65歳「貯金500万円」でも相続対策は必要? 財産が少なくても「意外と家族が揉める」理由とは?

相続争いの約33%は遺産1000万円以下で起こっている

最高裁判所によると、2021年度に遺産分割がまとまらずに裁判所で調停や審判などにいたった遺産分割事件のうち、約33%は遺産1000万円以下の事件が占めていました。「相続争いはお金持ちの話」というイメージがあるかもしれませんが、1億円を超える遺産で裁判所に持ち込まれるのは全体のわずか約8%であり、80%近くは遺産5000万円以下で調停や審判になっているのです。

5000万円というと大きな金額ではありますが、相続財産は現金預金のみを指すのではありません。都心部に自宅などの不動産を所有していれば、一般人であっても到達する可能性はじゅうぶんにある金額です。

「相続対策」と「相続税対策」は違う

「相続対策はお金持ちの話」と思っている人は、相続対策と相続「税」対策を混同しているのかもしれません。

なぜなら、相続税対策は相続税を減らすための対策であり、相続税は遺産が基礎控除額を超える場合にかかる税金だからです。例えば、父、母、子ども2人の家族で父が死亡した場合、遺産が3000万円+600万円×3人=4800万円を超える場合に相続税が発生します。

3000万円+600万円×法定相続人の数

これに対して相続対策は、自分が死亡したあとに相続人が遺産分割や相続手続き全般で困らないようにするためのものです。つまり、財産の金額は関係ありません。

相続対策の方法

自分の財産は貯金500万円だけだという場合であっても、生前にその500万円の相続先を決めておくことが相続対策になります。

具体的な方法としては、相続人全員を集めて相続について話し合い、遺言書を作成する流れになります。遺言書は公正証書にしておくと、より安心です。自分が死亡するまで500万円を所有しておく必要がないという場合には、生前贈与もよいでしょう。預金の行く末を自分で確認することができるからです。

本記事では財産は貯金500万円のみという話でしたが、もし不動産などの現金化しにくい財産を所有しているなら、生前に処分しておくと相続人が助かるでしょう。

まとめ

財産が少ないからといって相続対策をしなくてよいわけではありません。遺産1000万円以下が遺産分割事件の約33%を占めていることからも、むしろ財産が少ない人のほうが相続対策をするべきなのかもしれません。

「うちの家族に限って大丈夫」と思うかもしれませんが、人はお金を目の前にすると変わってしまうものです。揉める・揉めないの話ではなく、大切な家族のために今できる限りのことをしておきませんか。自分の相続をきっかけに、家族が仲違いするところを見たくはないでしょう。

出典

最高裁判所事務総局 令和3年司法統計年報3家事編
国税庁 No.4152 相続税の計算

執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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