「62打席連続無安打」を乗り越えて…西武・西川愛也に漂う開花の気配

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「打った瞬間にホームランと確信しましたが…」

3月29日のプロ野球開幕まであと1カ月。ここからは徐々に実戦も増え、開幕一軍入りや開幕スタメン入りをかけたサバイバルレースが激化していく。

就任2年目の松井稼頭央監督の下、昨年5位からの逆襲を期す西武は28日に宮崎でソフトバンクと対戦。FAで移籍した山川穂高に手痛い一発を浴びるなど3-4で接戦を落としたが、チームにとって光明となったのが「期待のセンター」の連日の活躍だ。

この日「1番・中堅」で先発出場した西川愛也は、相手先発・和田毅が投じた第1球目の140キロを迷わずフルスイング。舞い上がった打球はあっという間にライトスタンドの芝生席へと突き刺さった。

「初球から打ちにいくつもりで打席に入りました」という積極性が光った一撃は、「打った瞬間にホームランと確信しましたが、走り始めた時に『あれ、もしかして…』と思い、ベース付近で走るスピードを上げました」と手ごたえは完璧。

この日は以降の4打席凡退で5打数1安打だったが、前日の韓国・斗山との練習試合でも「2番・中堅」で出場して3安打2打点2盗塁の躍動を見せており、7年目のレギュラー獲りに向けて存在感を高めている。

“プロ野球ワースト”の屈辱を乗り越えて

西川は花咲徳栄高から2017年のドラフト2位で西武に入団。高校時代は3度も聖地・甲子園を経験し、3年夏には全国制覇に大きく貢献した注目選手だったが、プロ入り後の歩みは順風満帆とは行かなかった。

プロ3年目の2020年に一軍デビューを果たし、2打席目でプロ初安打・初打点を叩き出したものの、2021年は12試合に出場して打率.000、2022年は35試合に出場して打率.000。2シーズン続けて無安打に終わる。

プロ初安打の後、気が付けば計3シーズンを跨いで59打席連続の無安打。野手のNPBワースト記録に並んでしまう。そして迎えた2023年、初出場となった4月30日・楽天戦も3打席凡退でNPBワースト記録を更新してしまったが、この試合の第4打席で待望のプロ2安打目が飛び出し、連続無安打記録を「62」でストップした。

しかし、裏を返せば、これだけ結果が出ない時間が続きながらも打席に立つことができたのは、首脳陣が西川のポテンシャルを高く評価していたから。2023年はキャリアハイとなる41試合の出場で計22安打をマーク。8月22日のオリックス戦ではプロ初本塁打も記録した。

呪縛を解き、2024年はさらなる飛躍のシーズンへ。チームの外野陣は昨年も100試合以上に出場した選手がおらず、チーム最多の71試合に出場した愛斗は現役ドラフトでロッテに移籍。レギュラー不在のイス取りゲームとなっている。

特に中堅のポジションはかつて秋山翔吾という柱が君臨していたが、秋山のメジャー移籍後は核となる存在が出てきていないだけに、西川にかかる期待は大きい。

7年目・24歳の若さで栄光も屈辱も味わっている背番号51が、獅子を逆襲に導く使者となるか。開花の気配が漂う西川愛也から目が離せない。



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