「運転手は放心状態」…横断中の女児3人がはねられ重軽傷 現場を運転して見えたものは… 静岡・焼津市 /ニュースの現場 

静岡県焼津市で、下校中の児童3人がはねられ、重軽傷を負いました。なぜ事故が起きたのか、現場に行くと、いろいろ見えてきました。そして、事故を起こしたドライバーが本来ならわかるはずのサインを見落としていた可能性もあります。

伊地健治アナウンサー:「焼津市三右衛門新田の市道交差点に来ています。20日火曜日、向こうからあちらに向かって道路を渡ろうとしていた小学生が、車にはねられる事故がありました。この交差点は、ご覧のように信号はありませんけれども、横断歩道が設置されています。そして事故の調べの跡でしょうか、生々しいチョークの跡も残されています」

「女の子がぐったり倒れていた」「運転手は放心状態」

20日、焼津市郊外にある住宅街が物々しい雰囲気に包まれました。近くの小学校から下校中の小学生が4人で横断歩道付近を歩いていたところ、4年生の女子児童3人が、走ってきた軽乗用車にはねられたのです。

事故直後の様子を見た女性:「頭を抱えて泣きながら大人に話している女の子と、横断歩道を渡り切ったところに女の子が1人、ぐったりして倒れている状態」

事故直後の様子を見た男性:「大きな音でバンって鳴って、聞いたことなかったので気になって見た。2人倒れていて、1人はもう動かなくて、1人は泣きじゃくっていて、もう1人けがしていた子は鼻血だけで、もう1人の子は『やばい、やばい』って騒いでいた」

Q.車を運転していた女の様子は?
A.「放心状態で、もう一点を見つめている状態だった」

Q.手当てをしていたりは?
A.「なくて。どうしていいのかわかっていないような状況だったので、ずっと見ているだけだった」

この事故で警察は、軽自動車を運転していた焼津市に住む会社員の19歳の女を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕し、22日送検しました。

「車の通りは激しい」

伊地健治アナウンサー:「事故にあった子どもたちは、あちらの方向に向かって道路を渡ろうとしていました。横断歩道は少しずれたような形で設置されていますので、横断歩道の上か、あるいはその周辺を歩いていたものとみられます。また、子どもたちから車の方向を見ますと、道路がカーブしているため、スピードを出していれば、突然車が現れたと感じるかもしれません。そして、事故の衝撃が大きかったのか、この場所だけではなく、離れたこの辺までチョークがあります。ここまで人が飛ばされたということなんでしょうか」

横断歩道から5mほど離れたところにつけられた、チョークの跡。事故直後に撮影された上空からの映像を見ると、白い丸の中に、赤黒い血痕のようなものが確認できます。

はねられた女子児童3人のうち、2人は頭の骨や足の骨を折る重傷、1人は軽傷です。事故現場となったこの交差点について、近くに住む人から話を聞くことができました。

近隣住民:「車の通りは激しくて、夕方も朝も結構通るので、スピードを出して走る方もいる」

Q.事故の起きた交差点を使う子どもは多い?
A.「たくさんというわけではないが、時間によってはその道を通るお子さんはいる」

Q.この交差点でこれまでに交通事故はあった?
A.「私が知る限りはない。ただ、道が緩やかなカーブで見通しが悪い感じになっているので、横断歩道を渡る方がいるときは、ちょっと気を付けて走らなきゃと思っていた」

実際に走ってみると…

実際に、事故を起こした車と、同じルートを走ってみると…

伊地健治アナウンサー:「この先に事故現場があるんですが、左にカーブをしていて見通しが悪いのがわかります。ただ、横断歩道があることを示すダイヤのマークがあります。右手にはミラーもあって交差点の様子が見えるようになっています。ちょうどいま、ここが事故があった交差点です」

あらためて映像を見てみると、道が左に折れていて、遠目には、横断しようとする歩行者がいるかどうかわかりません。また、横断歩道の左側がかすれていて、見づらくなっています。

しかし、道路には横断歩道の存在を知らせる「ダイヤマーク」やカーブミラーが設置されているため、確認さえすれば、歩行者に気づくことはできるはず…

横断歩道近くの人が見えるのは10m手前

今度は、横断歩道の近くにスタッフを立たせ、どう見えるのか再現します。制限速度の40kmで、同じ道を走っていくと…

伊地健治アナウンサー:「いまちょうど人が見えました」

一瞬だったので、今度は画面を止めてみます。傘をさしたスタッフの全身をはっきりとらえられたのは、停止線の手前、およそ10mのところでした。

捜査関係者によると、女は児童に気づかないまま運転し、衝突直前に、慌ててブレーキを踏んだとみられる様子がドライブレコーダーに記録されていました。女は、「事故を起こしたのは間違いない」と、容疑を認めているということです。

「いろんな角度から関係機関と連携して対策を講じる」

事故から2日が経った22日、下校する児童の多くは、事故現場から300mほど離れた場所にある通学路を使っていました。

警察官:「横断歩道を渡るときは一回止まって、左右見て、大きく手を上げて渡るようにして」

見守り隊:「はい、止まって。右左見て、手を上げて。手を上げるだよ、これから、手を上げる」

警察官や見守り隊の声を受け、元気いっぱいに手を上げて横断歩道を渡り、家へと向かう子どもたち。ただ、痛ましい事故を無くせるかどうかは、ハンドルを握る、私たち大人の意識にかかっています。

焼津警察署交通課 岩見貴雄課長:「横断歩道は、歩行者のための聖域なので、横断歩道を通る際は歩行者の有無を確実に確認して安全に通過してもらいたい。区画線の塗り直しも重要、看板の視認性やカーブの位置など、いろんな角度から関係機関と連携して、対策を講じていきたい」

(2月24日放送)

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