発達障害「生きづらさ」を減らすために…18歳女子高校生が“橋渡し役”になる【現場から、】

発達障害のことを理解してもらおうと活動を続けている女子高校生がいます。きっかけは発達障害のある弟の存在。同じ世代の人に語る機会を設けるなど活躍の場を広げています。

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<鈴木陽菜さん(18)>
「私の弟も軽度の発達障害で障害が見た目には表れにくく、理解を得ることが難しいので、たいへんな思いをしてきました」

2月27日、静岡県藤枝市で開かれた講演会です。地元の高校生など100人以上を前に発達障害への理解を訴えたのは、鈴木陽菜さん18歳です。

陽菜さんの弟、鈴木大夢さん(16)。大夢さんは小学4年生の時、軽度の「発達障害」と診断されました。中学校では、特別支援学級に通っていましたが、不登校になりました。

<鈴木大夢さん(16)>
「自分は学校が好きで友達もいて、友達と遊ぶ時間が好きだったが、授業中も注意されることがあり、自分には学校に居場所がなかった」

<鈴木陽菜さん(18)>
「私の弟は緊張したり、落ち着かなくなると『手いじり』が出てしまう特性がある。支援級の先生は理解がある先生がいると思っていたが、ペンや消しゴムで手いじりをしていると物を取り上げたり、発達障害の特性をサポートするのではなく、なおそうとする方向だった。脳機能的な問題なので、なおしたくてもなおせない場合が多い」

苦しむ家族を救いたい。陽菜さんは2022年、世界的なコンテストに出場。大舞台で思いのたけをスピーチしました。

「普通に生まれたかった。グレーゾーンの弟は言い、母は泣きました。私が日本代表になったら、発達障害について理解を求める活動をします」

このコンテストは、社会貢献に取り組む10代の女性を支援するもので、陽菜さんは日本大会でグランプリに輝きました。

<鈴木陽菜さん(18)>
「大会に出て、発信力と自信を持つことができた。世界の舞台で発達障害について発信して、自分の意志が固まりました」

陽菜さんは高校生活のなかで、教育現場での聞き取りや放課後等デイサービスでのボランティアを行ってきました。2023年からは発達障害の理解を広める講演活動を始めています。

この日は藤枝市の依頼を受け、障害のある家族がいる3人で対談しました。陽菜さんは障害のある、なしなどにかかわらず、多くの子どもが共に学ぶ「インクルーシブ教育」の普及を訴えました。

<鈴木陽菜さん(18)>
「いま、分離教育で支援級と通常級でわかれているから、発達障害の人にサポートする側も、どうサポートしていいか考えてしまうことが多いと思う。みんなで平等に学べる環境を作って、自然と対処やサポートの仕方を学べたら社会に出てからみんなが過ごしやすい環境になると思う」

<臨床心理士 浜松学院大学短期大学部志村浩二教授>
「(発達障害のある人を)近くでずっと見ている人の発言は大きいし、説得力がある。若い世代の人が話すことは若い世代の共感が高いと思うので、ぜひ発信してほしい」

生きづらさを抱える人がみんなのすぐそばにいることを感じてほしい。陽菜さんは家族や出会った人から学んだ知識を同世代の人たちにうまく伝える橋渡し役を目指しています。

<鈴木陽菜さん(18)>
「苦手なことは誰かと補い合えるような共生社会になってほしい。今後はより説得力をつけるために専門知識を学んで、たくさんの人に発達障害についての理解を広めていきたい」

文部科学省は2022年、通常学級に在籍する小中学生のうち、8.8%に発達障害の可能性があるという調査結果を発表しました。35人学級として考えた場合、3人ほどの割合です。多くの子どもたちが生きづらさを感じている可能性があるなか、陽菜さんのような若い世代からの発信はとても貴重なものだと感じました。

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