飛島建設ら/音場可視化システム改良、最大3面の音圧レベル分布同時に

飛島建設らは、3D空間の音の強さ(音圧)を実空間上に投影する音場可視化システム「OTOMIRU Ver.2」を開発した。2021年に開発した従来システムのOTOMIRUを高度化。複数断面内や物体表面上の音圧レベル分布をMR(複合現実)やAR(拡張現実)デバイスで可視化し、空間全体の騒音源や遮音欠損部を一度に探査できるようにした。より効率的な計測の実現を目指して、音圧レベル分布の計測範囲を空間全体に拡張させた。
新システムは、工事の騒音対策などへの活用を目的に、早稲田大学基幹理工学部表現工学科の及川靖広教授と共同で開発。16個のマイクで収録した音から空間全体の音圧レベル分布を算出し、結果をヘッド・マウント・ディスプレー(HMD)やタブレット画面で音圧レベル分布のカラーマップを投影する。
従来システムは一度に算出できる音圧レベル分布が一つの断面に限られていた。計測対象が広範囲にわたる場合は計測する位置や方向を、その都度変更しなければならないといった課題があった。
新システムは、レーザーで対象の形状を検知するLiDARセンサーで点群データを取得し、専用アプリケーションに落とし込む。最大3面の音圧レベル分布を同時に可視化でき、各断面の位置や範囲、角度は任意に設定できる。空間内に複数点在する騒音源の探査や騒音の詳細な発生状況を可視化する。MR・ARデバイスを複数台接続でき、複数人で同時に結果を共有できる。
界壁や建具の遮音欠損部の探査や反射音の発生状況の可視化を想定し、物体表面上の音圧レベル分布を可視化する手法を実装。対象空間の壁、床、天井、機器や家具などの座標から空間形状に沿った音圧レベル分布を可視化する。
飛島建設は今後、建設工事現場や建物内部での騒音調査・騒音対策効果の検証に適用し、環境負荷の少ない施工や音環境品質の向上に貢献していく。設定方法や操作性などのユーザーインターフェースも改良する。建設分野だけでなく、オーケストラのコンサートなどでの音楽演出やデジタルアート作品での活用といったエンターテインメント分野での適用可能性も見込まれることから、INSPIREIと協業したサービス展開も検討する。

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