手取り30万円で「どうにかタワマンに住む」30代夫婦は多かったが…「憧れの生活」に潜む闇

(※写真はイメージです/PIXTA)

タワーマンション(以下、タワマン)とは、基本的に地上20階建て以上の居住用高層建物のことを指します。「お金持ちの住む家」というイメージが強いですが、実際にはどのような人たちが、どのような目的で住んでいるのでしょうか。実際の声を聞きました。

タワマン乱立の日本「ステータス」求めて住む人も

1997年、建築基準法・都市計画法の法改正が行われ建設のハードルが下がったことにより、「西新宿パークサイドタワー」「センチュリーパークタワー」「西早稲田シティタワー」など、ランドマーク的存在として、首都圏近郊でタワマンの建設ラッシュが始まりました。

そのムーブメントは現代でも止まりません。たとえば、晴海フラッグの最寄駅となる大江戸線「勝どき」駅は、隣駅の「月島」とともにタワーマンションの多い地域です。

駅直結の『勝どきビュータワー』、日本最大規模のツインタワー『THE TOKYO TOWERS』が有名ですが、この数年でこれまたツインタワーの『DEUX TOURS』、THE TOKYO TOWERSの対面に『ザ・タワー』、駅直結で商住複合の『パークタワー勝どき』が完成しています。

近頃話題を集めているのは『ザ・豊海タワー マリン&スカイ』。2026年に竣工予定で、海を目の前に望む贅沢なロケーションにあります。

そんな、ベイエリアに建つタワマン。「眺望代」が存在し、階層の高低だけでなく方位によっても価格が異なってくるものです。

実に羨ましい暮らしが想像されますが、タワマン住民の間に話を伺うと、なんとも辛い事情を明かしてくれました。

吉山さん(33歳・男性/仮名)。年収450万円、ボーナスはなく、手取りは月30万円程度です。結婚して間もなく、家賃18万円の1DKタワマンに引っ越しました。タワマンと一括りにすれど、その形態は様々。およそ30平米、一人暮らしや2人世帯向けの部屋も珍しくなく、「ステータス」狙いで借りる若年層・資産形成層は多いものです。

吉山さんはまさに「人生で一回は…」と、タワマンの魅力に惹かれた資産形成層のうちの一人でした。

「夫婦ともに、タワマン暮らしが夢だったんです。海を見ながら、2人でお酒を飲めたら最高に楽しいだろうなと。僕の手取りの半分以上が持っていかれますが、妻も扶養を超えない程度に働いていますので、普通に暮らしていけました」

「ひとときの幸せ」タワマン夫婦に起きた悲劇

「子どもができたら、住宅ローンを組んで一戸建てを買おうと考えていたんです」

タワマン生活は、夫婦水入らずの「ひとときの幸せ」。そう考えていた吉山さん夫婦でしたが、思わぬ事態に見舞われます。

サービス業だった吉山さん。コロナ感染拡大の影響は避けられず、収入が減少。追い打ちをかけるように奥様のシフトも減り、夫婦ともにステイホームを余儀なくされました。しばらくは耐え忍ぶ日々が続きましたが、さすがに今の贅沢はできないと、タワマン暮らしに終止符を打つことに。

代わりに選んだのは、同じく1LDK、4階建て・家賃8万円の小さなアパート。部屋の大きさはタワマン時代とそこまで変わりませんが、駅までの距離が少し長くなりました。至便性は高い街ですので、日々の暮らしの不便は感じないはずだったのですが……。

吉山さん、「結構生活しんどいです」と語ります。

「通常の分譲マンションに引っ越して、『タワマンの生活に慣れていた自分』に気づきました。ここが悪いってわけではないんですけど、ゴミ出しはもちろん曜日で決められていて、景色もまあ“普通”です。決して良いわけではない」

「何より隣人が……人を家に呼んで深夜まで大騒ぎしていることがあるんです。タワマン時代は騒音問題が一切なかったので、この点はあまりにも盲点でした」

「生活レベルを落とすってこんなに大変なんですね。『今まで贅沢しすぎてたんだ』と思い直す日々です」

「生活レベルを落とすこと」と「それまでのプライドをなくすこと」は、自分が思っている以上に難しいものです。危機的な状況に陥っていても、積み上げてきたものにすがってしまう人も少なくありません。

残念なことに、最近ではタワマン価格がますます高騰しています。手取り30万円で「どうにかタワマンに住む」ことは少し前までは可能でしたが、現実的にほぼ不可能になってきました。

憧れのタワマン生活ですが、豊かな暮らしを続けるのは大変な様子。「それなりの年収」と「覚悟」が求められていることは、間違いないようです。

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