7月から「経営専念」を宣言したサイバーファイト高木三四郎社長に聞く、現状と今後の展望【後編】

株式会社CyberFightの高木三四郎社長が、7月21日に開催するDDTプロレス両国国技館大会をもってプロレスラーを休業し、経営に専念する発表を行なった。

会見では「健康上の理由・CyberFight設立から4年・後継者育成」を休業の理由と説明を行い、「体調が良くなって、経営に専念して、後継者とかそういった部分のところも滞りなくいくようであれば、復帰したいと思います」と引退ではなく休業を宣言した高木社長に、現在の心境や、これからのDDTプロレス、ガンバレ☆プロレスの独立、東京女子プロレスの展望、『日本プロレスリング連盟(United Japan Pro-wrestling)』、プロレスラー社長についてなど、多岐にわたるインタビューを行った。(全2回のインタビュー:後編)

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④東京女子プロレスの今後は?

―――そして東京女子プロレスもまた、元AKBの湯本亜美さんの参戦が発表されました。

高木 角田(奈穂)さんと舞台で共演したきっかけで、元AKB48の湯本亜美さんがデビューですね。

―――湯本さんは豆腐プロレス(コマネチ湯本役)やってましたね。

高木 豆腐プロレスで映像を観てチェックしてたんですよ。荒井(優希)さんが豆腐プロレスに出たときに、湯本さんが出てらっしゃったんですけど、豆腐プロレスのYouTubeが上がったときにバク転とかすごい方でした。

©東京女子プロレス

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―――またAKBからそういう形で来られるというところでは、すごくいい話ですよね。荒井選手も含めてこうやってプロレス界に来られるという東京女子プロレスについては、高木社長的にはどういうふうにご覧になっていますか。

高木 単純にいいと思いますよ。そうやってどんどんプロレスの間口が広がっていくのはいいと思いますし、そういう意味ではすごく期待したいなという感じですね。身体能力がすごい高そうな方だったので、豆腐プロレスのときには僕はチェックしていた方ですね。プロレスやればいいのにな、というので目に入っていましたね。

―――豆腐プロレスでは他にもたくさんの方が出演されていました。

高木 松村香織さんとかもいいし、あとは須田亜香里さんが抜群でした。

―――体がめっちゃ柔らかい印象でした。

高木 そうですね。しかも彼女は、やっぱりプロレス適性能力もすごい高かったですね。だから須田亜香里さんは本当にやってほしかったんだけどなと思いながら。でも、須田さんから松村香織さんにアイアンマン(アイアンマンヘビーメタル級王座)が移って、松村香織さんから荒井優希さんに移ったんで、それで荒井さんがDDTに参戦したんですよ。そこから来たご縁なので。

―――アイアンマンのベルトを通じた素敵なご縁ということですね。

⑤『日本プロレスリング連盟(United Japan Pro-wrestling)』への関与の仕方

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―――そして日本プロレス連盟というのが発足という形でDDTプロレス、サイバーファイトグループの皆さんも入られているんですけど、5月に大会があるということでこの関与への仕方というのは今どんな感じなんでしょうか?

高木 何も聞いていないです。こういうのをやりますというのは聞いたので、そういうのがあると確かに国との繋がりとかもできるし。コロナのときみたいに国から助成金も出ないじゃないですか、それはだから窓口がなかったんですよ。だからあのときは多分、プロレス格闘技が好きな政治議員連盟というのができて、議員さんのほうのスタンスで国ともやり取りしていたんです。だけど、それがやっぱり団体主導でということで、このような連盟ができたということに関してはすごくやりやすくなったなというのは思うんですけど。そのほかの情報は何も聞いていないです。

―――昔もこういう組織みたいなのはありましたね。何回か立ち上がっては消えて、というのが。

高木 国とそういう繋がりとかにおいては全然あっていいと思うし、大会とかも、もし何かそういう要請があればうちとしては全く問題はないなというのはあるんです。

―――ではまだ、本当にこれからという感じなんですかね。

高木 これからじゃないすかね。

―――まだエントリーされていない団体からも、どうやったら入れるんですかとか結構いろいろと質問も出ているみたいなんですけど。その辺りは高木社長はあまり関与されていないという感じですか?

高木 そうですね。それは全く関与してないです。ただ、何かそういう連盟ができることはやっぱりいいことだし、国を通して生まれる話も出てくると思うので、僕らとしては関与させていただけることはありがたいなと思います。

―――実際まだ全然見えてこない部分もあるんですけど、プロレスラーライセンスだとか、あとは各団体の入門規定だとか、興行のバッティングをちょっと回避するとか、その辺はまだ何も決まっていないような感じですか?

高木 そうじゃないですかね。

―――では今のところは、本当に国とのパイプを通すための組織という感じですかね。

高木 そうですね。

―――では、またこれが実際に具体化したときには改めていろいろ伺いたいなと思います。

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⑥プロレスラー社長のやりがいとは?

―――そして、プロレス社長のやりがいとはという質問に移りたいと思います。新日本プロレスでも棚橋弘至選手が代表取締役社長に就任しました。やっぱりレスラー社長というのが今注目を浴びていると思うんですね。いわゆる背広組と呼ばれていた人たちに経営を切り離してやるのと、プロレスラーがそのまま社長になって采配することについて、やっぱりレスラーが社長をやったほうがいいというお話を以前高木社長には伺ったことがあったんですが、その辺は今はどうですか?

高木 いいというか、そのほうが選手とうまくいくんじゃないですか。

―――調整しやすいという感じでしょうか?

高木 そうだと思いますけどね、やっぱり。これはすごく難しいですけど、本当は多分、ちゃんと経営ができる人が経営者をやったほうがいいと思います。

―――プロレスは特殊な世界だなというふうにも思いますし、痛みを一緒になって感じている人のほうが良いという。

高木 そういうのもどうかなと思うんですけどね。それもどうなんだろうな、みたいな。なかなかプロレスが一般的にならないのって多分、そういうところもあると個人的には思うところです。だから本当は、もうちょっとちゃんとビジネスとしてもスキームを作っていかないと、なかなか参入しづらくなってしまう業界になってしまいそうな気がしていて。野球とかサッカーとかバレーとかバスケとかというのは、やっぱり参入しやすいというか、参加させていただけるじゃないですか。プロレス団体だけじゃないですかね、こうして企業がちゃんとしたところがついてというのが少ないのも。だから、やっぱりそこはすごく感じますね。もうちょっと参入しやすい環境作りみたいなことをやっていかないと、ちょっと未来がないんじゃないかなとは思ってしまいますけどね。

―――なるほど。

高木 それと棚橋選手が社長になったことというのは関係ないと思うんです。やっぱり単純にすごいことだなと思いますし、逆に言うとまず新日本プロレスの社長兼レスラーというのはアントニオ猪木さんとか藤波辰爾さんだったり、錚々たる方々がやっていたわけだから、そこに棚橋選手の名前を連ねるわけなので。やっぱり、これは本当に業界にとっても明るいことだなとは思いますけどね。

―――高木社長は、プロレスラー社長としてのやりがいみたいなものというところはどんなところに感じていますか?

©DDTプロレスリング 新幹線プロレス

高木 自分はやっぱり企画を立てる側のプロレスラーなので、そういう意味でのやりがいという部分で言ったら、やっぱりいろいろな企画を立案して、それがお客さんとか世間に伝わると受けるみたいなことだと思うんですよ。ただ棚橋選手の場合はちょっと違うと思います。でもやっぱり、その象徴としての社長像というのは僕はありなんじゃないかなと思っていて。これはすごく表現が難しいんですけど、プロレスというのは何か一座みたいな空気感というのがあるじゃないですか。そういう意味においては、これを束ねる人、というのは座長という感じなんですよね。やっぱり棚橋選手だったりいろいろな社長レスラーの方々がいらっしゃいますけれども。やっぱりまとめ上げるというところで、そういう人が就任するというのは、中はまとまりますよね。だから、そういう意味ではすごく理にかなっているというか。いろいろなことが年末年始に起きたわけじゃないすか。その中で一つの会社をまとまってやろうというところにおいてはすごくいい人選だなと思います。

―――私からみていると、社長レスラーって大変だなという。ここ何十年か見ていますけど、社長レスラーをやられている方ってコンディション作りというのが結構しんどい部分があると思うんですよね。

高木 だからそこは不安に思いますよね。でも、棚橋選手は疲れないと言っているぐらいなんで、大丈夫なんじゃないかなと思いますけどね。

―――ご自身が企画して立案したものが、お客さんに喜んでもらえるという部分がものすごく何にも代え難い喜びなんですかね。

高木 やっぱりそうですね。そういう意味では、企画したものが反響を得られるというのはすごくありがたいなと思います。

―――年月を重ねて、若いときと今と、その喜びの度合いというのは何か変わってきたりしますか?

高木 いや、年齢とかではあんまり変わらないですかね。単純に物事を仕掛けたものが当たれば嬉しいですし、逆に言うと外れることもあるので、それはそれで何が足りなかったんだろうなと自問自答することもありますし。それぐらいです、本当に。そんなに差はないです。

―――やっぱり興行というのは、それぐらい魅力的なものなんですね。

高木 そうですよね。

⑦これからプロレスラーを目指す若者へメッセージ

―――そして最後に、これからプロレスラーを目指す若者へのメッセージをお願いします。

高木 これは入る団体はちゃんと考えたほうがいいですね、本当に。入ってから理想じゃなかったということってすごいあると思うので。よくいるんですよ。ここに入りたかったけど、落ちちゃったからここに来ましたみたいなことがあるんですよ。そういう感覚では選ばないでほしいなと思います。入ったとしても長続きはしないので、本当に自分が入りたい、理想像だと思う団体をちゃんとチョイスしてやってほしいなというのはありますね。

―――これは就職ともよく似てますよね。

高木 似ていると思います。

―――一般サラリーマンの方でも、就職するときに本当は違う事をやりたかったけど、色んな理由で仕方がないから一般企業に入ったと。でも結局すぐ辞めちゃうという事もありますね。

高木 こればかりは、カラーが合わないところに入ってしまうと自分が苦労するだけなので。それが本当にここだったら面白いな、ここに入りたいなと思ったら、それは多分曲げないほうがいい。こっちが駄目だったからここに入ろうかみたいなというのは、考え方とかそれが合わないところに入ってしまうと、本当に長続きしないので。そうすると続かないから辞めちゃおうって、またここで時間が無駄になってしまうわけじゃないですか。だから、そこは本当に僕は思うんですけど、本当にちゃんとチョイスしたほうがいいのになと思うんですよ。

―――やっぱり自分の本当にやりたいところの選択の気持ちはずっと持ち続けて、そこを目指したほうがいいという感じですかね。

高木 これは本当に若いレスラー、プロレス目指す人たちにやっぱり言いたいですね。

―――夢の部分とかってどうですか?プロレスラーになったらこんな夢があるみたいな、もしくはこれからこういう夢を見ていこうみたいな。

高木 これはなかなか難しいですね…。別に夢がないとかって言ったわけではなくて、さっきも言った話なんですけど、どこにその欲を求めているかにもよると思うんですよ。好きだったプロレスラーになって稼ぎたいとか、好きだったプロレスを稼げないけどやりたいなのか、それだけでも違うじゃないですか。だから、結構これって抽象的な言い方ができないというか、難しいんですよね。夢がないことを言ってしまうつもりはないんですけど、変なところに入ったら本当に変なんですよ、想像以上に。だからもうあまり言えないですよ。

―――誰でもなれる職業ではないですからね。

高木 本当に自分が入りたいと思うところに入るというのが、それが夢を叶えるということかなと思います。本当に自分が入りたいと思える団体に入るという気持ちはちゃんと持っていたほうがいいと思いますね。いるんですよ、いっぱい。入ってからやっぱりこんなはずじゃなかったんですけどねみたいな。聞いたらギャラがメチャクチャ安かったりとかあるので。ちょっときつい言葉で言うと、入り方を間違えると本当に一生後悔するので。

―――確かに。

高木 だから入りたいと思うところで入って、というところはもう後悔しないかなと思うんですよね。ちょっと違うところに入ってしまうと、またなんかあれじゃないですか。だからプロレスラーになりたいというだけで来るのはやめたほうがいいです、本当に。どこの団体で入りたいかまで決めてから、やりたい、じゃないと続かないですね。

―――本当に現実を直視しながら経営をみていらっしゃる高木社長だからこそ、ある意味で若者に対しての本当のメッセージですよね。

高木 本当にそうですよね。

―――選択肢を間違えないでくださいというような。

高木 本当に入りたい団体に入るというのは、そうですね。

―――本日は、どうもありがとうございました。

インタビュアー:山口義徳(プロレスTODAY総監督)

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