「フロントで恐竜ロボットがお出迎え」で世界初 サービス開始から9年…進化続ける「変なホテル」の今 最近はホログラム映像でチェックインも

フロントでは恐竜ロボットがお出迎え(大阪なんば/取材日した日はバレンタイン仕様)

恐竜ロボットがフロントで出迎えてくれるホテルとして知られている「変なホテル」。2015年の開業時、ユニークで未来的な体験が楽しめると大変話題となったが、それから9年、土地柄や客のニーズにあわせてサービスを進化させ続けていうという。コロナ禍が落ち着いてインバウンドが戻ってきた、「変なホテル 大阪なんば」の支配人に聞いた。

エンターテインメント性を追求した結果できあがった「変なホテル」

入口の自動ドアが開いて中へ入ると、そこは一般的なビジネスホテルの佇まい。テーブルと椅子、そして自販機が設置されている。ただひとつ、ほかのビジネスホテルと異なるのは、フロントでカウンターの向こうに控えているのが、人間ではなく2頭の恐竜であること。恐竜なのに、人間の言葉で「いらっしゃいませ」と歓迎してくれる。

この恐竜はアトラクションで、客を楽しませるためのもの。チェックインは利用客が自らタッチパネルを操作する。操作が分からないときは、スタッフ(人間)を呼ぶこともできる。

「変なホテル」という振り切った感のあるネーミングだが、この「変な」は「ヘンテコ」という意味ではないという。

「常に新しく変わっていくという意味を込めて、変なホテルとなっております」

「変なホテル」を運営するHISホテルグループ(以下、HIS)では、業務の効率化と経費の削減、また利用客へエンターテインメントの提供を目的として恐竜ロボットを設置したのだとか。

福岡・博多のフロント(画像提供:変なホテル)

「ヒト型のロボットが接客したり案内をしたりするサービスは、これまでもショッピングモールや飲食店などで見られたのですが、ホテルのフロントにロボットを導入したのは変なホテルが世界初で、当時は大変な話題になりました」

大阪なんばは「変なホテル大阪 西心斎橋」として、HISでは初期にあたる2019年5月17日にオープンした。だが同時期に心斎橋で営業していた「変なホテル大阪 心斎橋」と間違えるお客さんが続出した。

「そのため、名称を『変なホテル 大阪なんば』へと変更いたしました」

名称は変更したが、館内のスペックはオープン当時から変わらないそうだ。

変なホテルのイメージとして定着した恐竜ロボットだが、想定外の悩ましい問題が発生することもある。

「小さいお子さんは、恐竜を怖がることがあります」

子どもが怖がるので、宿泊予定を切り上げる親御さんもいるとか。親御さんには喜んでもらっても、小さい子どもには怖いようだ。しかし、ほとんどのお客さんには好評だそうで、コロナ禍が落ち着いてからは、外国人客の予約も増えたとか。

「この大阪なんばでは、お客様の6~7割が外国の方です」

宿泊客に人気のコンシェルジュロボットRoBoHoN

恐竜ロボットのほかに、コンシェルジュロボットのRoBoHoNも人気者だ。

RoBoHoNは家電メーカーのシャープ株式会社が開発した、身長約19.5㎝の人型ロボット。電話機能のほか、インターネットに接続して、人と様々なコミュニケーションをとることができる。

RoBoHoNがいる部屋にはこのような表札がかかっている

RoBoHoNがいる部屋に案内していただいた。テレビの横に座っているRoBoHoNに向かって、支配人が「ダンスして」とリクエストすると、「うん、ゆりかごのうたを歌うね」と返事をして、フルコーラスを歌いながら踊ってくれた。

ほかにも絵本の読み聞かせやクイズ、しりとりなどもできるというので、大人から子どもまで幅広く人気を保っている。だが、彼の本職はコンシェルジュだ。ホテル仕様に設定してあって、館内の説明、周辺情報、チェックアウト時間の案内、希望する時間にアラームを鳴らしてくれるなど、宿泊客へ日々のサポート業務を行っている。

コンシェルジュロボットのRoBoHoN

このほか、大阪なんばでは2部屋、恐竜に特化した客室が用意されている。この部屋は、恐竜のぬいぐるみが置かれていたり、布団カバーが恐竜の柄になっていたりするほか、壁にも恐竜があしらわれている。

「恐竜ルームは、お子さんに喜ばれますね」

こちらは恐竜ルーム
子供が喜ぶという恐竜ルームの内部

フロントの恐竜と客室のRoBoHoNは、2015年に変なホテルのサービスが始まった当時からある。だが、ロボットは一度設置すると動かすことが難しいため、新規に開業するホテルについてはロボットではなく、映像で映し出された侍や忍者などのキャラクターがチェックインを担当する新システムを導入しているそうだ。

新規オープンするホテルはフロントがホログラム映像(奈良/画像提供:変なホテル)

また昨年、フロントに恐竜もホログラム映像も置かず、最短5秒というチェックインのスピードに特化した仕様のホテルもオープンした。

「土地柄やお客様の目的に合わせて、どんどん進化と変化をしております」

フロントの演出やRoBoHoNそのものを楽しむための利用も、もちろん大歓迎だという。

「変なホテルの『変』は、変化・進化を表しております。今後も、新たな技術やシステムなど、お客様のお声をもとに反映させてまいります」

ヒト型ロボットが対応することもある(東京・銀座/画像提供:変なホテル)

取材した時点で、国内に20館、海外(ソウル、ニューヨーク)に2館を展開している変なホテル。フロントでは恐竜やホログラム映像のほかにも、東京にはヒト型ロボットが出迎えてくれるタイプもある。また関西空港のホテルでは、天然温泉のサービスもある。

変化し続けるのはもちろん、バラエティーにも富んだ、変なホテルだ。

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(まいどなニュース特約・平藤 清刀)

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