開幕戦は“羽なし”プジョー9X8にとって最後の好機か。バンドーン「過去一番に感触がいい」

 物流トラブルに係る二日間の延期を経て、2月26~27日に行われたWEC世界耐久選手権の公式テスト“プロローグ”に参加したストフェル・バンドーンは、プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)が改修されたルサイル・インターナショナル・サーキットで「これまでで一番いい感触だった」と語った。

 プジョー9X8は、4月にイモラで開催されるシーズン第2戦に向け、リヤウイングを含む大幅なアップグレードパッケージが導入される前に、今週ルサイルで開催される開幕戦『カタール1812km』で現在のウイングレス仕様でのラストレースを迎える予定だ。

 しかし、2日間にわたって開催されたプロローグテストでは94号車をドライブしたバンドーンが、火曜日の第3セッションでポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのフレデリック・マコウィッキ駆る5号車ポルシェ963に次ぐ2番手タイムを記録するなど、競争力のある走りを見せた。

 93号車と94号車、2台のプジョーはテスト全体で9番手と10番手のタイムをマーク。バンドーンが記録した1分41秒260は、姉妹車93号車でジャン-エリック・ベルニュが記録した自己ベストタイム1分41秒311を僅差で上回った。

 プロローグの最終セッションを終えた後、バンドーンはカタールでのシーズン開幕戦をプジョーにとって「チャンス」だと語り、プジョー9X8という先鋭的なコンセプトが、敷き直されたばかりのルサイルのアスファルトにとくに合っていると説明した。

「僕たちのクルマは、おそらく他のどのサーキットよりもこのサーキットに合っていると思う。その理由はスムーズな路面にある」と彼は語った。

「とくに僕らが持っているコンセプトと車高コントロールは、スムーズなトラックとより良いウインドウでマシンを操作し続けるのに役立つんだ。これまで何度かテスト走行をしてきたが、今までで一番良いフィーリングだった」

「多くの新しいマシンがグリッドに並ぶなかで、いつものようにグレムリン(小悪魔)を持つ新しいチームがあることを好機に捉える必要がある。僕たちは過去1シーズン半の準備で得たアドバンテージを生かし、作戦的にすべてを正しく行うことに集中しなければならない」

「この(ウイングレスの)クルマでは最後のレースになるが、良い結果を引き出したいと思う」

ロイック・デュバル、ポール・ディ・レスタとチームを組み94号車プジョー9X8をドライブするストフェル・バンドーン
プジョー・トタルエナジーズの93号車プジョー9X8 2024年WECプロローグ

■ライバルはペースを「隠している」とベルニュ

 今季2024年よりプジョー・トタルエナジーズのレギュラードライバーとしてフルシーズンに参加するバンドーンは、流れるような中速コーナーが大半を占めるルサイルのコースレイアウトも、9X8のキャラクターに適していると付け加えた。

「(全体的に)中速から高速のコースなので、これまで僕たちが不満に思っていたような(小さく回る低速)コーナーの問題は少ないんだ」と彼は説明した。

「コーナーの立ち上がりはそれほど問題ではない。なぜなら、コーナーを通過する速度が非常に高いからだ」

「ここでは、僕たちは本当に苦労するゾーンにはいないと見ている。スムーズなトラックとコースレイアウトが相まって、より良いフィーリングが得られるんだ」

 一方、93号車をドライブする僚友のベルニュは、プジョーがルサイルで上位争いをする可能性についてやや慎重な見方を示しつつ、やはり開幕戦が今シーズン最高のチャンスのひとつになると述べた。

「スムーズな路面は間違いなく助けになる」と語ったベルニュ。「このクルマはバンプ(路面の凹凸)が苦手なんだ。その点では確かにマシンの運転がしやすくなるし、動きの予測もしやすくなる」

「こんなにスムーズなサーキットは初めてだ。こんなにもスムーズなトラックはどこにもない。僕らにとって最高のコースなら、あの(ウイングレスの)クルマの挙動に驚かされることはないだろう」

「ただし、(公式テストでは)多くの人が本来のペースを隠していると思う。僕たちが実際どこにいるか見てみよう。僕らは可能な限りベストを尽くし、ミスを避け、文句のつけようがないようにするだけだ」

ミケル・イェンセン、ニコ・ミューラーとともに93号車プジョー9X8をドライブするジャン-エリック・ベルニュ
第2戦イモラで改良型プジョー9X8が登場することが予想されており、リヤウイングを持たないマシンはWECカタールで見納めとなることが濃厚だ

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