日銀支店長のオシゴトに密着

今回の特集は「日本銀行」です。大規模な金融緩和などのニュースでその存在は見聞きするものの、実態は身近とは言えないかもしれません。広島支店は、地元で何をしているのか。取材しました。

★日銀広島支店 井上広隆支店長

「今年の7月3日から発行を予定している新しいお札、新しい一万円札」

「資本主義の父」と呼ばれる渋沢栄一を描いた新しい一万円札について語るのは、日本銀行広島支店の井上支店長・55歳です。広島支店は、官公庁が集まる広島市中区基町にあります。全国に32か所ある支店は、大きく分けて3つの重要な役割を担います。

★井上支店長

「ひとつの大きな役割は、お札・紙幣/地域の経済が安心して回るようなインフラを支えていくことが

実はすごく大事だと思っている」

支店には、一般の銀行と同じように窓口があります。いたんだ札の交換などで一般の利用も可能ですが、その多くは金融機関や官庁との取り引き。「銀行の銀行」「政府の銀行」と呼ばれるゆえんです。

重要な役割の2つ目は「地域の金融・経済の調査」です。支店長室をのぞいてみると。

★井上支店長

「いろんな新聞を見て前の日に起こったことをあらためて確認しています」

地方紙・経済専門紙を含め10紙以上に目を通すのが、日課です。しかし、机に向かっているだけでは、必要な情報は手に入りません。

★井上支店長

「今から企業視察へ行ってきます」

地元経済の今を知る為に、「現場の生の声」は欠かせません。

この日訪ねたのは、自動車部品などの設計・製造を手掛ける「ヒロテック」です。

★ヒロテック鵜野社長とやりとり

「このラインが一番新しいラインですけど…」

「コロナがあって半導体の供給制約があって、最近(生産量は)どれぐらい戻ってきた感じなんでしょう」

「25%ぐらいいったんダウンしたが、去年から今年にかけて徐々に生産も戻ってきている状態」

井上支店長の探究心は、とどまるところを知らない様子です。

★井上支店長

「個人消費という意味では、スーパーは多くの人が訪れる典型的なショッピングスポットなので、

そこで何が起こっているかというのはとても重要なんです」

週末には、愛用の電動自転車で、いくつもの店舗を回ります。

★井上支店長

「私が注目しているのはお惣菜なんですね。いろんなスーパーマーケットのお好み焼きで、

どのタイミングから外付けのマヨネーズがなくなったかとか、その背後に何があるんだろうと

自問自答するのが週末の大事な仕事になっている」

山口に実家があり、「幼いころからのカープファン」を公言する井上支店長。

広島の経済を語る上で、プロスポーツは欠かせないと言います。

★井上支店長

「ビジネスに引きつけてみてもプロのスポーツチームは観客が何千人か何万人か集まって

入場料を払って試合を見ること自体がひとつの消費活動ですしグッズは非常に大きな部分です。

スポーツをスポーツとして見るのみならず経済を盛り上げるという観点からも

重要な役割を果たしていると思っています」

訪ねたのは、プロバスケットボールチーム「広島ドラゴンフライズ」。

★あいさつ

出迎えたのは、浦伸嘉社長と朝山正悟選手です。

★やりとり

井上

「プロバスケットボールが広島の街の中でどういう形で役割を果たしていかれるのか」

「ブランディングが一番重要なのかなと。広島ドラゴンフライズが唯一無二の存在であると言うには、ブランド力を高めて、ライセンスであったり、展開していくのが経営的には合理的で効率的でないかと」

朝山

「スポーツを見ることに慣れている人がたくさんいる。そこからいかに今度はバスケットという、競技に対していかに理解を深めていただけるか」

★ドラゴンフライズ浦伸嘉社長

「カープとサンフレといかに違う色を出していくか。2つの球団がやっていないことをやらないと、なかなか追いついていけないと思ってそういう観点で見ているんですけど、そういう観点がないとダメですよね、というのが支店長のお話だと思うんです」

こうして集めた情報を分析。支店の3つ目の役割「地域に対する情報発信」に結びつけます。

そして定期的に記者会見を開き、広島の経済状況や、景気判断を示す指数を公表しています。

★井上支店長

「地元の人が気が付くよりも早く地域経済の変化に気付いてこその日銀支店長だと心から思っているので、今後もその思いを胸に地域経済の調査にしっかりと当たっていきたいと思っています」

信条は「百聞は一見に如かず」。伝聞よりも、自分の目で実際に見ることを金融政策に活かそうと、きょうも広島の街を巡り、その変化を探ります。

【2024年2月27日 放送】

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