っていますね。やっぱり全て僕が恵まれていたらきっとこういう曲は書いていないだろうし。だからこそ皆さんもシンパシーみたいなものを感じてくれているのかなとも思います。

──どうりで辛い時に楽曲を聴くと元気が出るわけですね。

石月:恐らくそうですね。

──心にメロディーや歌詞がすっと入ってくる理由が分かった気がします。最後に3月10日に東京・Zepp Shinjukuで開催されるワンマンライブ<FANTASTIC◇CIRCUS<BEST SINGLES 2001ー2004 / AGAIN 2024>>への意気込みをお願いします。

石月:『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』をリリースしたことによって、ライブでやれる楽曲の幅も広がると思います。ライブでやった回数が少ない曲もあり、どんな感じになるのか楽しみですね。

kazuya:僕は変な話、ライブに気負いはなくて。楽しくハッピーな空間がみんなで作れたらいいかなって。それが今の僕にとって一番大切なことな気がします。過去以上のパフォーマンスを見せられる自信がありますね。

石月:応援してくださった皆さんがいたからここまで続けられたわけですよ。心折れながらも色々なことがありながらも。 だからここからの活動は恩返しでしかないと僕は思っています。できる限り、今の僕らを見て元気になってくれたり、変わらないなっていい意味で思ってくれたりしたら、最高ですよね。

取材・文◎東 純史(BARKS)
撮影◎TOYO

『TENSEISM BEST SINGLES 【2001-2004】』

2024年2月28日(水)リリース
https://fantasticcircus.lnk.to/2001-2004

■初回生産限定盤/WARNER MUSIC STORE限定販売

▲『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』初回生産限定盤ジャケット
WPCL-60050 ¥8,500(tax in)
仕様:CD+直筆サイン入り特殊パッケージ、LPサイズ、ブックレット

■通常盤

▲『TENSEISM BEST SINGLES 【2001ー2004】』通常盤ジャケット
WPCL-13539 ¥3,500(tax in)

[CD収録曲](全14曲)
1. hal[ハル]
2. JET hyp!
3. ゆらぎ
4. ダウンコード
5. スプートニク -旅人たち-
6. LOVE MONSTER
7. ドラキラ
8. BLUE ROSE
9. 夢じゃない世界。
10. moonlight
11. 月の魔法
12. 鴉<KARASU>
13. everlove
14. 追憶をこえるスピードで

・通常盤・先着購入者特典
タワーレコード: 音源CD(「JAPANESQUE」1曲収録)
TSUTAYA: 音源CD(「ファントム」1曲収録)
上記以外のショップ: 音源CD(「Made In Blue」1曲収録)
Amazon:メガジャケ(※通常盤ジャケットとは違い初回盤のジャケットデザイン)

※一部のCDショップ(およびネットショッピングサイト)では特典プレゼントを実施していない場合がございます。
※一部のネットショッピングサイトでは、「特典付き」と「特典なし」のカートがございますのでご注意ください。
※特典は数に限りがございます。無くなり次第終了となりますので、お早目のご予約をお勧めします。
※特典に関するお問い合わせは、直接各CDショップ(およびネットショッピングサイト)にてご確認ください。
※各仕様は予定となります。

▼LINE MUSIC再生キャンペーン
https://wmg.jp/fantasticcircus/news/89259/

インストアイベント(ミニトーク&握手会)

2024年2月28日(水) 東京・HMV&BOOKS SHIBUYA
https://wmg.jp/fantasticcircus/news/89239/

2024年3月2日(土)東京・タワーレコード渋谷店
https://wmg.jp/fantasticcircus/news/89240/

FANTASTIC◇CIRCUS<BEST SINGLES 2001ー2004 / AGAIN 2024>

2024年3月10日(日)東京・Zepp Shinjuku
開場/開演 16:00/17:00

・チケット代
前売り ¥8,800-(税込)(ドリンク代別)
※年齢制限:3歳以上有料(2歳未満入場不可)

・一般チケット発売日
2024年2月10日(土)10:00〜

[問]SOGO TOKYO TEL:03-3405-9999 (月〜土 12:00~13:00/16:00~19:00 ※祝日除く)

関連リンク

◆FANTASTIC◇CIRCUS オフィシャルサイト
◆FANTASTIC◇CIRCUS オフィシャルTwitter
◆FANTASTIC◇CIRCUS オフィシャルYouTubeチャンネル
◆石月努 オフィシャルサイト
◆石月努 オフィシャルTwitter
◆THE MICRO HEAD 4N’S オフィシャルサイト
◆THE MICRO HEAD 4N’S オフィシャルTwitter

© JAPAN MUSIC NETWORK, Inc.