神戸の190円ピザ、「店への入りにくさ」を解決した意外なワケ

ピザが1枚190円、スタンド形式でサクッと食べられる神戸のピザ屋「2BROS PIZZA」(神戸市中央区)。2021年にオープンして以来、スタイリッシュな店造りで若者を中心に人気を集めていたが、アッパー層にとっては少しお洒落すぎて「入りづらい」なんて声も。そこで同店は、ある「意外な方法」で客層の幅を広げたのだった。

神戸・三宮のピザ屋「2BROS PIZZA」がJR六甲道すぐに設置したピザの自販機

◆ 日本はピザ=持ち帰り、「食文化」の違い

もともとNYの街角で見かける99セントピザからインスピレーションを得てオープンした同店。カウンター&腰がけ程度の椅子だけが置かれたシンプルな店内は、まさに「本場仕様」。だがピザ=持ち帰りの文化が根付く日本では、気軽に「立ったままピザを食べる」という文化は思うようには受け入れられなかったよう。

阪急三宮駅の高架下沿いにあるピザ屋「2BROS PIZZA」(写真提供:2BROS Pizza)

「約2年以上スタンド形式のお店をやっていますが、やはり日本にはピザをお店で食べる食習慣が根付いていないことが分かりました」と語るのはオーナーの崔さん。そんな状況を打破すべく、2023年秋頃からテイクアウトの冷凍ピザを販売したところ、見事にウケたという。

◆ 「自販機」への参入で生まれた、意外な反応

そして、そんなテイクアウト需要からスタートしたのが「自販機」。JR六甲道駅から徒歩1分ほどの場所で、設置を始めてからまだ2週間弱だが、さらなる「ニーズ」にも気付いたんだとか。

自販機で買えるピザ、価格帯は定番の190円の「ニューヨークチーズ」から300円の「ペパロニ」まで

「お店に来てくださるのは若い方が多いのですが、自販機で購入してくださるのは主婦層や高齢の方が多い。お店に入るのをためらって、テイクアウトしたいのに・・・という方々がいらっしゃったようで。この自販機は店員さんの目などを気にする『入りにくさ』にも応えてくれています」

若者で賑わう店内(写真提供:2BROS PIZZA)

最近では店員さんの目を気にせず買い物できる場所として、各地に「無人の古着屋」がオープンする世のなか。食品の自販機が「手軽に24時間買える」といった側面のほかに、このような役割も担うとは驚きだ。

◆ ちなみにピザ1枚の価格は?

気になる価格はというと、なんと店舗と同じ190円。輸送量や冷凍の包装などにかかる「手間」から自販機の商品は少し高い、なんてことが一般的だが、崔さんに聞くと「値段は同じにしないとフェアじゃない」と一言。自身がお客さんの立場になったとき、どう思うか?を大切にしているんだとか。

そんなさまざまな「利用者の思い」に応えた結果、始まってからたった数週間ではあるが、反響は想像以上だという。筆者が自販機に訪れた際も、たった数分の間に通りゆく人が「これ気になってんねん!」「今日買って帰る?」などと近隣住民が2〜3組、自販機の周りに集まっていた。

焼き立てを真空保存した商品、冷凍で約6カ月間は保存可能だという

「アメリカのピザを日本で」とのコンセプトのもとオープンしたお店だが、商品へのこだわりはそのままに、ちょっと意外な日本らしい方法で一般家庭に広まっていっている。

自販機は24時間営業しているが、その日の在庫が売り切れ次第終了(午前中のうちに買っておくのがベター)。場所はJR六甲道駅の山側で、「すし居酒屋 市場ずし駅前」の大きな看板が目印。同店の敷地内に設置されている。

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