人気解説者の林陵平がラ・リーガ歴代最強イレブンを選抜!「ボールキープで彼の右に出る者はいない」と評したのは?

サッカー解説者として引っ張りだこの林陵平氏が、連携や補完性、攻守のバランスなどを重視したうえで、ラ・リーガの歴代最強イレブンをセレクト。攻守のメカニズムや戦術上のキーマン、得点源に加え、とっておきの切り札まで、「最強」の担い手を選抜する。

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今回考えたのは、「ラ・リーガの歴代最強イレブン」です。ただポジションごとの第一人者を並べるのではなく、チームとしての機能性や、攻守のバランスなどを意識したうえでの最強チームを選抜しました。先に11人の人選から発表しましょう。

システムは4-2-3-1です。ゴールキーパーがティボー・クルトワ、センターバックはロベルト・アジャラとカルレス・プジョールのコンビで、サイドバックは右にセルヒオ・ラモス、左にロベカル(ロベルト・カルロス)です。カゼミーロとジュード・ベリンガムのダブルボランチに、トップ下がジネディーヌ・ジダン。右ウイングがリオネル・メッシで、左がアントワーヌ・グリーズマン、センターフォワードはカリム・ベンゼマです。

ではポジション順に語っていきましょう。まずゴールキーパーですが、一番悩みました(笑)。クルトワ、イケル・カシージャス、ヤン・オブラクの三者択一ですね。個人的に銀河系時代のマドリーが大好きで、カシージャスには強い思い入れがあります。ただ、ゴールキーパーとしての純粋なシュートストップ能力では、クルトワに分がある気がしますね。その点オブラクも甲乙つけがたいんですけど、チャンピオンズリーグで優勝しているという実績を踏まえると、チームを勝たせられるのはクルトワでしょう。

ラモスをセンターバックではなく右サイドバックに置いたのは、メッシとの縦関係を考慮したから。メッシは守備の貢献度が高くないので、その負担をカバーするには身体能力の高いラモスがベストだと思いますね。それにラモスはオーバーラップも得意です。メッシがタメを作って、空いたスペースにラモスが走り込むというパターンも見られるかもしれません。
【動画】”とっておきの控え”デニウソンのプレー集

センターバックの人選で重視したのは、対人能力の高さ。アジャラは我ながら渋いチョイスなんじゃないですかね。特筆すべきは空中戦の強さです。身長は178cmと決して高くないんですが、驚異的なジャンプ力を持っているんですよね。そのうえスピードもあるので、相手に振り切られることもありません。プジョールの闘争心は凄まじく、まさに背中で語るファイターでした。

このふたりなら、1対1はまず負けないでしょう。現代サッカーでは、センターバックにもビルドアップのスキルが求められますが、このチームには必要ありません。メッシ、ベンゼマ、グリーズマン、ジダン、ベリンガムがいれば、どんな形でもボールを預けさえすればゴールを奪ってくれますからね。

中盤は可変システムを想定していて、攻撃時にはカゼミーロがアンカー、ベリンガムはインサイドハーフとして前線に飛び出していくイメージです。セルヒオ・ブスケッツも考えたんですが、カゼミーロのフィルター役としての価値を重視しました。今シーズンのプレミアリーグでは怪我もあって調子を落としていますが、マドリーで見せた活躍はアンタッチャブルそのもの。危機察知能力が桁違いで、たったひとりでピッチ全体をカバーしていたと言っても過言ではありません。

このチームにおけるキーマンはベリンガムです。中盤で守備の強度を保ちながら、攻撃時にはボックス内に侵入してゴールを奪える。攻守の要としての役割を期待しています。今シーズンのマドリーでの活躍には正直驚いています。毎試合のようにゴールを決めていますし、このままラ・リーガの得点王になる可能性は十分にありますね。

実はこのチームの得点源として考えているのも、メッシではなくベリンガムです。もちろんメッシには右サイドからカットインしてフィニッシュまで持っていく役割も期待しています。ですがそれ以上に、メッシが右からチャンスメークして、中央でベリンガムが合わせるという枠組みが、得点パターンとしてハマりそうな気がしますね。

ベリンガムと並ぶもうひとりのキーマンがジダンです。ボールキープという点で、彼の右に出る者はいません。ビルドアップ時に下りてパスを受けて、華麗なターンで相手をかわし、ドリブルで運ぶ役割を担ってもらいたいですね。センターフォワードのベンゼマは、ひとりで何役もこなせるアタッカー。自らゴールを決めるのはもちろん、ポストプレーでのチャンスメークといった黒子としての動きでも大きく貢献してくれると思います。

個人的にこだわりを持って選んだのが、左ウイングのグリーズマンです。派手さで言うと、メッシやクリスティアーノ・ロナウドといったスターの名前が挙がりますが、11人の組織として考えると、グリーズマンは不可欠な存在。アタッカーとしての能力は言わずもがなで、サッカーIQも高いですし、守備も献身的です。グリーズマンが左から内に入って、その空いた大外のレーンをロベカルがオーバーラップすれば、破壊力十分な攻撃が展開できるでしょう。

ベンチに置いておきたいのは、まずダニエウ・アウベス。プジョールとアジャラのセンターバックがうまく機能しなかった場合、ラモスを中央に移すケースが考えられます。右サイドバックにダニエウ・アウベスを入れれば、メッシとのコンビネーションを活かし、攻撃面で大きな違いを作ってくれるはずです。逆に守備を固めたいときは、クロード・マケレレを投入してカゼミーロとダブルボランチを組ませれば、ボール回収において圧倒的な優位性を発揮するでしょう。

前線の切り札として真っ先に名前が浮かぶのがロナウジーニョ。攻撃が停滞している展開で投入して、ピッチに魔法をかけてほしいですね。C・ロナウドはベンチに置かざるを得ないでしょう。メッシとの共存を考えたうえでの苦渋の決断です。ふたりを同時に起用すると、守備が全く機能しなくなる危険性が高いですからね。それに途中出場という点では、メッシよりもC・ロナウドのほうが相手に脅威を与えられる気がします。それに加えて“元祖”ロナウドがジョーカーとして出てきたら、誰も止められないでしょうね。

今回の依頼では「とっておきの控え」は5人までと言われていますが、もうひとりどうしても加えたい選手がいます。ベティスで活躍したブラジル人ドリブラーのデニウソンです。ちょうど海外サッカーを見始めた頃にラ・リーガでプレーしていたんですが、果敢にドリブルで仕掛けるプレーがいまでも脳裏に焼き付いています。ボールを持つとつねにワクワクさせてくれるウイングでしたね。

このチームなら、ラ・リーガはもちろん、チャンピオンズリーグ制覇も成し遂げてくれるでしょう。

[プロフィール]
林陵平(解説者/元東京V、柏など)
186cm・80kgの大型ストライカーとして鳴らした元Jリーガー。ヴェルディ・アカデミーと明治大学を経て2009年に東京ヴェルディとプロ契約し、翌年から柏、山形、水戸、ヴェルディ、町田、群馬を渡り歩き、2020年シーズンをもって現役引退した。Jリーグ通算成績は300試合・67得点。自他ともに認める「欧州サッカーマニア」で、海外選手のゴールセレブレーションを取り入れて話題にもなった。現在もあらゆる動画やニュースに目を配り、X(@Ryohei_h11)では海外ネタを日々つぶやき中。21年から23年までは東京大学ア式蹴球部の監督を務めた。24年2月には著書『林陵平のサッカー観戦術』(平凡社)を出版。最近は欧州サッカーの解説者としても人気を博す。1986年9月8日生まれ、東京都出身。

取材・構成●尾池史也(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

※『ワールドサッカーダイジェスト』2024年1月18日号から転載・加筆。

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