身を粉にして働くも、安売りされた昭和生まれの「高学歴中高年男性」…まだまだ生きるセカンドライフで活躍するための「新たな選択肢」【キャリアコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載では中高年男性が今後も活躍するための施策に向けたヒントや提言について述べてきました。ここでは、2022年10月に施行された、労働者協同組合法を踏まえて、「雇う、雇われるではない第三の働き方」を最後の提言として、取り上げます。※本記事は、「中高年男性の働き方の未来」(金融財政事情研究会・小島明子著)の内容を一部改編・追加の上、掲載しております。

中高年男性の働き方が変われば社会が変わる

特に若い世代のなかには、中高年男性たちのために、わざわざコストをかけて、やりがいやモチベーションを失わずに働き続けられる施策を行う必要があるのかと、疑問に思う人もいるかもしれません。むしろ、その分のコストは若い世代に回して、中高年男性たちには早めに退職してもらったほうが世代交代ができ、風通しがよくなってよいのではないかと考える人も少なくないのではないでしょうか。

もちろん世代が変われば、価値観も変わるため、一時的に組織は活性化するように見えるかもしれません。しかし、日本社会の働き方が抱える本質的な課題は解決しないのではないでしょうか。

高学歴な中高年男性の末路

中高年男性の働き方がいまとなって問題視されるのは、多様な働き方を許容してこなかった日本社会や日本企業に原因があります。

たとえ中高年男性が同質性や均質性が高いと皮肉られても、均一な質の高い商品を低価格で提供し、日本の競争力向上には大きく貢献してきた(年齢によっては、そういう先輩方を見てそれに倣って働いてきた)過去の結果に過ぎません。

雇用環境が大きく変わり、個人が持つ多様なスキルや経験がより重視されている現在において、ジェネラリストとして活躍してきた中高年男性にとって、好条件の転職やフリーランスへの転換は容易ではありません。

そのような現状に対して、中高年男性の特有の問題として片づけるのではなく、中高年男性がキャリアシフトしやすい社会をつくることが、大局的に見れば、年齢を経ても働き続けたい多くの人々のためにとってもよりよい社会づくりにつながると考えます。

過去、NHKが報道をしていたプロジェクトXという番組で、大企業等に勤める中高年男性が、同僚や先輩たちとともに苦難を乗り越えた話は、心に響く内容も多かったと記憶しています。団結するということは、個性を軽視するという批判はあるかもしれません。

しかし、なにか1つの大きな目標を成し遂げるために皆で協力して働く、といういわゆる昭和の働き方は、私たちが中高年男性に見習うべき、これからも残しておくべき働き方だと感じます。

「協同労働」…雇う、雇われるではない第三の働き方

2022年10月には、「労働者協同組合法」が施行されました。この法律は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えると共に、その設立、管理などの必要事項を定める法律です。

「協同労働」とは、働く人が自ら出資し、事業の運営に関わりながら事業に従事する働き方です。組合員はみんなフラットな関係性で、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担えます。

地域社会で必要とされる仕事をすることが中心になっていますので、地域課題の解決に貢献できるやりがいを味わったり、地域の中で豊かな人間関係を広げていったりすることもできます。

法律の施行以降、約70近くの労働者協同組合が設立されています。その多くは、東京圏以外のエリアで設立されており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが出始めています。

なかには、高齢者の仲間同士が集まって立ち上げ、地域の高齢者が抱える課題を踏まえて仕事起こしをしている組合も出てきています。

厚生労働省 雇用環境・均等局 勤労者生活課 労働者協同組合業務室長水野嘉郎氏は、「労働者協同組合は、企業や組織の退職後の高齢期を生きがいを感じながら、これまでの経験を活かして元気に仕事をしていきたいという、シニア世代のニーズに応える、大きな可能性がある」と言います。

定年後に労働者協同組合を立ち上げるという選択肢はもちろんのこと、今後、就業規則上、副業・兼業が可能な会社に勤めている場合は、「協同労働」という働き方を選択する人も増える可能性があります。

組合員のスキル等を活かしながら、協力しあい、地域の課題解決に向かって働くというスタイルは、中高年男性のよさを新たに活かせる働き方だと感じます。

さらには、「協同労働」という働き方を通じて、さまざまな地域課題を解決する中高年男性が増えれば、協力しあうことよりも個人の評価を優先して働く傾向が強まっている日本社会の働き方について、改めて考え直すきっかけになることを期待しています。

最後になりましたが、中高年男性1人ひとりが自信をもって輝く努力を忘れず、高齢化が進む日本社会で年齢を問わず多様な人材が活躍できる会社が増え、すべての人が能力と意欲を最大限に活かしつつ協力をしあいながら働ける社会づくりに向けて取り組んでいけば、日本社会の雇用の未来は、明るくなるのではないでしょうか。

小島 明子

日本総合研究所創発戦略センター

スペシャリスト

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