独自制裁、拉致巡る論点に 対北朝鮮、調査中止の過去

 岸田文雄首相が拉致問題解決に向けて北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談に意欲を示す中、日本が北朝鮮に科している独自制裁が論点の一つになる。2006年以来、北朝鮮籍船舶の入港禁止など制裁を続けるが、拉致被害者家族会は即時一括帰国が実現するなら解除に反対しない新方針を25日表明した。北朝鮮は制裁強化に反発して拉致調査を中止した経緯があり、制裁を巡る判断は今後の展開を左右する可能性がある。

 拉致問題担当相を兼ねる林芳正官房長官は22日の衆院予算委員会で、独自制裁を堅持するか聞かれ「何が最も効果的かという観点から不断に検討する」と述べた。

 政府が明確な方針を示さないのは、制裁を維持するか否かが北朝鮮の対日姿勢に大きく影響を与えるとみているからだ。

 16年2月、日本は北朝鮮の4回目の核実験を受けて制裁を強化。人と船舶の往来規制を拡大し北朝鮮への送金を原則禁止した。

 これに対し北朝鮮は、日本人拉致被害者の再調査を行う特別調査委員会の解体を表明。14年の日朝間合意が事実上白紙化された。

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