【連載コラム】第53回:スプリング・トレーニング招待選手の立場から開幕ロースター入りを狙う3人の日本人選手

写真:コンディションの良さを感じているという筒香嘉智 ©Getty Images

野茂英雄さんが村上雅則さん(1964~65年ジャイアンツ)以来30年ぶりの日本人メジャーリーガーとなった1995年以降、MLBでは途切れることなく日本人選手がプレーしています。今季はドジャースの大谷翔平と山本由伸、パドレスのダルビッシュ有と松井裕樹、カブスの鈴木誠也と今永昇太、メッツの千賀滉大と藤浪晋太郎、レッドソックスの吉田正尚、ブルージェイズの菊池雄星、タイガースの前田健太と合計11人の日本人選手がプレーする予定ですが、ほかにも3人の日本人選手がスプリング・トレーニング招待選手の立場から開幕ロースター入りを狙っています。

1人目はレイズの上沢直之です。先日、初めて実戦形式の打撃練習に登板し、カイル・スナイダー投手コーチは「素晴らしいピッチングだった。見ていて楽しかったよ」と高い評価を与えました。レイズはシェーン・マクラナハン、ドリュー・ラスムッセン、ジェフリー・スプリングスの主力3投手を故障で欠いており、現時点で予想される開幕ローテーションはザック・エフリン、アーロン・シバーリ、ザック・リテル、ライアン・ペピオ、タジ・ブラッドリーという顔ぶれ。昨季最多勝のタイトルを獲得したエフリンを除くと、レギュラーシーズンで125イニング以上を投げた経験のある投手が1人もおらず、実際にどれくらい稼働できるのか、不安を残すメンバー構成となっています。

レイズは昨年4月にトミー・ジョン手術を受けたスプリングスを60日間の故障者リストに登録することでロースターの40人枠を空けることができるため、オープン戦のパフォーマンス次第では、日本球界での直近3シーズンで平均160イニングを投げている上沢が開幕ロースター入りするチャンスは十分にあるはず。場合によっては、開幕ローテーションに名を連ねる可能性もあるでしょう。

2人目はジャイアンツの筒香嘉智です。渡米4年目となった昨季はレンジャーズやジャイアンツとマイナー契約を結びましたが、メジャー昇格を果たすことはできませんでした。毎年のように日本球界復帰の可能性が取り沙汰されていますが、筒香はメジャーの舞台で活躍することを決して諦めず、今季も引き続きアメリカでプレーすることを選択。「今までの5年間のなかで一番体調がいい」と自身のコンディションにも手応えを感じているようです。

ジャイアンツは指名打者として大砲ホルヘ・ソレアを獲得。一塁には筒香と同じ左打者のラモンテ・ウェイドJr.がおり、外野の両翼のレギュラー(マイケル・コンフォートとマイク・ヤストレムスキー)も左打者です。正直、ジャイアンツの現状のロースターに筒香が入る余地はないと思われますが、いつ故障者が出るかわかりません。故障者の代役に選ばれるためには、もちろんオープン戦やマイナーの試合で結果を残すことが必要。渡米5年目も筒香の挑戦は続きます。

3人目はアスレチックスの冨岡聖平です。2019年11月に入団テストに合格し、2020年1月に正式契約。2020年はマイナーのシーズンが中止となったため、2021年にマイナーA+級でキャリアを開始しました。昨季はAA級で37試合に登板して防御率3.02と結果を残し、8月にはマイナー最上位のAAA級に昇格。そして、今春は初めてメジャーのスプリング・トレーニングに招待されています。

アスレチックスの戦力はメジャー最弱レベルで、昨季リーグワーストの防御率5.48に終わったように、投手陣も駒不足です。各選手の契約の都合上、開幕ロースター入りは難しいかもしれませんが、オープン戦やマイナーでの活躍次第では、今季中にメジャー昇格が実現するかもしれません。

文=MLB.jp 編集長 村田洋輔

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