「花は必ず咲くよ」長引く避難生活、前向く避難者の姿 能登地震2カ月 奮闘する本県ボランティアに記者同行

避難生活が続く佐野さんに足湯を提供し、手を握って励ます本県ボランティアの菊池さん(手前左)=28日午前10時20分、石川県穴水町中居ロ

 能登半島地震は3月1日で発災から2カ月。1月中旬から石川県穴水町で支援を続ける認定NPO法人「とちぎボランティアネットワーク」(とちぎVネット)のボランティアに同行し28日、同町内の避難所を訪ねた。「家に帰りたい」「この先どうなるのか」。長引く避難生活に不安を口にしながらも、ボランティアに支えられ、前を向こうとする避難者の姿があった。

 同町住吉公民館の避難所には現在、近くの12人が避難する。この日、ボランティアはお湯に足を浸して避難者の心身をほぐす「足湯」を行った。

 「立派な手だね」。宇都宮市から参加した菊池順子(きくちじゅんこ)さん(71)が手を握って声をかけた。お湯に足を浸した佐野徳三(さのとくぞう)さん(92)は表情を緩め「しばらくお風呂に入れていない」とこぼした。自宅は大きく壊れ戻れそうにないという。

 「この先が不安で夜眠れない」。小林花子(こばやしはなこ)さん(91)も足湯を受け、心中を吐露した。自宅が被災し、一時は金沢市内の子どもを頼ったが、知り合いがいない生活になじめず穴水町に戻った。「やっぱり地元が一番だから」。仮設住宅に申し込んでいるという。

 震度6強の揺れに襲われた同町は死者20人、約4千棟の住家被害を出した。中心部は今も、屋根を覆うブルーシートや倒壊家屋が目立つ。昼間も住民らしき往来は少なく、被災地支援の大型車が行き交っていた。

 同ネットは交代で同町に入り、避難所などを支援する。菊池さんは「行政では手が届かない被災者の困りごとを掘り起こすのがボランティアの役目」と話す。

 同町をはじめ被災地では仮設住宅の建設が急ピッチで進んでいる。一方、同町だけでも28日時点で約600人が避難所生活を送る。

 ボランティアの支援が必要とされているが、道路が被災するなどして被災地での受け入れは思うように進んでいない。石川県全体で同日時点の活動者数は延べ5426人。事前登録のあった約2万9千人の2割にとどまる。受け入れを促そうと、同県は26日、同町内にボランティア向けの宿泊施設を開設した。

 「花は必ず咲くよ」。避難所に置いてあった段ボール箱の文字に目がとまった。支援物資の送り主が書いた言葉という。避難者の女性(76)は「励みになるから見える所に飾ったの」と明かした。被災者を思う心が、避難が長引く人たちの支えになっていた。

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